2 / 115
第一章
1.バイトがクビに?!
しおりを挟む「早川 結菜さん、明日からもう仕事に来なくていいです。今日までご苦労さまでした」
ーーショッピングセンター内の携帯ショップでのアルバイト終了後。
閉店作業に追われている最中、私はカエルの着ぐるみを着用して右手に被り物を抱えたまま40代の女性社員にこう告げられた。
「仕事に来なくていいって……。どうしてですか? 今日も頑張って働きました」
「思い出してごらんなさい。トイレと称して持ち場を離れた後に20分間のタイムロス。その間、ウサギ担当の田辺さんはあなたの分までバルーン配布に追われていたのよ。あなたの不在中、彼女にどれだけ負担をかけたと思ってるの?」
「申し訳ございません。階段のところで迷子を見つけたら、つい……」
私は申し訳なくて彼女の名札までしか目線が上がらなかった。
しかし、彼女は組んでいる腕に指先をトントン叩かせながら言い訳を跳ねのける。
「迷子を受付に送り届けるのはもちろん正解よ。でもね、うちのスタッフとしては不正解だった。あんなに長々と持ち場を離れる場合はひと声かけなさいって注意したじゃない。しかも、二度も三度も……」
「……」
「だから学生バイトは信用出来ないのよ。……まぁ、今さら何を言っても変わらないわ。今日までお疲れ様でした」
彼女は眉山を尖らせながら話を打ち切ると、背中を向けてカツカツと靴音を鳴らしながら去っていった。
ーーそう、私は迷子に気を取られてしまい、彼女の忠告が頭から離れていた。
事の発端は、今から3時間前。
勤務先の携帯電話のキャンペーン期間という事もあって、カエル担当の私とウサギ担当の田辺さんは店頭でバルーンアートを幼い子どもに配布していた。
着ぐるみ効果もあって会場は人がごった返していた。
しかし、トイレで一旦持ち場を離れた後、ウサギに迷惑をかけないように急いで会場に戻っていると、吹き抜けの中階段から甲高い泣き声が耳に届いた。
目を向けると、そこには二つ結びでピンクの柄物のワンピースを着ている幼稚園児くらいの女の子が1人きりで不安と戦っていた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる