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第一章

1.バイトがクビに?!

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早川  結菜はやかわ  ゆいなさん、明日からもう仕事に来なくていいです。今日までご苦労さまでした」



  ーーショッピングセンター内の携帯ショップでのアルバイト終了後。
  閉店作業に追われている最中、私はカエルの着ぐるみを着用して右手に被り物を抱えたまま40代の女性社員にこう告げられた。



「仕事に来なくていいって……。どうしてですか?  今日も頑張って働きました」

「思い出してごらんなさい。トイレと称して持ち場を離れた後に20分間のタイムロス。その間、ウサギ担当の田辺さんはあなたの分までバルーン配布に追われていたのよ。あなたの不在中、彼女にどれだけ負担をかけたと思ってるの?」

「申し訳ございません。階段のところで迷子を見つけたら、つい……」



  私は申し訳なくて彼女の名札までしか目線が上がらなかった。
  しかし、彼女は組んでいる腕に指先をトントン叩かせながら言い訳を跳ねのける。



「迷子を受付に送り届けるのはもちろん正解よ。でもね、うちのスタッフとしては不正解だった。あんなに長々と持ち場を離れる場合はひと声かけなさいって注意したじゃない。しかも、二度も三度も……」

「……」


「だから学生バイトは信用出来ないのよ。……まぁ、今さら何を言っても変わらないわ。今日までお疲れ様でした」



  彼女は眉山を尖らせながら話を打ち切ると、背中を向けてカツカツと靴音を鳴らしながら去っていった。

  ーーそう、私は迷子に気を取られてしまい、彼女の忠告が頭から離れていた。


  事の発端は、今から3時間前。
  勤務先の携帯電話のキャンペーン期間という事もあって、カエル担当の私とウサギ担当の田辺さんは店頭でバルーンアートを幼い子どもに配布していた。
  着ぐるみ効果もあって会場は人がごった返していた。

  しかし、トイレで一旦持ち場を離れた後、ウサギに迷惑をかけないように急いで会場に戻っていると、吹き抜けの中階段から甲高い泣き声が耳に届いた。
  目を向けると、そこには二つ結びでピンクの柄物のワンピースを着ている幼稚園児くらいの女の子が1人きりで不安と戦っていた。

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