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第2章 メイドとして
月の綺麗な夜
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その日の夜、みんなが寝静まる頃、ロゼの部屋にノックの音が響いた。
「ロゼ、まだ寝てなかったか?」
「うん。アルを待ってた」
「こんなに遅くなってしまってすまなかったな。ロゼの睡眠時間削っちゃう形になっちゃって…」
ロゼは首を振った。
「私もアルとお話ししたかったし全然大丈夫だよ。むしろお話しできなかったら逆に寝られなかったかも」
アルはロゼを見つめてそっと微笑んだ。
「あ、入って。廊下に立ったままじゃ疲れるでしょ?」
「あーうん。じゃあちょっとだけお邪魔しようかな」
アルはそう言ってロゼの部屋の中に入った。ロゼは先にベッドの上に座り、ぽんぽんと横を叩いた。
「…」
アルの沈黙にロゼはハッと顔を赤く染める。
「いや、ちが…変な意味じゃなくて!ここが一番外が綺麗に見えるから…っ!」
ロゼのあまりの慌て様にアルは思わず吹き出した。
「あはは!わかってるって」
アルはロゼの後に続いてベッドの方へ歩き出した。しかしその足はロゼの机の前で止まる。
「これ…」
机の上には数枚の紙が重ねて置かれていた。
「あ!それは…!」
ロゼが駆けつけるよりも早く、アルはその紙を手に取っていた。
「スケジュールと…日記?」
「わあああ!読まないで!」
ロゼはアルが持っていた紙を奪い取った。
「一応その日の仕事内容とか、失敗したこととかまとめるために書いてるの。それに明日のスケジュールもちゃんと書いておかないと忘れちゃうから…」
ロゼはそういうと紙をまとめて机の隅に置いた。
「スケジュール帳とかは?」
「持ってない。ずっと使ってたやつ…燃えちゃったから…」
「…そうだな」
アルは一瞬考えると自分のポケットから小さな一冊の青いノートを取り出した。
「じゃあこれ使えよ。俺のスケジュール帳なんだけど、スケジュールはだいたいエドが管理してくれてるからほとんど使ってないんだ。ちょっと書き込みがあるし小さいけど、スケジュールくらいなら書けるだろ」
ロゼは差し出されたスケジュール帳をそっと受け取った。
「ありがとう。助かるよ」
ロゼは笑顔でアルに礼を述べ、大事そうにそのスケジュール帳を抱きしめた。
「日記もつけられるようなやつ今度買ってきてやるよ。今はそれで我慢してくれな」
「ううん。これでいい。ありがとう」
ロゼはスケジュール帳を持ったままベッドに腰を下ろした。アルも横に並ぶようにベッドの上に座る。月明かりでキラキラと輝く海がとても美しく映った。
「今日は色々災難だったな」
「あ!そのことお礼を言おうと思ってたんだった!アル、あの時は助けてくれてありがとう」
「俺助けたつもりはないよ。言うべきことを言っただけ。恩を感じることはないさ。それにあの時のロゼかっこよかったよ」
それを聞いてロゼは「あー…」とうなだれる。
「どうした?」
「大臣に反発するなんて失礼極まりないよね。隣国で噂になってたらどうしよう…」
アルはそれを聞いて笑った。
「大丈夫だって!あの場にいたみんなが大臣に非があるってわかってたさ。ロゼは自分の発言に誇りを持ったらいいよ」
「そうかなぁ…」
アルは「うん」と頷いた。
「そういえば、今日は隣国の王子様欠席だったね。病欠なんだっけ?体の弱い方だって大臣言ってたけど」
ロゼは今日の空席を思い出して言った。
「俺も今まで数回しか会ったことないないな。よく病気で寝込んでるけどすごくいい人なのには変わりないよ」
「そうなんだ。私も会ってみたかったな」
隣国の王子様とはどんな方なのか。アルのように優しい方なんだろうなとロゼは思った。
「会って気があったら妃になるのか?」
「へ?」
ロゼはアルの質問に思わず変な声をあげた。
「いやいやいや!ならないかな!だって私ただの街娘で、今はメイドだし。髪と瞳しか目を引き付けないような人だよ?!妃になるなんておこがましいにもほどがあるっていうか…!」
ロゼは慌てて首を振った。自分が妃になるなど考えたこともない。城に上がったとはいえ一般市民だし、今ここに居られるのはアルがいてくれたからである。それを利用して妃になりあがろうだなんてとんでもないことだ。
「そうか。でも俺はロゼのまっすぐなとこ、好きだけどな」
「…え?」
アルはそう呟いて立ち上がった。
「今日はもう遅いし、そろそろ戻るかな。ロゼは明日も早いんだろ?」
「あ、うん」
ロゼもアルを見送るために立ち上がった。
「じゃあまた明日な」
「おやすみ、アル」
「うん。おやすみ」
ロゼはアルの背中を見送って扉を閉めた。いざ一人になってみると忘れていた眠気が不意に襲ってきた。
「私も早く寝なきゃ。明日は買い出し…」
ロゼはベッドに横になると、アルからもらったスケジュール帳を抱いて眠りに落ちていった。
「ロゼ、まだ寝てなかったか?」
「うん。アルを待ってた」
「こんなに遅くなってしまってすまなかったな。ロゼの睡眠時間削っちゃう形になっちゃって…」
ロゼは首を振った。
「私もアルとお話ししたかったし全然大丈夫だよ。むしろお話しできなかったら逆に寝られなかったかも」
アルはロゼを見つめてそっと微笑んだ。
「あ、入って。廊下に立ったままじゃ疲れるでしょ?」
「あーうん。じゃあちょっとだけお邪魔しようかな」
アルはそう言ってロゼの部屋の中に入った。ロゼは先にベッドの上に座り、ぽんぽんと横を叩いた。
「…」
アルの沈黙にロゼはハッと顔を赤く染める。
「いや、ちが…変な意味じゃなくて!ここが一番外が綺麗に見えるから…っ!」
ロゼのあまりの慌て様にアルは思わず吹き出した。
「あはは!わかってるって」
アルはロゼの後に続いてベッドの方へ歩き出した。しかしその足はロゼの机の前で止まる。
「これ…」
机の上には数枚の紙が重ねて置かれていた。
「あ!それは…!」
ロゼが駆けつけるよりも早く、アルはその紙を手に取っていた。
「スケジュールと…日記?」
「わあああ!読まないで!」
ロゼはアルが持っていた紙を奪い取った。
「一応その日の仕事内容とか、失敗したこととかまとめるために書いてるの。それに明日のスケジュールもちゃんと書いておかないと忘れちゃうから…」
ロゼはそういうと紙をまとめて机の隅に置いた。
「スケジュール帳とかは?」
「持ってない。ずっと使ってたやつ…燃えちゃったから…」
「…そうだな」
アルは一瞬考えると自分のポケットから小さな一冊の青いノートを取り出した。
「じゃあこれ使えよ。俺のスケジュール帳なんだけど、スケジュールはだいたいエドが管理してくれてるからほとんど使ってないんだ。ちょっと書き込みがあるし小さいけど、スケジュールくらいなら書けるだろ」
ロゼは差し出されたスケジュール帳をそっと受け取った。
「ありがとう。助かるよ」
ロゼは笑顔でアルに礼を述べ、大事そうにそのスケジュール帳を抱きしめた。
「日記もつけられるようなやつ今度買ってきてやるよ。今はそれで我慢してくれな」
「ううん。これでいい。ありがとう」
ロゼはスケジュール帳を持ったままベッドに腰を下ろした。アルも横に並ぶようにベッドの上に座る。月明かりでキラキラと輝く海がとても美しく映った。
「今日は色々災難だったな」
「あ!そのことお礼を言おうと思ってたんだった!アル、あの時は助けてくれてありがとう」
「俺助けたつもりはないよ。言うべきことを言っただけ。恩を感じることはないさ。それにあの時のロゼかっこよかったよ」
それを聞いてロゼは「あー…」とうなだれる。
「どうした?」
「大臣に反発するなんて失礼極まりないよね。隣国で噂になってたらどうしよう…」
アルはそれを聞いて笑った。
「大丈夫だって!あの場にいたみんなが大臣に非があるってわかってたさ。ロゼは自分の発言に誇りを持ったらいいよ」
「そうかなぁ…」
アルは「うん」と頷いた。
「そういえば、今日は隣国の王子様欠席だったね。病欠なんだっけ?体の弱い方だって大臣言ってたけど」
ロゼは今日の空席を思い出して言った。
「俺も今まで数回しか会ったことないないな。よく病気で寝込んでるけどすごくいい人なのには変わりないよ」
「そうなんだ。私も会ってみたかったな」
隣国の王子様とはどんな方なのか。アルのように優しい方なんだろうなとロゼは思った。
「会って気があったら妃になるのか?」
「へ?」
ロゼはアルの質問に思わず変な声をあげた。
「いやいやいや!ならないかな!だって私ただの街娘で、今はメイドだし。髪と瞳しか目を引き付けないような人だよ?!妃になるなんておこがましいにもほどがあるっていうか…!」
ロゼは慌てて首を振った。自分が妃になるなど考えたこともない。城に上がったとはいえ一般市民だし、今ここに居られるのはアルがいてくれたからである。それを利用して妃になりあがろうだなんてとんでもないことだ。
「そうか。でも俺はロゼのまっすぐなとこ、好きだけどな」
「…え?」
アルはそう呟いて立ち上がった。
「今日はもう遅いし、そろそろ戻るかな。ロゼは明日も早いんだろ?」
「あ、うん」
ロゼもアルを見送るために立ち上がった。
「じゃあまた明日な」
「おやすみ、アル」
「うん。おやすみ」
ロゼはアルの背中を見送って扉を閉めた。いざ一人になってみると忘れていた眠気が不意に襲ってきた。
「私も早く寝なきゃ。明日は買い出し…」
ロゼはベッドに横になると、アルからもらったスケジュール帳を抱いて眠りに落ちていった。
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