仮想世界β!!

音音てすぃ

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71.意地っ張り

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 オトメが地面に倒れた後、数秒後、キリカが駆け寄ろうとする時、その後ろから何かがそこへ投げ入れられる。
 クリアは分からなかっただろう、反射で白い剣を以て防いだ。
 キリカはフラッシュグレネードだと感知、目と耳を塞いでしゃがんだ。

 絨毯駆ける破れた野戦服、またも何かを投擲、それはオトメが掲げた手に収まる。
 すでにコルクが抜かれているそれから流れる液体はオトメに降り注ぎ、輝きと仮想文字によってその肉体を成立させていく。
 そして全員が視界をとりもどした。

「なにが起きた?」
「……カエデ!?」
「そうだ、カエデだ、私が声を取り戻した、どういう意味か分かるな?」
「ならば……我が妹は敗北したというのか!?」

 オトメが立ち上がる、瞳孔が黒色から赤色に変わり、独り言を口にする。
 キリカはキョウスケだと分かり、オトメの復活に歓喜した。

 切断された部位は再生を果たし、潰された目も元通り、両手には愁と絶叫が握られていた。

「オトメ君……!」

 背中から感じる生命のオーラ、薄らに見える魔糸、魔力も回復している。

「どこでそれを手に入れた……人間!」
「しょうがないから教えてやる、貴様の可愛いかわいい……」
「クソがっ!」

 クリアは自らの想像が的中し、怒りのままに白い剣をカエデに射出した。

「何度も同じ手を食うか」

 カエデはそれを目視で回避してみせる。

「カエデ、声を聴けてうれしい」
「そうか、気持ち悪いから目の前の頭蓋を粉砕してくれ」
「……任せろ」

 体は万全、溢れる生気と完璧なコンディションの肉体、オトメは白い剣をかいくぐるように左に握られた剣を奥の壁に投擲した。

「ヘタクソだな」
「アレを防がなかったこと、後悔するな」

 代わりにルーンナイフを装備、接近戦に移行。

「オトメ君、クリアを殺さないで!」
「はぁ?キリカ、何を!?」

 カエデが動揺するが、僕はそれを落ち着いて聞いていた。

「推奨行動」
「キリカの助言を受け入れろ……だろ?」
「ご名答」

「了解、キリカ!」
「なめた真似を!」

『白い十剣:三』Enemy
相対レベル:-5(回避補正:-20)
・クリア操作
・攻撃力:致命的一撃
・HPが存在
他スキャンを実行していません。

 白い剣が生き物のように襲い掛かるが、今の僕には全ての動きが予測できる。
 目視でも聴覚でも感覚でも、体全身で動きを感じて回避と攻撃を仕掛ける。
 服すれすれで避け、連撃、斬撃と体術による打撃。
 HPを削りきると、魔法が切れたように絨毯に倒れる。

 二、四、五、七が襲い掛かるが、全てを見切り、修羅のように舞い、斬り倒した。
 剣を斬るイメージより、魔力を断ち切るイメージだった。

「どうしてだ、どうして人間は私たちに干渉するのだ!?」
「知らないよ、僕だって生を受けて一年も生きてないんだから」
「はぁ?戯言極まったと思ったが度を超えていたとは」
「干渉ねぇ、どの口が言うのか。僕の体を痛めつけるのは楽しかったか?シロカミでもない僕を斬りつけて楽しかったか?」
「……外の人間が……!」
に僕の何が分かる!それでも王を名乗るのかよ!」
「徹底的に、その口を塞ぐ!」

 遂にクリアが剣を取る。

「深淵具、召喚『ホワイトチェーン』『フラグメントマスター』言葉を返そう、お前に何が分かる!?」
「記憶を失うことがどれほど怖いか、知らないくせに!」

 白い剣は全て絨毯に沈黙、クリアの右手に鎖、左手には白いオーラを纏う剣を持つ。

『ホワイトチェーン』
・鎖:深淵具
・特殊効果:思考駆動
・耐久LV.4、魔力打消しLV.3

『フラグメントマスター』
・両手剣(片手持ち可):深淵具
・特殊効果:2秒チャージ衝撃波
・筋力強化、攻撃力上昇LV.6

 さすがのスキャン能力、やっぱりあの剣いいな。
 気になるのは左の方だ。
 きっとクリアとはまだ語ることがある。
 僕は魔糸を実体化、それはクリアの身体を貫く位置にあった。

「なんだこれは?」
「後悔の……一つだぁあ!」

 全力で魔糸を引き、奥の壁の剣を引き寄せる。
 クリアの表情からするに気づいた、そして剣は柄からクリアの右肩から先を切断した。

「うっ……ああ!」
「その痛み、同情するよ」

 不意打ち気味の攻撃にクリアは声を上げる。
 剣を回収し、元の二刀に戻った。

「これでお互いだな」
「……お前、やはり片腕の剣士を知っている……マニーめ」
「あ……あの人たちは関係ない。言ってるのと同じか」

 千切られた腕は鎖と共に落ちる。
 白い剣とは異なり、遠隔操作はできないようだ。

「再生水で右腕を作っていたのか?」

 剣先を僕に向ける。
 表情に余裕がなくなり、殺意が伝わる。

「片腕を取ったからといって侮るなよ」

 よく立っていられる、普通なら僕みたいに痛みでもがくのに。
 そんなことを考えていたら、二本の白い剣がクリアの周りに浮遊した。
 残りのMPと集中力を考えると二本が限界なのかもしれない。

『クリア・エスタロッドレシア』Enemy?
相対レベル:32(回避補正:32)
・武器:フラグメントマスター
・防具:純白王の契約(鎧)
・アクセサリー:復讐者の怨恨(首飾り)???
他スキャンを実行していません。

「侮らない……これが僕の元の姿だ!その剣に刻んでやる!」


 僕がクリアと剣を交わらせている時、後ろではカエデがキリカが前に出ないように抑えていた。
力が強い、長時間抑えるのは無理だろう。

「離してカエデ!」
「それは無理だ、あれはキリカが行ってはならない闘いなんだ」
「どうして、だってクリアは!あんな優しくて人の気持ちが分かる人はいないよ!」
「冗談はやめろ、あんな分からず屋の王なんて……」
「そりゃ、外の人には少しキツイかもしれないけど!」
「ふざけるな!」

 少し力が弱まった。

「……カエデは村を見た?」
「村?」

 キリカがカエデの肩を強く握り、刺さるような眼光で見つめた。
 怒りではなく、悲しみが感じられた。

「あそこにはで生きることが出来なかった人達がいっぱいいる。そう、シロカミだよ。クリアはそんな人達のためにここを作った。子供たちは皆幸せそうだった……」
「それでも!」
「知ってる?」
「?」
「先天性のシロカミはね?子が大きくなる前に、親に殺されてしまうのがほとんどなの。親でなければ周りの誰かが。悪魔の生き物、まるで魔獣とかモンスターとかみたいにね」

 僕はそれを軽く聞いた。
 そうか、ミルザンドでキリカと初めて会った時、キョウスケがシロカミはほとんどいないと言ったことと通じる。

「彼女、クリアは……私たちの希望そのものなの!」
「……クソッ」

 カエデはキリカを突き飛ばし、アサルトライフルを構える。
 殺意とは違う、諭すような銃口だった。

「キリカ、私はキリカの気持ちはなんとなくわかる。だが、お前はここに居たいのか?ECFの人間ではないのか?オトメを守るのがお前の役目ではなかったのか!それが偽りなら、ここで記憶をリセットしてやろう!」
「わかって……るよ!」

 キリカの右腕が蒼く光を挙げる。

「キリカ?」
「私は勿論オトメ君が大切よ。でもね、ここを冒す者は彼女のとして許さない!」
「そうか……子供っぽい言い訳だ。む、というか……先に仕掛けてきたのは王の方なんだがな……いいだろう、外には山ほど再生水がある。四肢を千切ってでも連れて帰るぞキリカ!」
「こめんありがとうカエデ、我がままに付き合ってもらって……行くよ、私の貴女の四肢を斬ってでも止める!」

 魔力放出で作られた剣がキリカの右手には握られていた。
 普通、剣を媒体にするスキルの為、このような使い方はMP消費が多い。
 不定形、MPが尽きた時がキリカの敗北の合図。

「青の……剣閃!止めてみろよぉお!」





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