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第3章 隣国へ
出発
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翌日、ロゼは普段一緒に働いているメイドたちに囲まれていた。
「よし、着付けはこれでおっけーね」
メイド長が遠目にロゼを見て満足げに頷く。
「すごく似合ってるよ」
ユリナが微笑んで呟く。
ロゼは隣国へ行くための準備をしていた。隣国の王子に会うからと、少し着飾った服に身を包んでいる。
「ありがとうございます」
ロゼは鏡を見ながら礼を述べた。白いロング丈のドレス風ワンピースは上品な気風を出していた。
「この服はフードとか顔や髪を隠すものがないけど、王子がそばにいるなら大丈夫よね」
「お祭りだし少しは目立ってても大丈夫」
心配そうなメイド長を落ち着かせるようにユリナが呟いた。
「ロゼ、入るわよ」
その時部屋にイザベラが顔を出した。
「おはようございます。イザベラさん」
「おはよう。うん、とても素敵ね」
イザベラはメイド長と同じように満足げな顔で頷いた。
「馬車でアルたちも待ってるから支度が済んだら城門のところに来てね」
「はい!」
イザベラは端的に伝達をすると部屋を出て行った。
ロゼは渡された小さめのバッグに必要なものを入れていく。買い物をするお金とハンカチ。アルからもらったスケジュール帳。そしていつもは首からかけているロケット。少ない荷物は綺麗にバッグの中に収まった。
「じゃあ皆さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい。楽しんでくるのよ」
ロゼはメイド仲間に見送られて部屋を後にした。
****************
「お待たせしてすみません」
ロゼが馬車の前に着くと既に出発の準備は整っていた。
「おはようロゼ。お、今日はまたおしゃれだな」
馬車の前に立っていたアルが振り向きざまにそう言った。
「おはようアル。メイド長たちが着付けてくれたの」
ロゼはそう言ってその場で一回りして見せた。
「よく似合ってるよ」
「ありがとう」
「皆さん、そろそろ出発しますよー」
馬車を走らせる業者の方がそうロゼたちに声をかけた。ロゼ達四人は順に馬車に乗り込んだ。
「緊張してるか?」
「うん、ちょっとね。でもそれよりわくわくしてる」
「そうか」
ロゼは向かいに座っているアルに笑いかけた。
「ロゼはこういう催し物とか初めて?」
隣に座るイザベラが尋ねた。
「うーん…そうですね。物心ついた頃には森の中で過ごしてましたし、街に出ることもなかったので」
ロゼはちょっと考え込むとそう答えた。
そう話している間にもエドは熱心に待ち合わせ時間等が書かれた書類に目を通している。
「エド、お祭りなんだからちょっとは気を抜いたらどう?」
イザベラが呆れたように言った。エドはそこで初めて書類から目を離すと、「しかし、隣国の王子との待ち合わせなので」と言って再び書類に目を落とした。
「何かと固いのよね、この人」
イザベラはそう言って肩をすくめた。アルとロゼは顔を見合わせて微笑んだ。
****************
「まもなく到着しますよ」
業者の方がそう述べた。馬車はゆっくりと減速していく。
着いたのはお祭りが行なわれている城下町の近くだ。ここからでも綺麗にかけられた旗や、人々の賑わう声が聞こえて来る。
「待ち合わせはここからまっすぐいった城門の近くです」
エドは書類を見ながらそう言った。
ロゼ達は業者の方に礼を言うと馬車を降りた。お店の立ち並ぶ通りが視界いっぱいに広がる。
「わぁ…」
ロゼは思わず声を漏らした。
「お店は後で回るとして、先にエリスのところに挨拶だな」
アルにそう言われ、ロゼ達はエドの案内のもと、隣国の王子であるエリスとの待ち合わせ場所へと向かった。
「よし、着付けはこれでおっけーね」
メイド長が遠目にロゼを見て満足げに頷く。
「すごく似合ってるよ」
ユリナが微笑んで呟く。
ロゼは隣国へ行くための準備をしていた。隣国の王子に会うからと、少し着飾った服に身を包んでいる。
「ありがとうございます」
ロゼは鏡を見ながら礼を述べた。白いロング丈のドレス風ワンピースは上品な気風を出していた。
「この服はフードとか顔や髪を隠すものがないけど、王子がそばにいるなら大丈夫よね」
「お祭りだし少しは目立ってても大丈夫」
心配そうなメイド長を落ち着かせるようにユリナが呟いた。
「ロゼ、入るわよ」
その時部屋にイザベラが顔を出した。
「おはようございます。イザベラさん」
「おはよう。うん、とても素敵ね」
イザベラはメイド長と同じように満足げな顔で頷いた。
「馬車でアルたちも待ってるから支度が済んだら城門のところに来てね」
「はい!」
イザベラは端的に伝達をすると部屋を出て行った。
ロゼは渡された小さめのバッグに必要なものを入れていく。買い物をするお金とハンカチ。アルからもらったスケジュール帳。そしていつもは首からかけているロケット。少ない荷物は綺麗にバッグの中に収まった。
「じゃあ皆さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい。楽しんでくるのよ」
ロゼはメイド仲間に見送られて部屋を後にした。
****************
「お待たせしてすみません」
ロゼが馬車の前に着くと既に出発の準備は整っていた。
「おはようロゼ。お、今日はまたおしゃれだな」
馬車の前に立っていたアルが振り向きざまにそう言った。
「おはようアル。メイド長たちが着付けてくれたの」
ロゼはそう言ってその場で一回りして見せた。
「よく似合ってるよ」
「ありがとう」
「皆さん、そろそろ出発しますよー」
馬車を走らせる業者の方がそうロゼたちに声をかけた。ロゼ達四人は順に馬車に乗り込んだ。
「緊張してるか?」
「うん、ちょっとね。でもそれよりわくわくしてる」
「そうか」
ロゼは向かいに座っているアルに笑いかけた。
「ロゼはこういう催し物とか初めて?」
隣に座るイザベラが尋ねた。
「うーん…そうですね。物心ついた頃には森の中で過ごしてましたし、街に出ることもなかったので」
ロゼはちょっと考え込むとそう答えた。
そう話している間にもエドは熱心に待ち合わせ時間等が書かれた書類に目を通している。
「エド、お祭りなんだからちょっとは気を抜いたらどう?」
イザベラが呆れたように言った。エドはそこで初めて書類から目を離すと、「しかし、隣国の王子との待ち合わせなので」と言って再び書類に目を落とした。
「何かと固いのよね、この人」
イザベラはそう言って肩をすくめた。アルとロゼは顔を見合わせて微笑んだ。
****************
「まもなく到着しますよ」
業者の方がそう述べた。馬車はゆっくりと減速していく。
着いたのはお祭りが行なわれている城下町の近くだ。ここからでも綺麗にかけられた旗や、人々の賑わう声が聞こえて来る。
「待ち合わせはここからまっすぐいった城門の近くです」
エドは書類を見ながらそう言った。
ロゼ達は業者の方に礼を言うと馬車を降りた。お店の立ち並ぶ通りが視界いっぱいに広がる。
「わぁ…」
ロゼは思わず声を漏らした。
「お店は後で回るとして、先にエリスのところに挨拶だな」
アルにそう言われ、ロゼ達はエドの案内のもと、隣国の王子であるエリスとの待ち合わせ場所へと向かった。
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