上 下
13 / 67
第一章 根津精肉店復活祭と会長からのお願い。

第13話 焼肉パーティーと新たな課題

しおりを挟む
 オークとの戦いや解体作業を行っていたら、サーマレントに来てから早くも3時間ほどが経過をしていた。そういえば、小腹もすいた。解体作業が終わり、ふと源さんの方を見ると、温かい陽だまりの中で、スースーと寝息を立てていた。

 どんなに強くなったとはいえ、まだまだお子ちゃま。鑑定したら生後2ヶ月と出た。そりゃ、眠たいよね。沢山寝てね、源さん。

 源さんが寝ている隙に、昼飯の準備を始めた。昼飯にオークの内臓を食べてみることにした。

 内臓にクリーンをかけたとはいえ、本当に安全かどうかは分からない。自分で食べて、安全を確認してからじゃないとお客様には売ってはいけないと思う。まあ、それも本当だが、実際はすぐに味見をしてみたい。ホルモン、好きなんだよね。見たらプリップリだし。

 「真っ白なダイヤモンドや~!!」って叫んでしまったぐらいだ。

 アイテムボックスから、ホルモンやてっちゃん、マメなどのを取り出し、店から持ってきた実演用のカセットガスグリルで焼いた。

 ジュ~!!

 ホルモンから滴り落ちる油が炎を一層強める。その強まった炎が更に肉の表面を炙り、脂が炎の上に滴り落ちる。もうたまらん!!ホルモンがプリプリと網の上で踊っている!!肉から出る油と炎がお互いを高め合っている!!

 あ~、自分でいうのもなんだが、変なテンションになってきた。そして、ビールが飲みたい!!一杯ぐらいいいよね?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ジュ―!という音に引き寄せられたのか、それとも匂いに誘われたのかは不明だが、それまで寝ていた源さんが、むっくりと起き上がった。鼻をひくひくさせた後、口元を開き「ハァッ、ハァッ、ハァッ...!」と、すごく荒い息づかいをさせながら俺の方に駆けよって来た。

 目をパッチリと大きく開けて、左右に尻尾をブンブンと振りながら「美味しそうな匂いがしますわん!しますわん!」と、源さんは叫ぶように俺に伝えてきた。やっぱり、肉が好き...なのね。げ、源さん、口元から雫がだだ漏れしていますよ!!

 もうちょっと待っていてね。沢山焼いてあげるからね。

 ジュ~!!

 ホルモンだけじゃなく、ハツやガツ、マメ、さらにはロースなども焼いた。やっぱり、ロースも食べたい!!

 更に、ジュ~!!

 源さんは俺の顔と、焼いている肉を交互に何度も見て、"まだですか?まだですか?"とアピールをしてきた。

 プリプリなホルモンを、源さんのお皿の上によそってあげた。源さんは俺の顔をチラチラ見て、"いいですか?いいですか?"と、つぶらな瞳をウルウルさせながら、とてもそわそわとしている。

 何だか、イジメているみたい...。

 ごめんね、源さん、さあ、肉が焼けたよ!!一緒に"頂きます"だ!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 お、美味しい!!何だ?このホルモン!!プリプリ!!油が滴るのに全然くどくない。旨い!!一口ホルモンを味わい、ビールで喉奥に流し込む。やめられませんな。

 結局、真昼間から飲んでしまった。あっちの世界に戻って配達業務などがあったら、魔法でアルコールを体内から抜いてしまおう。

 本当に便利だな、魔法って。

 源さんも興奮Maxで、「ご主人様、美味しですわん!!美味しいですわん!!そのままでも美味しいですが、この"エガシラ焼肉のたれ"をかけると最高ですわん!!」

 口をもぐもぐと動かし、念話で食レポを伝える源さん。器用だな...。更に源さんは「これは何という部分ですか?さっきの部分より、コリコリして、歯ごたえがいいですわん!!」と、違う肉の部位を食べるたびに質問をしてくる。勉強熱心な子犬だ。

 いや~旨い!!ビールがすすむ。ご飯もアイテムボックスに詰め込んでおけばよかったな。

 ただ、これでお袋とトヨさんに、安心してもらえると思う。ほっとした俺は、源さんとゆっくりと昼ごはんを楽しんだ。オーク肉、500㎏以上の仕入れとなった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 地下室の大型冷凍冷蔵庫にオーク肉を仕舞い込んで、一息ついた。

 その後、お袋とトヨさんに、仕入れが無事に終了をした事を報告した。2人とも仕入れた物を見ながら「「すごい量だね!」」と、目をキラキラとさせて喜んだ。

 2人とも、すぐに俺が持って来たオーク肉を食べたがった。本日2度目の焼肉大会。ちょっと苦しいかも...。俺は少し苦笑いを浮かべたが、隣では第一回目焼肉大会の時と同じように、尻尾を左右にブンブンと振って喜びをアピールするチビッ子がいた。

 そんなに振ると尻尾がちぎれてしまうよ、源さん...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「ロースとバラも美味しいですけど、私はこのゼンマイとか、レバーの方が好きですね。タンもありますか⁉︎」

「レバーは苦手だったけど、この豚のレバーは別格だよ!滑らかで、臭みも無くて美味しいね!!
 
 2人とも箸が止まらない。そして足元では尻尾を振り続ける源さんも、バクバクと食べていた。源さん食べ過ぎないでね...。

 早く牛系の魔物も見つけたいな。日本人は豚よりも牛肉の方が好きな人が多いからな~。今度エリーに会ったら、ミノタウロスがどこら辺にいるか聞いてみようかな?

 そんな楽しい焼肉大会は、無事に終了...しなかった。

 美味しそうに食べていたお袋が「豚肉の売り上げは順調だけど、他のがねぇ~。まだまだ課題は山積みだね~」と、少しぼやき気味に俺に話しかけてきた。

 "根津精肉店復活祭"の時は、常連客以外のお客さんも訪れてくれた。しかし、それ以降はオーク肉目当てのお客さんや、以前からの常連客が中心となってしまった。

 そう、売り上げは少し良くなった程度。このままでは以前とあまり変わり映えも無く、借金も減らない。

 もっとお店にお客様を呼ぶ必要がある。もっと目玉商品を増やし、買ってもらう必要があるのだが...。それには大きな越えなければいけない壁がたちはだかっている。それも非常に深刻な...。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 うちの店は"柳ケ瀬風雅商店街"の中にある精肉店。

 現在、"柳ケ瀬風雅商店街"は元気がなく、お客さんが来ないのだ。商店街のシャッター率は82.5%越えと尋常じゃない。実際、うち一店舗だけで頑張っても、お客さんはイベントの時だけしか来てくれないし、日々の買い物は近隣のスーパーを使う。

 大手のスーパーやデパートには太刀打ちできない。

 また、"柳ケ瀬風雅商店街"は、岐阜駅から近いという立地の良さが裏目になっており、近くには有料駐車場しかない。

 近郊のデパートなら無料の駐車場があり、豊富な品揃えと、子供が楽しめるアミューズメントコーナーがあって、一日中遊べる。

 この商店街には子供が遊べる場所がない。大手のデパートのように、1日そこに行けば、満足して過ごせる場所ではない。

 さらに、"根津精肉店"に限って言えば、目玉商品がオーク肉一つという現状は非常に寂しい。

 何とかもう一つ、いや三つ四つは増やしたい。欲を言えばもっと増やしたいが。

 だが、目玉商品を増やすことにより、これ以上お客様が増えると、お袋や俺、トヨさんだけでは対応できなくなってしまう。

 そうなると、新たな従業員も欲しくなる。しかし地下室や、俺の食材確保方法など、秘密が多く、ばれると面倒くさい。

 あー悩みは尽きない。一つ一つクリアしていくしかないなと思った。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 そんな悩みを抱えたり、行き詰っている時は、必ず訪れる場所がある。

 "根津精肉店"裏においてあるボロボロのベンチ。

 ここで飲むコーヒーが好き。なんか小さい頃の俺や友達に励まされる様な感じがして、疲れると良くここに来る。

 「はぁ~どうしようかな~」と、ため息をつきながらベンチに寝ころがっていると、「太郎!柴さん、商店街会長の柴田さんがお見えだよ!何でもあんたに相談したいことがあるって!!」と、お袋が俺を呼んだ。

 現商店街の会長様が、俺に何のようがあるんだ...?
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...