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魔人の復活
作戦開始
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「ルーク!みんな!」
「スピカ!」
「スピカさん!どうして戻ってきたんですか!?」
私はウィルとともに戦場へ戻った。
戦況は私がお城へ向かう前とさして変わっておらず、女王様の背後に立つ魔神を、剣士、衛兵、攻撃魔法が使える者たちが対峙していた。防御魔法が使える者は魔神を取り囲むようにシールドを展開していた。町などに被害が及ばないようにするためだろう。犠牲者はまだ出ていないものの、その表情には疲れが、体には傷が多く刻まれていた。
「全員攻撃やめ!身を守ることに専念しろ!」
ルークは指示を告げると慌てたように私の元へ走ってきた。
「スピカ!どうして戻ってきたんだ!」
「ルーク、魔神の封印方法がわかったの!」
「本当か!」
「私の父がその資料を残していたんです」
ルークの瞳が私の横に立っていたウィルに移る。
「君の父とは…」
「女王様の話に出てきたカイルのことです」
「そうか…」
ルークはそっとウィルの前に立った。
「君の父上は偉大な方だ。君の父上のおかげでこの国は救われるかもしれない。この戦いが終わった後、その敬意を讃えよう」
「ありがとうございます。それでその方法なのですが、皆さんの力が必要です。特に召喚術師などの魔法が使える者には負担がかかるかもしれません」
「わかった。魔力欠損による犠牲者は出したくない。その点は考慮して指示を出そう。方法を教えてくれ」
ウィルは大きく頷くと、先ほど見つけた封印の方法を簡潔にかつ的確に話した。
「わかった。後ろ首に生えているツノの真下だな。核を狙うのは俺が引き受けよう。魔術師たちは魔力を極力使わせないようにする。その他の衛兵たちは魔神の気をひきつけることに専念してもらおう。どうかな」
「いいと思います。ただ、女王様に作戦がばれるとどうなるかわかりませんので、大声で指示を通すのはダメだと思います」
ウィルはそっと女王様に視線を向けた。今の女王様に前の優しい笑顔はない。ウィルはどこか悲しそうに目を伏せた。
「わかった。衛兵側に指示を回してくれ。その後君も戦闘に加わってくれ。でも無理はするな。いいな?」
「はっ!」
ウィルはルークの指示を聞くと、足早に衛兵たちの元へ駆けて行った。ルークはそれを確認すると再び私に視線を戻した。
「スピカ、ありがとう。封印方法が見つかったのは君のおかげでもある」
私は頭の中で「?」を浮かべる。私はまだルークに封印方法を探していたとは言っていないのだ。
「君のことだ。城に戻った後、ずっと探していてくれたんだろ?」
「…!」
私はルークの鋭い指摘に思わず顔をそらした。
「君のやりそうなことぐらい察しがつくよ。本当にありがとう」
ルークは私の頭を優しく撫でると、真剣な面持ちで戦場を見た。
「スピカ、君は安全なところに退避してろ。城に戻れと言っても、もう戻る気はないんだろ?」
「うん」
終末をこの目で見届ける。
ここに来るまでにそう誓った。
「皆指示は聞いたな!用意!」
「あらあら、何を始めるつもりなのかしら」
女王様はこれだけの戦力を相手にひるむ様子はない。
ルークはそんな女王様を強く見つめると、大きく言い放った。
「戦闘開始!」
「スピカ!」
「スピカさん!どうして戻ってきたんですか!?」
私はウィルとともに戦場へ戻った。
戦況は私がお城へ向かう前とさして変わっておらず、女王様の背後に立つ魔神を、剣士、衛兵、攻撃魔法が使える者たちが対峙していた。防御魔法が使える者は魔神を取り囲むようにシールドを展開していた。町などに被害が及ばないようにするためだろう。犠牲者はまだ出ていないものの、その表情には疲れが、体には傷が多く刻まれていた。
「全員攻撃やめ!身を守ることに専念しろ!」
ルークは指示を告げると慌てたように私の元へ走ってきた。
「スピカ!どうして戻ってきたんだ!」
「ルーク、魔神の封印方法がわかったの!」
「本当か!」
「私の父がその資料を残していたんです」
ルークの瞳が私の横に立っていたウィルに移る。
「君の父とは…」
「女王様の話に出てきたカイルのことです」
「そうか…」
ルークはそっとウィルの前に立った。
「君の父上は偉大な方だ。君の父上のおかげでこの国は救われるかもしれない。この戦いが終わった後、その敬意を讃えよう」
「ありがとうございます。それでその方法なのですが、皆さんの力が必要です。特に召喚術師などの魔法が使える者には負担がかかるかもしれません」
「わかった。魔力欠損による犠牲者は出したくない。その点は考慮して指示を出そう。方法を教えてくれ」
ウィルは大きく頷くと、先ほど見つけた封印の方法を簡潔にかつ的確に話した。
「わかった。後ろ首に生えているツノの真下だな。核を狙うのは俺が引き受けよう。魔術師たちは魔力を極力使わせないようにする。その他の衛兵たちは魔神の気をひきつけることに専念してもらおう。どうかな」
「いいと思います。ただ、女王様に作戦がばれるとどうなるかわかりませんので、大声で指示を通すのはダメだと思います」
ウィルはそっと女王様に視線を向けた。今の女王様に前の優しい笑顔はない。ウィルはどこか悲しそうに目を伏せた。
「わかった。衛兵側に指示を回してくれ。その後君も戦闘に加わってくれ。でも無理はするな。いいな?」
「はっ!」
ウィルはルークの指示を聞くと、足早に衛兵たちの元へ駆けて行った。ルークはそれを確認すると再び私に視線を戻した。
「スピカ、ありがとう。封印方法が見つかったのは君のおかげでもある」
私は頭の中で「?」を浮かべる。私はまだルークに封印方法を探していたとは言っていないのだ。
「君のことだ。城に戻った後、ずっと探していてくれたんだろ?」
「…!」
私はルークの鋭い指摘に思わず顔をそらした。
「君のやりそうなことぐらい察しがつくよ。本当にありがとう」
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「スピカ、君は安全なところに退避してろ。城に戻れと言っても、もう戻る気はないんだろ?」
「うん」
終末をこの目で見届ける。
ここに来るまでにそう誓った。
「皆指示は聞いたな!用意!」
「あらあら、何を始めるつもりなのかしら」
女王様はこれだけの戦力を相手にひるむ様子はない。
ルークはそんな女王様を強く見つめると、大きく言い放った。
「戦闘開始!」
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