1 / 6
カルと使い魔
魔法科高等学園
しおりを挟む
ねえ、兄さん
この子のためなら死ねるよね?
ふふっ。そうだと思った
さよなら兄さん
「 」
********
黒板に書かれているクラスメイトの名前。
その中でも一際大きく書かれているのは私の名前である。
そしてその名前の右側には100という数字…
「またクラス1位カルかよ!しかも満点って…」
どこからかそんな声が聞こえてくる。
そう、今黒板に書かれているのは今回の魔唱学テストの成績順名簿。右側の数字はその人の点数である。
「カル」という名前の右側に書かれた3桁の数字をしっかり確認し、心の中でガッツポーズをする。これで今回のテスト教科6科目のうち4科目は満点をとったことになる。
私は教材を持ち直すと、上機嫌で次の授業へ向かった。
ここは人間界と魔界の間にある半下界と呼ばれる世界。
そして私が通っているのは魔法科高等学園という魔法の学校である。
この世界では大きく二種類の人種にわけられる。
生まれつき魔法が得意な者と、生まれつき体術が得意な者。
例外としてどちらも得意な者と、逆にどちらも不得意な者もいるが…
「カル!いつになったらこの初級魔法が発動できるのですか?!」
その例外というのがカルだった。カルは頭脳成績では並ぶ者のいない優秀者でありながら、どれだけ簡単な魔法でも何故か発動させることができないという過去にない例外中の例外であった。
この学校では頭脳成績よりも実践成績が大きく反映されるため、カルの総合成績は中の下となっていた。
「カルってほんとに実践術学だめだよね」
「もともと魔力がないんじゃないの?」
「体術学園に行けばよかったのに…」
実践術学という実践専門の授業になると、周りからはそんな声が決まって聞こえていた。
体術学園とは魔法科高等学園の姉妹校である体術科高等学園のことである。名前の通り、体術を専門とした学園であった。
…そこに入学出来てたらこんなことになってないって…。
この世界にはその二つの学校しか存在しない。なぜなら、人口もそこまで多くない上、例外の者も片手で数える程しかいない。そのため、この世界に生まれた者はどちらかの学園を選ばざるを得ないのだ。
カルが体術学園に行かなかったのは、体力が平均よりもかなり劣っていたからだ。
「この偏差値で入学すれば即死しますね」
と、学長に余命宣告までされた始末である。
「カル!明日の使い魔召喚テスト、楽しみですわね。ついに私たちも使い魔を従えることができるのよ!まぁ…カルは召喚魔法なんて無理でしょうけど?」
「うざ」
世界の三大富豪であるクルシュト家の成績トップわがまま長女、ミレーナ・ド・クルシュトレを、私はばっさりと跳ね除ける。
二つに結われた綺麗な白髪にルビーのような瞳。外見は絶世の美少女なのに中身が物凄く残念な人である。
口が悪いとよく言われる私が偉そうに言える立場ではないが。
ロングの黄髪に同じく黄色の瞳。長い前髪は一部が顔を横断している。目つきが悪いせいかまともな友達も出来たことがない。それが私。
自分の容姿を見直すと悲しくなってくるのでここでやめることにする。
「わーん!カルにうざいって言われたー!」
そう言いながら滑りそうな廊下を駆けていくミレーナを見つめ…あ、転んだ。
彼女の元に心配するクラスメイトがちらほら見える。
特に羨ましいとも思わず、私は次の教室へと足を進めた。
明日使い魔召喚か…
出来るわけない…能無しの私が…
学校の終わり、そんなことを思っていた。
全寮制のため、自分の部屋への廊下を歩く。
使い魔って確か自分の性格を写したような者が召喚されるんだよね。じゃあ私の場合は…。
「考えるのやめとこ」
こうであってほしくない性格しか浮かんでこないため、思考を無理やり停止させた。そもそも召喚なんて私には無理だ。
「だからと言って諦めたりしないけどね!」
部屋に着くと早速教科書類を机に巻き散らかす。実践特訓をした方がいいのはわかっているが、そのためには実践室を借りる許可が必要となるため、諦めた。
とりあえず今できる復習をしていくことにした。
まず、魔唱学。これは呪文を学ぶ教科だ。召喚の呪文とアクセントの位置をしっかり暗記する。一文字でも呪文を間違えたり、アクセントがずれたりするとその魔法は無効となってしまう。
次に魔数学。魔法はそれぞれ発動させる時間が決まっている。魔数学とはその時間を計算する教科で、苦手としている生徒が最も多い。杖で魔法陣を描く時間、呪文を唱える時間、魔力をこめる時間、全てを0.1秒のずれもなく計算しなければならない。
「召喚魔法は3.20秒か…」
しかし私にはなんてことない教科だった。
最後は魔杖術。杖の動かし方や魔法陣の描き方、描き順を覚える教科だ。
全てをなんなくこなし、私はベッドに横になる。
「どうして発動しないんだろ。完璧だって言えるほどしっかり出来てるはずなのに…」
そう呟き、不意に襲ってきた眠気に逆らうことなく私は目を閉じたのだった。
この子のためなら死ねるよね?
ふふっ。そうだと思った
さよなら兄さん
「 」
********
黒板に書かれているクラスメイトの名前。
その中でも一際大きく書かれているのは私の名前である。
そしてその名前の右側には100という数字…
「またクラス1位カルかよ!しかも満点って…」
どこからかそんな声が聞こえてくる。
そう、今黒板に書かれているのは今回の魔唱学テストの成績順名簿。右側の数字はその人の点数である。
「カル」という名前の右側に書かれた3桁の数字をしっかり確認し、心の中でガッツポーズをする。これで今回のテスト教科6科目のうち4科目は満点をとったことになる。
私は教材を持ち直すと、上機嫌で次の授業へ向かった。
ここは人間界と魔界の間にある半下界と呼ばれる世界。
そして私が通っているのは魔法科高等学園という魔法の学校である。
この世界では大きく二種類の人種にわけられる。
生まれつき魔法が得意な者と、生まれつき体術が得意な者。
例外としてどちらも得意な者と、逆にどちらも不得意な者もいるが…
「カル!いつになったらこの初級魔法が発動できるのですか?!」
その例外というのがカルだった。カルは頭脳成績では並ぶ者のいない優秀者でありながら、どれだけ簡単な魔法でも何故か発動させることができないという過去にない例外中の例外であった。
この学校では頭脳成績よりも実践成績が大きく反映されるため、カルの総合成績は中の下となっていた。
「カルってほんとに実践術学だめだよね」
「もともと魔力がないんじゃないの?」
「体術学園に行けばよかったのに…」
実践術学という実践専門の授業になると、周りからはそんな声が決まって聞こえていた。
体術学園とは魔法科高等学園の姉妹校である体術科高等学園のことである。名前の通り、体術を専門とした学園であった。
…そこに入学出来てたらこんなことになってないって…。
この世界にはその二つの学校しか存在しない。なぜなら、人口もそこまで多くない上、例外の者も片手で数える程しかいない。そのため、この世界に生まれた者はどちらかの学園を選ばざるを得ないのだ。
カルが体術学園に行かなかったのは、体力が平均よりもかなり劣っていたからだ。
「この偏差値で入学すれば即死しますね」
と、学長に余命宣告までされた始末である。
「カル!明日の使い魔召喚テスト、楽しみですわね。ついに私たちも使い魔を従えることができるのよ!まぁ…カルは召喚魔法なんて無理でしょうけど?」
「うざ」
世界の三大富豪であるクルシュト家の成績トップわがまま長女、ミレーナ・ド・クルシュトレを、私はばっさりと跳ね除ける。
二つに結われた綺麗な白髪にルビーのような瞳。外見は絶世の美少女なのに中身が物凄く残念な人である。
口が悪いとよく言われる私が偉そうに言える立場ではないが。
ロングの黄髪に同じく黄色の瞳。長い前髪は一部が顔を横断している。目つきが悪いせいかまともな友達も出来たことがない。それが私。
自分の容姿を見直すと悲しくなってくるのでここでやめることにする。
「わーん!カルにうざいって言われたー!」
そう言いながら滑りそうな廊下を駆けていくミレーナを見つめ…あ、転んだ。
彼女の元に心配するクラスメイトがちらほら見える。
特に羨ましいとも思わず、私は次の教室へと足を進めた。
明日使い魔召喚か…
出来るわけない…能無しの私が…
学校の終わり、そんなことを思っていた。
全寮制のため、自分の部屋への廊下を歩く。
使い魔って確か自分の性格を写したような者が召喚されるんだよね。じゃあ私の場合は…。
「考えるのやめとこ」
こうであってほしくない性格しか浮かんでこないため、思考を無理やり停止させた。そもそも召喚なんて私には無理だ。
「だからと言って諦めたりしないけどね!」
部屋に着くと早速教科書類を机に巻き散らかす。実践特訓をした方がいいのはわかっているが、そのためには実践室を借りる許可が必要となるため、諦めた。
とりあえず今できる復習をしていくことにした。
まず、魔唱学。これは呪文を学ぶ教科だ。召喚の呪文とアクセントの位置をしっかり暗記する。一文字でも呪文を間違えたり、アクセントがずれたりするとその魔法は無効となってしまう。
次に魔数学。魔法はそれぞれ発動させる時間が決まっている。魔数学とはその時間を計算する教科で、苦手としている生徒が最も多い。杖で魔法陣を描く時間、呪文を唱える時間、魔力をこめる時間、全てを0.1秒のずれもなく計算しなければならない。
「召喚魔法は3.20秒か…」
しかし私にはなんてことない教科だった。
最後は魔杖術。杖の動かし方や魔法陣の描き方、描き順を覚える教科だ。
全てをなんなくこなし、私はベッドに横になる。
「どうして発動しないんだろ。完璧だって言えるほどしっかり出来てるはずなのに…」
そう呟き、不意に襲ってきた眠気に逆らうことなく私は目を閉じたのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。
平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。
家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。
愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる