上 下
35 / 44
魔人の復活

作戦開始

しおりを挟む
「ルーク!みんな!」
「スピカ!」
「スピカさん!どうして戻ってきたんですか!?」
私はウィルとともに戦場へ戻った。
戦況は私がお城へ向かう前とさして変わっておらず、女王様の背後に立つ魔神を、剣士、衛兵、攻撃魔法が使える者たちが対峙していた。防御魔法が使える者は魔神を取り囲むようにシールドを展開していた。町などに被害が及ばないようにするためだろう。犠牲者はまだ出ていないものの、その表情には疲れが、体には傷が多く刻まれていた。
「全員攻撃やめ!身を守ることに専念しろ!」
ルークは指示を告げると慌てたように私の元へ走ってきた。
「スピカ!どうして戻ってきたんだ!」
「ルーク、魔神の封印方法がわかったの!」
「本当か!」
「私の父がその資料を残していたんです」
ルークの瞳が私の横に立っていたウィルに移る。
「君の父とは…」
「女王様の話に出てきたカイルのことです」
「そうか…」
ルークはそっとウィルの前に立った。
「君の父上は偉大な方だ。君の父上のおかげでこの国は救われるかもしれない。この戦いが終わった後、その敬意を讃えよう」
「ありがとうございます。それでその方法なのですが、皆さんの力が必要です。特に召喚術師などの魔法が使える者には負担がかかるかもしれません」
「わかった。魔力欠損による犠牲者は出したくない。その点は考慮して指示を出そう。方法を教えてくれ」
ウィルは大きく頷くと、先ほど見つけた封印の方法を簡潔にかつ的確に話した。
「わかった。後ろ首に生えているツノの真下だな。核を狙うのは俺が引き受けよう。魔術師たちは魔力を極力使わせないようにする。その他の衛兵たちは魔神の気をひきつけることに専念してもらおう。どうかな」
「いいと思います。ただ、女王様に作戦がばれるとどうなるかわかりませんので、大声で指示を通すのはダメだと思います」
ウィルはそっと女王様に視線を向けた。今の女王様に前の優しい笑顔はない。ウィルはどこか悲しそうに目を伏せた。
「わかった。衛兵側に指示を回してくれ。その後君も戦闘に加わってくれ。でも無理はするな。いいな?」
「はっ!」
ウィルはルークの指示を聞くと、足早に衛兵たちの元へ駆けて行った。ルークはそれを確認すると再び私に視線を戻した。
「スピカ、ありがとう。封印方法が見つかったのは君のおかげでもある」
私は頭の中で「?」を浮かべる。私はまだルークに封印方法を探していたとは言っていないのだ。
「君のことだ。城に戻った後、ずっと探していてくれたんだろ?」
「…!」
私はルークの鋭い指摘に思わず顔をそらした。
「君のやりそうなことぐらい察しがつくよ。本当にありがとう」
ルークは私の頭を優しく撫でると、真剣な面持ちで戦場を見た。
「スピカ、君は安全なところに退避してろ。城に戻れと言っても、もう戻る気はないんだろ?」
「うん」

終末をこの目で見届ける。

ここに来るまでにそう誓った。
「皆指示は聞いたな!用意!」
「あらあら、何を始めるつもりなのかしら」
女王様はこれだけの戦力を相手にひるむ様子はない。
ルークはそんな女王様を強く見つめると、大きく言い放った。

「戦闘開始!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

先生「は~い、それじゃあ皆さん、パーティー組んで~。」

赤べこフルボッコ
ファンタジー
幼い頃から勇者に憧れ、早二十代。いつしかそんな夢を忘れ、ひたすらに仕事に精を出す。そんな毎日を送っていると、体調不良で営業先で大失敗☆会社をクビになり、追い詰められてしまう。人生お先真っ暗、明日自殺をしようと心に決め、布団に入り眠りに落ちる。その時見た夢の中で俺は・・・女神に出会うのであった。 ※基本読み辛いので後々修正していくと思います!!御了承!! 感想を頂けると泣いて喜びます。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い

八神 凪
ファンタジー
   旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い  【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】  高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。    満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。  彼女も居ないごく普通の男である。  そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。  繁華街へ繰り出す陸。  まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。  陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。  まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。  魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。  次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。  「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。  困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。    元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。  なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。  『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』  そう言い放つと城から追い出そうとする姫。    そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。  残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。  「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」  陸はしがないただのサラリーマン。  しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。  今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...