仮想世界β!!

音音てすぃ

文字の大きさ
上 下
7 / 121

2.生きるってこと(物理)

しおりを挟む
「おはようございます」

 タバリさんから部屋を貸してもらって、早一週間。
 仕事は簡単なお使いがほとんど。
 今日はマスターから変わった仕事を貰えるそうだ。

「おはようオトメ君。いきなりだが今日からオトメと名乗りなさい」
「は、はい?了解です(なんで)」
「片方を名乗った方が今後都合がいいだろう。それで……君を今日ギルド長室に呼び出したのは特別な任務を任せたいからだ」
「なんでしょう?」

タバリさんは、椅子から立ち、僕に細長い物を投げてわたした。

「うわっ……なんですか……ってこれ剣じゃないですか!」
「オトメ君にも身を守る技術スキルを身につけてほしい。今日は街の外に行ってもらい、ゴブリンと少し大きなイノシシ(狂暴)を討伐してもらう」
「ええ!!僕にできますか?」
「んー?怖いのか?」
「怖いですよ!」
「もちろん同行者は付けない」
「なんで!」
「その剣だけでどうにかしてみせろ」
「(おいおいマジか……)」
「大丈夫だ。最悪死ななければいい。いや、死んでもいいが……っと今のは忘れてくれ」
「マスター……怖いですよ?」

ーーー初?戦闘ーーー

 街「ミルザンド」を出て、平原「アッパーグラス」へ出た。時刻朝の7時。早い。
 ミルザンドは誰が見ても大きな街だ。推定百万弱の人が暮らしているらしい。
 中には大都市「マラサ」ともなると、三百万人ほどいるらしい。

「マジかー、まさか一週間目で戦闘に駆り出されるとは……」

『オトメキョウスケ』master
HP ゲージ 100%
CP ゲージ 100%
MP ゲージ 100%
・武器 アイアンブレード:タナカ製、細
・防具 ギルド制服

 今まで生活してきた限りでは、リョウトさんや、その他の人達(アカネは除く)は、土地開拓、悪党成敗、ダンジョン攻略を行っているらしい。

「ってかなんだよダンジョンって……無視すればいいんじゃないのか?危険そうだし……土地開拓ならまだしも」

 どうやら推測でも、この「メモリー」は、3割ほどしか開拓されていないと報告されている。その殆どは戦闘力不足によるもの……らしい。

なるほど、化物どもと戦うためにリョウトさんとかは、あんな装備をしているわけだ。

「おっと到着したな。アッパーグラスのゴブリンキャンプ。PE頼んだぞ」

「了解、スキャン開始」

『ゴブリンキャンプ』
・敵対ゴブリン 三体
・武装状態、アイアンブレード(耐久力低下)
・焚火
・林檎五個

 ゴブリンキャンプは、旅の途中の好奇心旺盛なゴブリン達の物。
 通常、ミルザンドより離れた所にコロニーを形成するが、こうして人目につく所まで出てくることがある。
 そう、害獣駆除に近いってマスターが言ってた。追い払う程度でもいいと思うんだけどなぁ。

「相対レベルは同等。囲まれなければ討伐の確率は飛躍的に高まるでしょう」
「了解!!」
「ギャー」
「グギャ?ギギャー!」

 楽しそうな会話を楽しんでいるゴブリン達に僕は震える足で突進していく。

「こっち向けや!」

 僕は剣を抜き、キャンプど真ん中に静止した。アホである。
 光る日光を反射して、美しい剣だ。

「ギィギャー!!」

 ゴブリン達は驚きはしたが、すぐさま戦闘態勢を取り、剣を抜く。
 ゴブリンにも幾つか種類がいるが、このゴブリンは小柄な方。
 僕より少し身長が低い、赤く硬化した皮膚、器用そうな手。
 気を抜けば、間違いなく殺されるだろう。

 三体同時に、視界に情報が表示される。それぞれ、ゴブリンA、B、Cと表示された。
 Aが初めに斬りつけてきたが、あっさり避ける。

「この感覚は、前にも……」

 思いにふける前に、Aは更に切りかかる。

「危ね!」

 それを前に出るように避け、ゴブリンAを斬りつけた。

「ギャー!」

 同時に血が吹き出し、痛みにもがいている。

「うっ……気持ち悪……以外と刃通らないし」
「メンタルバランスに乱れが生じています。落ち着くまで距離をとってください」

 僕は下がりつつ、Aのステータスを確認すると、HP、CPともに0%だった。
 一撃だったようだ、奇跡だろう。

「ふぅふぅ……少し良くなったな」

 体が強ばるような、興奮するような、冷たくなるような、不思議な感覚だ。
 少し可哀想だとおもった。すると、血の付いた剣を振るのが怖くなった。
「安心してください。ゴブリン達は死亡すると、魂と肉体は分離され、転生します。私達の脅威排除と考えることを推奨」

「……わかった、ありがと」

 そうだ、害虫駆除と一緒だ。人を襲ってからじゃ遅い話もある。虫を殺したことがないわけじゃないだろ。だったら大丈夫。
 完全に納得したわけではないが、足の震えは止まった。

「残り、BとCか……うおぉぉ!」


ーーーーーー


 ……その後、無事討伐というか、殺害完了した。

「推奨行動、剥ぎ取り、ドロップ品の確認、及び状態異常回復」

 剥ぎ取りは皮をはいだりするわけではなく、装備を回収した。
 ドロップ品は「ゴブリンスラッシュ」、状態異常は「恐怖」これは時間経過と共に回復した。

「このゴブリンスラッシュってアイテムなの?」

 説明します。スキルカードと呼ばれるアイテムです。使用すると、消滅、名前のスキルを取得することが可能です。また、作成が可能、この『メモリー』では、既存のものからそうでないものまで一万ものスキルが存在。推奨行動、ゴブリンスラッシュの使用」
 なるほど、これは興奮するな!
 早速使用方法を確認すると、どうやらPEに任せて大丈夫そうだ。

「ゴブリンスラッシュ、使用たのむ」

 すると、体が光り始め、「スキル取得!」の表示が現れた。
 僕は、ゴブリンの死体の後ろで、一人ガッツポーズをとっていた。
 そのよくわからないカッコよさを覚え、いつの間にか、戦闘が楽しくなってきていた。ああ、以前の僕ではこうはいかなかっただろう。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

王子妃だった記憶はもう消えました。

cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。 元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。 実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。 記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。 記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。 記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。 ★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日) ●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので) ●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。  敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。 ●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

処理中です...