12 / 17
第12章
ふくごの郷12朝顔の陰で
しおりを挟む
田舎の家は早朝から動き出す。2人が戻った村長宅でも、夜明けと共に女中達が立ち働く気配が感じられた。
「とんだ“肝試し”だったな。少し朝寝させてもらおうか」
客の特権で、それくらいは…と、月衛が烈生を振り返る。途端に、熱い腕に抱きすくめられた。荒い吐息が月衛の首筋をくすぐる。
「烈生!?」
せっかく直した襟の中に、急くように手が入る。
「烈生…あっ…人目が」
もう、朝だというのに。人の気配が、月衛の羞恥心を撫で上げる。
「君は…あんな顔を見せられて、俺が平気でいられるとでも思っているのか?」
耳朶を甘噛みされて、月衛がもがく。どの顔のことだか全く月衛は自覚していないが、その羞じらう様は天下一品の阿片だ。
「ああ、月衛…」
金色の野獣に首筋を噛まれて、月衛が小さな悲鳴を上げた。
「烈生…ここでは駄目だ。お願いだから」
もっと人目につかないところで、と可憐な唇が哀願する。烈生がぐるりと庭を見回し、月衛の手首をむんずと掴んだ。もう片手で慌てて襟を直す月衛を引っ張って、軒に立てかけられた朝顔の棚陰に連れ込む。月衛の両手首を壁に押し付け、鎖骨に舌を這わせた。
「あっ…あ…」
切なく忍び泣くような喘ぎが、烈生を昂ぶらせる。昨晩で何度、身を滾らせたことだろう。人の気も知らないで、花など追って。烈生の膝が月衛の両脚を割り、筋肉質な太腿が股間を荒々しく擦る。
「う…ぁっ…烈生!」
月衛の涙声に、ハッとした。
「手首が痛い」
気がつけば、細い手首は烈生が握りしめた形に赤らんでいた。
「すまない…」
手首を解放し、今度は優しく抱きしめて口づける。
「今日は、いつにも増して激しいな…」
月衛の手が烈生の裾を割り、膨らんだ褌を撫でた。
「君が悪い。一晩中、俺を誘惑して」
烈生が、荒い吐息の隙間から囁いた。
「心外だな…俺はミステリー研究会の取材に行ったんだが」
澄ました声とは裏腹に、藍色の宝玉は愛欲に濡れていた。
「ああ…月衛…」
毎晩のように身体を求められて3年。月衛の手はすっかり烈生の好みを覚え込んでいる。烈生を愛撫しながら、唇を合わせた。身体の奥が熱を持ってうねり始める。
――ほしい。ほしい。
俺は違う、と頭を振る。烈生から求められれば身体を開くが、将来のある彼を自分が欲するなんて。そんな淫らな、弁えもない欲望など認めたくはなかった。
「月衛」
暗赤色の髪が、首筋をくすぐる。おもむろに片脚を持ち上げられ、月衛は壁に背を預けた。
「今日も…いいか?」
嗚呼!彼は夜毎に、そう確認するのだ。月衛のふしだらな望みを浮き彫りにするように。
「…君なら、いつでも構わない」
羞恥に震える声が、微かに応えた。
「よく言う…場所を選んだ、その舌で」
くっと喉奥で笑う声が聞こえた。はしたなく脚を広げたまま、月衛は瞳を逸らした。
3年抱かれて、毎晩のように乱れ咲き、なお清かなのは月衛の性分なのだろう。烈生は、月衛の羞らいを宥めるように軽く口付ける。が、それもやがて激しく月衛の肌を求め始めた。
――ああ…っ、あっ…
脳髄が恍惚に溶け崩れていく。あられもない声を立てそうになって、きゅ…と己の指をくわえた。
「ふ…う…っ」
身体が、待ち望んだ刺激に下腹を震わせる。
「月衛…月衛!」
白い肌を滑る、熱い掌。
――ああ!烈生!
紅潮した目尻から涙が零れた。
潤む視界の中に、涼やかな朝顔の花が揺れている。
「ぅ…く…っ!月衛!」
烈生の呻き声。抱きしめられると同時に、烈生が弾けたのだと気づいた。
――ああ…愛している…烈生…。
烈生には禁じておいて何を言うかと、僅かに残った理性がせせら笑った。
「とんだ“肝試し”だったな。少し朝寝させてもらおうか」
客の特権で、それくらいは…と、月衛が烈生を振り返る。途端に、熱い腕に抱きすくめられた。荒い吐息が月衛の首筋をくすぐる。
「烈生!?」
せっかく直した襟の中に、急くように手が入る。
「烈生…あっ…人目が」
もう、朝だというのに。人の気配が、月衛の羞恥心を撫で上げる。
「君は…あんな顔を見せられて、俺が平気でいられるとでも思っているのか?」
耳朶を甘噛みされて、月衛がもがく。どの顔のことだか全く月衛は自覚していないが、その羞じらう様は天下一品の阿片だ。
「ああ、月衛…」
金色の野獣に首筋を噛まれて、月衛が小さな悲鳴を上げた。
「烈生…ここでは駄目だ。お願いだから」
もっと人目につかないところで、と可憐な唇が哀願する。烈生がぐるりと庭を見回し、月衛の手首をむんずと掴んだ。もう片手で慌てて襟を直す月衛を引っ張って、軒に立てかけられた朝顔の棚陰に連れ込む。月衛の両手首を壁に押し付け、鎖骨に舌を這わせた。
「あっ…あ…」
切なく忍び泣くような喘ぎが、烈生を昂ぶらせる。昨晩で何度、身を滾らせたことだろう。人の気も知らないで、花など追って。烈生の膝が月衛の両脚を割り、筋肉質な太腿が股間を荒々しく擦る。
「う…ぁっ…烈生!」
月衛の涙声に、ハッとした。
「手首が痛い」
気がつけば、細い手首は烈生が握りしめた形に赤らんでいた。
「すまない…」
手首を解放し、今度は優しく抱きしめて口づける。
「今日は、いつにも増して激しいな…」
月衛の手が烈生の裾を割り、膨らんだ褌を撫でた。
「君が悪い。一晩中、俺を誘惑して」
烈生が、荒い吐息の隙間から囁いた。
「心外だな…俺はミステリー研究会の取材に行ったんだが」
澄ました声とは裏腹に、藍色の宝玉は愛欲に濡れていた。
「ああ…月衛…」
毎晩のように身体を求められて3年。月衛の手はすっかり烈生の好みを覚え込んでいる。烈生を愛撫しながら、唇を合わせた。身体の奥が熱を持ってうねり始める。
――ほしい。ほしい。
俺は違う、と頭を振る。烈生から求められれば身体を開くが、将来のある彼を自分が欲するなんて。そんな淫らな、弁えもない欲望など認めたくはなかった。
「月衛」
暗赤色の髪が、首筋をくすぐる。おもむろに片脚を持ち上げられ、月衛は壁に背を預けた。
「今日も…いいか?」
嗚呼!彼は夜毎に、そう確認するのだ。月衛のふしだらな望みを浮き彫りにするように。
「…君なら、いつでも構わない」
羞恥に震える声が、微かに応えた。
「よく言う…場所を選んだ、その舌で」
くっと喉奥で笑う声が聞こえた。はしたなく脚を広げたまま、月衛は瞳を逸らした。
3年抱かれて、毎晩のように乱れ咲き、なお清かなのは月衛の性分なのだろう。烈生は、月衛の羞らいを宥めるように軽く口付ける。が、それもやがて激しく月衛の肌を求め始めた。
――ああ…っ、あっ…
脳髄が恍惚に溶け崩れていく。あられもない声を立てそうになって、きゅ…と己の指をくわえた。
「ふ…う…っ」
身体が、待ち望んだ刺激に下腹を震わせる。
「月衛…月衛!」
白い肌を滑る、熱い掌。
――ああ!烈生!
紅潮した目尻から涙が零れた。
潤む視界の中に、涼やかな朝顔の花が揺れている。
「ぅ…く…っ!月衛!」
烈生の呻き声。抱きしめられると同時に、烈生が弾けたのだと気づいた。
――ああ…愛している…烈生…。
烈生には禁じておいて何を言うかと、僅かに残った理性がせせら笑った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる