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新しい朝
開かれた扉
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「お二人方到着いたしました!」
衛兵について元の部屋へ戻ると、その部屋の床を埋め尽くすような大きな魔法陣が描かれていた。
「お二人は魔法陣の中心へ。召喚術師は指定配置へ!他の者は魔法陣に触れないよう下がってください!」
魔法陣のチェックをするムーアさんの代わりにアルビレオ国の衛兵が指示を促す。
「行ってらっしゃい楓。もとの世界に戻っても私たちのことを忘れないで」
「もちろんです女王様。逆に忘れる方が無理ですよ」
私はここに来てから今に至るまでのことを思い返していた。沢山の出会いと別れがあった。他の人が決して経験できなようなことがいっぱいあった。この大きな糧は必ず私の心の中に残り続ける。そして私を前に進めてくれるだろう。
「ルーク様、アルビレオ国はお任せください。スピカたちや現国王様たちと良い関係を築いていきます。ルーク様は楓の世界で頑張ってください。私には想像もできないような世界なのでしょう。でもルーク様、あなたなら大丈夫でしょう。私は信じています」
「ありがとうございます、カトレア様」
「スピカ」
「ん?」
袖を引かれ振り返ると、そこにファミリアのニッケルを連れたミラが立っていた。
「これ。持って行って」
そう言って渡されたのは小さなペンダントだった。どうやらロケット型のものらしい。
「開けていい?」
「うん」
私はロケットを開けた。
「…これ…」
そこには私とミラが映った写真があった。
「いつの間に撮ったの?!てかカメラとか存在するの?!ここに来て一番びっくりだよ!」
「カメラって何かわからないけど、それはスピカや僕が笑ってる瞬間を魔法で描き出して投影させたものだよ」
「へぇ…」
「これで僕のことは忘れないでしょ?忘れたらニッケルから電流の刑が下るよ」
「忘れないよ!だってミラは大切な友達だもん!」
ミラは「ならいいんだ」と言って笑った。
「帰るのね。気持ち悪いのが減って清々するわ」
「気持ち悪いっていうなー!」
私は振り向かずともわかった声の主に反抗の声をあげた。
「気持ち悪いものに気持ち悪いって言って何が悪いの?全く、スピカは昔から変わらない気持ち悪さだわ」
そういうナターシャの声は少し震えている。
「あれ~?そう言いながらもしかしてナターシャちゃん泣いてる~?」
私はここぞとばかりに茶化す。
「泣いてなんかないもん!気持ち悪い!」
「はいはい」
私はニコニコマンに変身し、ナターシャの頭を撫でた。
「子供扱いするな!気持ち悪い!…これ」
ナターシャは急に声を落ち着かせると、私にひとつの宝石を差し出した。
「すごーい!宝石でできた猫さんだ!」
トパーズのような色合いの宝石は猫の形をしていた。
「それ、光魔法の高度な技なの。放つ魔法を結集させるっていう。私初めてできて…それで、その…スピカに…」
「いいの?!ありがとう!すごく綺麗!」
「偶然成功したからあげるの!いろいろお世話になったし…。別にスピカにあげようと思って作ったわけじゃないの!勘違いしたら殺す!」
えぇ…殺す宣言されちゃったよ…。
「ありがとうナターシャ」
「気持ち悪い」
ナターシャは相変わらずだった。でもそれがとても嬉しかった。
「じゃあ行くぞスピカ」
「うん」
ルークに促され、私たちは魔法陣の中心へ歩き出した。
「召喚最上級魔法!」
ムーアさんが呪文を唱え始める。その度に魔法陣の光は強くなっていく。
「スペルサモン!」
最後の言葉が紡がれた瞬間、私たちは白い光に包まれた。
どこかに流されていく感覚。
繋がれた温かい手。
宇宙を彷徨うような浮遊感。
遠のいていく冒険譚。
そして近づく懐かしい景色。
その時、ひとつの人影が私たちの横を通り過ぎた。
金髪のツインテール、白と黒を基調にしたフリフリエプロン。
私が一番知っている容姿だった。
「スピカさん…」
スピカさんは私に小さく微笑むと、私たちとは逆の方向へ流されていった。
そこで私は自分の容姿が試験を受けていたあの姿に戻っていることに気づいた。金髪のツインテールも、フリフリエプロンも、そして胸の膨らみも…、全てが消え、そこには平凡な一人の少女がいた。
ルークの顔は見れない。ルークはこの私を受け入れてくれるだろうか。
その疑問を打ち消すように、一層眩しい光が私たちを包んだ。
衛兵について元の部屋へ戻ると、その部屋の床を埋め尽くすような大きな魔法陣が描かれていた。
「お二人は魔法陣の中心へ。召喚術師は指定配置へ!他の者は魔法陣に触れないよう下がってください!」
魔法陣のチェックをするムーアさんの代わりにアルビレオ国の衛兵が指示を促す。
「行ってらっしゃい楓。もとの世界に戻っても私たちのことを忘れないで」
「もちろんです女王様。逆に忘れる方が無理ですよ」
私はここに来てから今に至るまでのことを思い返していた。沢山の出会いと別れがあった。他の人が決して経験できなようなことがいっぱいあった。この大きな糧は必ず私の心の中に残り続ける。そして私を前に進めてくれるだろう。
「ルーク様、アルビレオ国はお任せください。スピカたちや現国王様たちと良い関係を築いていきます。ルーク様は楓の世界で頑張ってください。私には想像もできないような世界なのでしょう。でもルーク様、あなたなら大丈夫でしょう。私は信じています」
「ありがとうございます、カトレア様」
「スピカ」
「ん?」
袖を引かれ振り返ると、そこにファミリアのニッケルを連れたミラが立っていた。
「これ。持って行って」
そう言って渡されたのは小さなペンダントだった。どうやらロケット型のものらしい。
「開けていい?」
「うん」
私はロケットを開けた。
「…これ…」
そこには私とミラが映った写真があった。
「いつの間に撮ったの?!てかカメラとか存在するの?!ここに来て一番びっくりだよ!」
「カメラって何かわからないけど、それはスピカや僕が笑ってる瞬間を魔法で描き出して投影させたものだよ」
「へぇ…」
「これで僕のことは忘れないでしょ?忘れたらニッケルから電流の刑が下るよ」
「忘れないよ!だってミラは大切な友達だもん!」
ミラは「ならいいんだ」と言って笑った。
「帰るのね。気持ち悪いのが減って清々するわ」
「気持ち悪いっていうなー!」
私は振り向かずともわかった声の主に反抗の声をあげた。
「気持ち悪いものに気持ち悪いって言って何が悪いの?全く、スピカは昔から変わらない気持ち悪さだわ」
そういうナターシャの声は少し震えている。
「あれ~?そう言いながらもしかしてナターシャちゃん泣いてる~?」
私はここぞとばかりに茶化す。
「泣いてなんかないもん!気持ち悪い!」
「はいはい」
私はニコニコマンに変身し、ナターシャの頭を撫でた。
「子供扱いするな!気持ち悪い!…これ」
ナターシャは急に声を落ち着かせると、私にひとつの宝石を差し出した。
「すごーい!宝石でできた猫さんだ!」
トパーズのような色合いの宝石は猫の形をしていた。
「それ、光魔法の高度な技なの。放つ魔法を結集させるっていう。私初めてできて…それで、その…スピカに…」
「いいの?!ありがとう!すごく綺麗!」
「偶然成功したからあげるの!いろいろお世話になったし…。別にスピカにあげようと思って作ったわけじゃないの!勘違いしたら殺す!」
えぇ…殺す宣言されちゃったよ…。
「ありがとうナターシャ」
「気持ち悪い」
ナターシャは相変わらずだった。でもそれがとても嬉しかった。
「じゃあ行くぞスピカ」
「うん」
ルークに促され、私たちは魔法陣の中心へ歩き出した。
「召喚最上級魔法!」
ムーアさんが呪文を唱え始める。その度に魔法陣の光は強くなっていく。
「スペルサモン!」
最後の言葉が紡がれた瞬間、私たちは白い光に包まれた。
どこかに流されていく感覚。
繋がれた温かい手。
宇宙を彷徨うような浮遊感。
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そして近づく懐かしい景色。
その時、ひとつの人影が私たちの横を通り過ぎた。
金髪のツインテール、白と黒を基調にしたフリフリエプロン。
私が一番知っている容姿だった。
「スピカさん…」
スピカさんは私に小さく微笑むと、私たちとは逆の方向へ流されていった。
そこで私は自分の容姿が試験を受けていたあの姿に戻っていることに気づいた。金髪のツインテールも、フリフリエプロンも、そして胸の膨らみも…、全てが消え、そこには平凡な一人の少女がいた。
ルークの顔は見れない。ルークはこの私を受け入れてくれるだろうか。
その疑問を打ち消すように、一層眩しい光が私たちを包んだ。
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