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29.一日と魔法の話
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朝は6:00に起床、ベッドメイキング、点呼。
6:30に朝礼、ここで僕たちの一日がスタート、エネルギーが注入される。
その後、アップ混じりのトレーニング。心拍数を上げる運動で、体から酸素が無くなるようだ。
有酸素運動と無酸素運動を交互に繰り返し、短時間で大きな効果を期待できるらしい。
この後は基礎体力訓練と対人訓練だ。ここまでは皆同じ。たまにメニューが変わる。朝が一番大切らしい。
そして10:00になると一旦休憩(かなり短い)、ここで各役職ごとにバラバラの時間になる。
サイケンは、機械整備士とか、調理士とかいるんだぞ!って言ってた。
僕はそのまま基礎体力の訓練を続行する。
12:00になると昼休憩だ。ここで昼ご飯を食べたりする。食堂があって、とにかく飯がウマい。ルーム210の四人はよく食べる。僕はご飯の前に逆立ちランニングの残りを消化することが多い。最近ではベッドメイキングが上手くなってきて、機会は減った。
「ベッドメイキングはな、出来て当たり前」
らしい、僕もその精神を会得しつつある。
そして13:00から訓練再開、勿論人によってメニューは異なり、17:00まで続ける。
そこからはフリーの時間になる。
映画を見たり、買い物をしたり。
要塞内の施設では娯楽施設も多いみたいだ。
僕はまだ全ての施設を廻り切れていない。
移動式要塞ノアオルタは、各地域に転送ポイントというものをもっていて、週に二度の休みの日に委員がお出かけに行くらしい。
かなりエネルギーを必要とするらしく、故に毎日ポンポンとはいかないみたいだ。
17:00の後はツルギさんと個別戦闘訓練だ。
毎日課題を与えられ、「一日一つ」が合言葉。
たまにギンジさんとやることがあるが、あの速さにも慣れてきた。ほんの少し。
そして、相対レベルが全体平均が5上がった時である。
僕も大分自身がついてきた時期、もう一ヵ月は経過しただろう。
ここでの生活も板についてきた。
今日は午後からツルギさんに魔術研究室に行くように言われた。
「ここかな?」
「目の前は魔術研究室になっています」
そこは武器開発棟の隣にあった。
スライドドアの横に名札が設置されていて名簿が書いてある。
「けっこう人いるんだなぁ……」
「あれ、オトメくんだ」
「キリカか、どうしたんだ?」
「ツルギさんに魔術研究室に行けって言われたから」
「奇遇、僕もなんだ。じゃ一緒に入ろうぜ」
キリカも一緒に扉を開ける。
「こんにちわ、僕らツルギさんの命で来ましたオトメです」
「同じくキリカです」
研究室といえば、意味不明の機械類とか、薬品とか、そんなものを想像していたが、本当にそうだった。
「待ってたよ、お二人さん。私はスギっていう。スギ博士って呼んでくれると嬉しい」
研究室内の数名白衣の内、一人だげメガネをかけた女性が僕たちに自己紹介をする。
黒髪を後ろで束ねて、化粧もほとんどしてないのだろう、いや、寝てないのかも。そんな時間もないのだろう。一応同業者だ。わかる。
『スギ』Green
相対レベル-44(回避補正:-70)
・武器:empty
・防具:白衣
・かなり弱い、君なら2秒で殺せる。
他スキャンを実行していません。
「オトメ君とキリカ君だね。君たちの実力は聞いているよ。かんなり強いんだって?これはお姉さん、強い魔力期待しちゃうなぁー」
「魔力?」
「私はね、魔力とかエーテルとかの研究をしていてね、君たちに簡単な事を教えろって言われてるんだ」
スギ博士はメガネをキラッと輝かせた。あれ、そんな照明なかったぞ。
「魔力だってさ、キョウスケは知ってる?」
僕は目に念で訊いてみる。
「はい、β世界に転送されると後天的に会得できるエネルギーの一種です」
後天的ということは僕も持っているのだろう。無意識にMPと関係あることはわかった。
「まぁまぁオトメ君、D9に訊かなくたって、私に訊けばいいじゃないか」
「え、何でわかるんです?キョウスケに訊いたなんて言って……」
「内緒、ふふふ」
「じ、じゃあスギ博士、私の考えていることわかりますか?」
キリカが食い気味で質問すると、スギ博士がまじまじと見つめる。
「うん、なんとなくわかるよ、でも私が言わない方がいいと思うなぁ」
「げ、ホントに見える人なんだ」
「スギ博士、教えてくださいよ、キリカのこと」
「嫌だ」
「訊かなくていいから!」
ゴッ!
CP-3
思考を盗み見る力、それに近いものを持っているのだろう。便利だな。
「痛い(すげー能力だなこの人)」
殴られた僕を気にせずに、スギ博士は話を続ける。
「安心してくれ、もう盗聴効果は解除したからね。じゃあ『魔力』とは!それは神秘に満ち溢れ、強大な力と創造性、魔の性質を利用した人間の新しい可能性……」
要約すると、『魔力』とは、キョウスケも言った通り、NO.1.00世界では確認されず、β世界にのみ存在するエネルギーらしい。
僕のように転送、もしくは死亡に伴う記憶消滅と復活をした人間は、初め魔力を所有していないらしい。
この世界にはいたるところに魔力はあり、それはもう空気のようらしい。
そして、成長と時間経過により人体に魔力が蓄積される仕組みだ。
これは個人差があるらしく、魔力を蓄積する才能が無い人も多いみたいだ。
逆に強大な魔力をため込み、お尋ね者にされている人も。
次に『エーテル』とは、様々な学術で使われている言葉とは別の単語で、30代自称ゲーマーが命名権利より命名した。
その時の台詞、「まじMP回復するわ!」
その後、行方不明。
この世界におけるエーテルとは、魔力を伝える媒質らしい。
これも大気と生物への蓄積性があり、これが強靭な人は魔力を上手く扱えるらしい。
よく言う天才。
基本的に『魔術』同義の『魔法』を使えば魔力蓄積上限は増える。筋トレと一緒。言葉のニュアンス的には『魔法』の方が強力らしい。
また、魔力の扱い方には訓練が必要で、大切なのは想像力。見た目はただのサイキッカーだ。
これがいままでになかった、思考と同調して形を変えるエネルギー魔力だ。
そして、注意しなければならないことがある。
魔力は術者からの命令で簡単に姿を変える性質から、火だったり、風、水、と様々な種類があるが、自然界のそれらと性質が異なる。
よく魔性の火を「魔炎」と言い、周囲のエーテル場というものを歪める性質がある。よって危険。
また魔性の水を「魔水」といい、水自体がエーテル場を歪める性質がある。よって危険。飲んではいけない。
人体のエーテル場を汚染し、具合が悪くなるらしい。
もう「魔」とつけば使用に注意しなければいけない。特に大魔術系統の魔術は周囲にエーテル汚染を引き起こし、不毛地帯にしてしまうらしい。
また、モラルとして、強力な魔術を故意にぶつけ合ってはならない。
文字通り、空間が歪むらしい。あぁ怖い。
「……ってことなんだ、わかったかい?要するに『魔力』が荷物で『エーテル』が乗り物だ!」
「まぁ……」
「一応」
じぁ早速!と言ってスギ博士は表が真っ白なトランプカードを差し出した。
「これは?」
「君たちの魔力、エーテル、もろもろをチェック!してくれる装置さ」
僕とキリカは受け取って、暫く眺めていると、読めない文字が並んだ。
「これでいいんですか?」
「オーケーだよ二人とも!」
嬉しそうにナゾの装置にカードを突っ込み、笑っている。
「よし、解析は完了だ……えぇと、オトメ君は……あんまり魔力量が多くないねぇ。けどエーテル場はしっかりしているね。不安定になることはないんじゃないかな。そして、適正は……『液体硬化』だってさ」
「液体硬化?」
「うん、魔性液体のエーテル場を支配して、魔力による硬化能力をかける魔術だね。学校で習う、個体、液体、気体ってあるけど、液体が個体になるわけじゃないんだ。なんていうんだろうな、液体の分子の結合が強くなるというか……」
「いいです長い話は!つまり、戦場で使えるってことでいいんですよね?」
「そうだね、訓練してみたらどうかな」
「はい!」
僕は新しい戦闘手段に高揚を覚えた。
「キリカ君は……魔力量が多いね、委員でも五本のうちに入るんじゃないかな?でもエーテル場が軟弱かな、強い魔力の制御が効かないから自爆しちゃわないでね。そして、適正は……って、ん?『青の剣閃』って聞いたことがないなぁ。そもそも魔術なのか?」
青い剣閃という言葉に覚えがある。キョウスケがツルバ戦の時に命名したはずだ。
「スギ博士、それはキリカのユニークスキルっていうらしいです」
すると腱膜を変えて、動揺した。
「ユ、ユニークスキル!?他に存在するとは……私のアーカイブにも載ってないぞ!新発見だ!」
「まぁつい最近覚醒したらしいですから……」
とキリカが補足する。
「なるほどなるほど……万物を切断……」
スギ博士はメモを取り始めていた。
「よーくわかった。君たちは素晴らしい、お礼に簡易な魔術を教えよう!」
ということで、炎、水、風、念動力、と色々教えてもらった。
やはり大切なのは想像力らしい。
それだけでいくらでも魔術は作れるみたいだ。スキルのように固定された動きを取れたのなら、実用性が高いかもしれない。
「ありがとうございました!スギ博士!」
「いやいやいいんだよ、私もいい経験だ。仲間にもう一人ユニークスキル持ちがいるとは……」
「一人?誰ですか?」
「ツルギさんの『エーテルステップ』っていう瞬間移動だよ。あれの構造がどうしても解析できなくてねぇ……いやね?少しは分かるんだよ?」
やっぱりツルギさんは化け物だった。
「それとツルギさんには必殺技があるけど、それは戦場で見てきてね、すごいよ!」
「はい……楽しみにします」
この人は本当に魔術が好きなんだな。熱の入った話はいつ聞いても楽しい。
「じゃ、私の簡易授業は終了かな。あっと……オトメ君は残ってくれ」
「は、はい」
するとキリカは、不満そうな心配の目をスギ博士に向けて出て行った。
「じゃあねオトメ君」
「おう」
「……言いたいことが二点ある。とっても大切だ、いいね?」
「はい」
「君のルールメイトにガラス君という少年がいると思う。君はPE持ちだ。彼のフルネームをスキャンしただろう、しかし、絶対に全ての名前を呼んではいけない、わかったね?」
「はい、それはガラスから言うなって言われたから言ってないですけど……」
「ならよかった。彼はね、さっきの話の応用だけど、魔力が強すぎで、エーテル場が軟弱なタイプなんだ。自分でコントロール出来なくて周囲に魔力攻撃を意識とは関係なくしてしまう可哀想な子なんだ。だから名前にロックをかけたんだ。私の研究でね。コードネームとしてガラス君を登録したから彼のフルネームを知っている人は私だけだ。いや、君もか」
「あれが人の名前……なんですか?」
「まさか、私がつけたのだよ!」
サイキッカーと人間につけるか!?
「しょうがなかったのさ、彼は一度死んでいるから、誰も名前なんて知らない。そもそも委員のリストに載ってない外部の人間だ。あれしかなかった……まぁ要するにだ、フルネームを呼ばないでってことで!封印が解けてしまうからね!」
「了解です……それとあともう一つは……?」
「そうだった!オトメ君はスキルカードについて知っているかい?」
「はい、今まで二回使いました」
すると、そのスキルカードを取り出すようにと、マッサラなカードを二枚渡された。
「スキルは魔術とは少し異なる……例えるなら、魔術は流体、スキルはセットだ……」
「ねぇキョウスケ、スキルってカードにして取り出せるの?」
「一旦自身から文字通りに取り出すことは可能です。そのカードがあれば」
「スギ博士、一体何をしたいんですか?」
「よく訊いてくれたね、それはね、スキル合成さ!」
それは好きなスキルを掛け合わせることによって、新たなスキルを生み出そう!がコンセプトの研究らしい。
やれ、と言われたので、適当に出してみる。
「しばらく使ってないゴブリンスラッシュとか……鬼神剣かな……兜割りは……やめよう、どうせ腕が吹き飛ぶ」
僕は二枚、「ゴブリンスラッシュ」「鬼神剣」をカードにする手続きをキョウスケに任せた。
「どうぞ」
「ありがとう!滅多にこのカードは手に入らないから、貴重なスキルになるぞう!……あ、魔力源が無かった」
「魔力源ですか?人間の魔力じゃダメですか?」
「人でもいいんだが、危険だと思う。君は魔石を持っているかな?小さいのでいい」
そういえば魔石(小)を持っていた。早速渡してみる。
「すごい、君は何でも持っているね!実はね、予算の関係で魔石が足りなくて……あぁ魔石ってのは魔力を蓄える……」
と、喋りながら、また怪しい機械にぶち込む。
「これだ……これが見たかったんだ……!!」
「キレイだ……」
二枚のカードは光の粒子を出し合い、一体となっていく。
「まるで……生命活動を見ているようだ!美しい……まさに……雄と雌の……」
「あああああああああああああああああああああ」
スギ博士の言動が怪しかったので、大声で耳をふさいだ。
それでもカードは融合を果たし、スギ博士の手に乗る。
「新作だ。剣、両手剣スキル、名称を──────」
唾をのんで期待する。
「『エリアル・マジック』新しい君の相棒さ」
6:30に朝礼、ここで僕たちの一日がスタート、エネルギーが注入される。
その後、アップ混じりのトレーニング。心拍数を上げる運動で、体から酸素が無くなるようだ。
有酸素運動と無酸素運動を交互に繰り返し、短時間で大きな効果を期待できるらしい。
この後は基礎体力訓練と対人訓練だ。ここまでは皆同じ。たまにメニューが変わる。朝が一番大切らしい。
そして10:00になると一旦休憩(かなり短い)、ここで各役職ごとにバラバラの時間になる。
サイケンは、機械整備士とか、調理士とかいるんだぞ!って言ってた。
僕はそのまま基礎体力の訓練を続行する。
12:00になると昼休憩だ。ここで昼ご飯を食べたりする。食堂があって、とにかく飯がウマい。ルーム210の四人はよく食べる。僕はご飯の前に逆立ちランニングの残りを消化することが多い。最近ではベッドメイキングが上手くなってきて、機会は減った。
「ベッドメイキングはな、出来て当たり前」
らしい、僕もその精神を会得しつつある。
そして13:00から訓練再開、勿論人によってメニューは異なり、17:00まで続ける。
そこからはフリーの時間になる。
映画を見たり、買い物をしたり。
要塞内の施設では娯楽施設も多いみたいだ。
僕はまだ全ての施設を廻り切れていない。
移動式要塞ノアオルタは、各地域に転送ポイントというものをもっていて、週に二度の休みの日に委員がお出かけに行くらしい。
かなりエネルギーを必要とするらしく、故に毎日ポンポンとはいかないみたいだ。
17:00の後はツルギさんと個別戦闘訓練だ。
毎日課題を与えられ、「一日一つ」が合言葉。
たまにギンジさんとやることがあるが、あの速さにも慣れてきた。ほんの少し。
そして、相対レベルが全体平均が5上がった時である。
僕も大分自身がついてきた時期、もう一ヵ月は経過しただろう。
ここでの生活も板についてきた。
今日は午後からツルギさんに魔術研究室に行くように言われた。
「ここかな?」
「目の前は魔術研究室になっています」
そこは武器開発棟の隣にあった。
スライドドアの横に名札が設置されていて名簿が書いてある。
「けっこう人いるんだなぁ……」
「あれ、オトメくんだ」
「キリカか、どうしたんだ?」
「ツルギさんに魔術研究室に行けって言われたから」
「奇遇、僕もなんだ。じゃ一緒に入ろうぜ」
キリカも一緒に扉を開ける。
「こんにちわ、僕らツルギさんの命で来ましたオトメです」
「同じくキリカです」
研究室といえば、意味不明の機械類とか、薬品とか、そんなものを想像していたが、本当にそうだった。
「待ってたよ、お二人さん。私はスギっていう。スギ博士って呼んでくれると嬉しい」
研究室内の数名白衣の内、一人だげメガネをかけた女性が僕たちに自己紹介をする。
黒髪を後ろで束ねて、化粧もほとんどしてないのだろう、いや、寝てないのかも。そんな時間もないのだろう。一応同業者だ。わかる。
『スギ』Green
相対レベル-44(回避補正:-70)
・武器:empty
・防具:白衣
・かなり弱い、君なら2秒で殺せる。
他スキャンを実行していません。
「オトメ君とキリカ君だね。君たちの実力は聞いているよ。かんなり強いんだって?これはお姉さん、強い魔力期待しちゃうなぁー」
「魔力?」
「私はね、魔力とかエーテルとかの研究をしていてね、君たちに簡単な事を教えろって言われてるんだ」
スギ博士はメガネをキラッと輝かせた。あれ、そんな照明なかったぞ。
「魔力だってさ、キョウスケは知ってる?」
僕は目に念で訊いてみる。
「はい、β世界に転送されると後天的に会得できるエネルギーの一種です」
後天的ということは僕も持っているのだろう。無意識にMPと関係あることはわかった。
「まぁまぁオトメ君、D9に訊かなくたって、私に訊けばいいじゃないか」
「え、何でわかるんです?キョウスケに訊いたなんて言って……」
「内緒、ふふふ」
「じ、じゃあスギ博士、私の考えていることわかりますか?」
キリカが食い気味で質問すると、スギ博士がまじまじと見つめる。
「うん、なんとなくわかるよ、でも私が言わない方がいいと思うなぁ」
「げ、ホントに見える人なんだ」
「スギ博士、教えてくださいよ、キリカのこと」
「嫌だ」
「訊かなくていいから!」
ゴッ!
CP-3
思考を盗み見る力、それに近いものを持っているのだろう。便利だな。
「痛い(すげー能力だなこの人)」
殴られた僕を気にせずに、スギ博士は話を続ける。
「安心してくれ、もう盗聴効果は解除したからね。じゃあ『魔力』とは!それは神秘に満ち溢れ、強大な力と創造性、魔の性質を利用した人間の新しい可能性……」
要約すると、『魔力』とは、キョウスケも言った通り、NO.1.00世界では確認されず、β世界にのみ存在するエネルギーらしい。
僕のように転送、もしくは死亡に伴う記憶消滅と復活をした人間は、初め魔力を所有していないらしい。
この世界にはいたるところに魔力はあり、それはもう空気のようらしい。
そして、成長と時間経過により人体に魔力が蓄積される仕組みだ。
これは個人差があるらしく、魔力を蓄積する才能が無い人も多いみたいだ。
逆に強大な魔力をため込み、お尋ね者にされている人も。
次に『エーテル』とは、様々な学術で使われている言葉とは別の単語で、30代自称ゲーマーが命名権利より命名した。
その時の台詞、「まじMP回復するわ!」
その後、行方不明。
この世界におけるエーテルとは、魔力を伝える媒質らしい。
これも大気と生物への蓄積性があり、これが強靭な人は魔力を上手く扱えるらしい。
よく言う天才。
基本的に『魔術』同義の『魔法』を使えば魔力蓄積上限は増える。筋トレと一緒。言葉のニュアンス的には『魔法』の方が強力らしい。
また、魔力の扱い方には訓練が必要で、大切なのは想像力。見た目はただのサイキッカーだ。
これがいままでになかった、思考と同調して形を変えるエネルギー魔力だ。
そして、注意しなければならないことがある。
魔力は術者からの命令で簡単に姿を変える性質から、火だったり、風、水、と様々な種類があるが、自然界のそれらと性質が異なる。
よく魔性の火を「魔炎」と言い、周囲のエーテル場というものを歪める性質がある。よって危険。
また魔性の水を「魔水」といい、水自体がエーテル場を歪める性質がある。よって危険。飲んではいけない。
人体のエーテル場を汚染し、具合が悪くなるらしい。
もう「魔」とつけば使用に注意しなければいけない。特に大魔術系統の魔術は周囲にエーテル汚染を引き起こし、不毛地帯にしてしまうらしい。
また、モラルとして、強力な魔術を故意にぶつけ合ってはならない。
文字通り、空間が歪むらしい。あぁ怖い。
「……ってことなんだ、わかったかい?要するに『魔力』が荷物で『エーテル』が乗り物だ!」
「まぁ……」
「一応」
じぁ早速!と言ってスギ博士は表が真っ白なトランプカードを差し出した。
「これは?」
「君たちの魔力、エーテル、もろもろをチェック!してくれる装置さ」
僕とキリカは受け取って、暫く眺めていると、読めない文字が並んだ。
「これでいいんですか?」
「オーケーだよ二人とも!」
嬉しそうにナゾの装置にカードを突っ込み、笑っている。
「よし、解析は完了だ……えぇと、オトメ君は……あんまり魔力量が多くないねぇ。けどエーテル場はしっかりしているね。不安定になることはないんじゃないかな。そして、適正は……『液体硬化』だってさ」
「液体硬化?」
「うん、魔性液体のエーテル場を支配して、魔力による硬化能力をかける魔術だね。学校で習う、個体、液体、気体ってあるけど、液体が個体になるわけじゃないんだ。なんていうんだろうな、液体の分子の結合が強くなるというか……」
「いいです長い話は!つまり、戦場で使えるってことでいいんですよね?」
「そうだね、訓練してみたらどうかな」
「はい!」
僕は新しい戦闘手段に高揚を覚えた。
「キリカ君は……魔力量が多いね、委員でも五本のうちに入るんじゃないかな?でもエーテル場が軟弱かな、強い魔力の制御が効かないから自爆しちゃわないでね。そして、適正は……って、ん?『青の剣閃』って聞いたことがないなぁ。そもそも魔術なのか?」
青い剣閃という言葉に覚えがある。キョウスケがツルバ戦の時に命名したはずだ。
「スギ博士、それはキリカのユニークスキルっていうらしいです」
すると腱膜を変えて、動揺した。
「ユ、ユニークスキル!?他に存在するとは……私のアーカイブにも載ってないぞ!新発見だ!」
「まぁつい最近覚醒したらしいですから……」
とキリカが補足する。
「なるほどなるほど……万物を切断……」
スギ博士はメモを取り始めていた。
「よーくわかった。君たちは素晴らしい、お礼に簡易な魔術を教えよう!」
ということで、炎、水、風、念動力、と色々教えてもらった。
やはり大切なのは想像力らしい。
それだけでいくらでも魔術は作れるみたいだ。スキルのように固定された動きを取れたのなら、実用性が高いかもしれない。
「ありがとうございました!スギ博士!」
「いやいやいいんだよ、私もいい経験だ。仲間にもう一人ユニークスキル持ちがいるとは……」
「一人?誰ですか?」
「ツルギさんの『エーテルステップ』っていう瞬間移動だよ。あれの構造がどうしても解析できなくてねぇ……いやね?少しは分かるんだよ?」
やっぱりツルギさんは化け物だった。
「それとツルギさんには必殺技があるけど、それは戦場で見てきてね、すごいよ!」
「はい……楽しみにします」
この人は本当に魔術が好きなんだな。熱の入った話はいつ聞いても楽しい。
「じゃ、私の簡易授業は終了かな。あっと……オトメ君は残ってくれ」
「は、はい」
するとキリカは、不満そうな心配の目をスギ博士に向けて出て行った。
「じゃあねオトメ君」
「おう」
「……言いたいことが二点ある。とっても大切だ、いいね?」
「はい」
「君のルールメイトにガラス君という少年がいると思う。君はPE持ちだ。彼のフルネームをスキャンしただろう、しかし、絶対に全ての名前を呼んではいけない、わかったね?」
「はい、それはガラスから言うなって言われたから言ってないですけど……」
「ならよかった。彼はね、さっきの話の応用だけど、魔力が強すぎで、エーテル場が軟弱なタイプなんだ。自分でコントロール出来なくて周囲に魔力攻撃を意識とは関係なくしてしまう可哀想な子なんだ。だから名前にロックをかけたんだ。私の研究でね。コードネームとしてガラス君を登録したから彼のフルネームを知っている人は私だけだ。いや、君もか」
「あれが人の名前……なんですか?」
「まさか、私がつけたのだよ!」
サイキッカーと人間につけるか!?
「しょうがなかったのさ、彼は一度死んでいるから、誰も名前なんて知らない。そもそも委員のリストに載ってない外部の人間だ。あれしかなかった……まぁ要するにだ、フルネームを呼ばないでってことで!封印が解けてしまうからね!」
「了解です……それとあともう一つは……?」
「そうだった!オトメ君はスキルカードについて知っているかい?」
「はい、今まで二回使いました」
すると、そのスキルカードを取り出すようにと、マッサラなカードを二枚渡された。
「スキルは魔術とは少し異なる……例えるなら、魔術は流体、スキルはセットだ……」
「ねぇキョウスケ、スキルってカードにして取り出せるの?」
「一旦自身から文字通りに取り出すことは可能です。そのカードがあれば」
「スギ博士、一体何をしたいんですか?」
「よく訊いてくれたね、それはね、スキル合成さ!」
それは好きなスキルを掛け合わせることによって、新たなスキルを生み出そう!がコンセプトの研究らしい。
やれ、と言われたので、適当に出してみる。
「しばらく使ってないゴブリンスラッシュとか……鬼神剣かな……兜割りは……やめよう、どうせ腕が吹き飛ぶ」
僕は二枚、「ゴブリンスラッシュ」「鬼神剣」をカードにする手続きをキョウスケに任せた。
「どうぞ」
「ありがとう!滅多にこのカードは手に入らないから、貴重なスキルになるぞう!……あ、魔力源が無かった」
「魔力源ですか?人間の魔力じゃダメですか?」
「人でもいいんだが、危険だと思う。君は魔石を持っているかな?小さいのでいい」
そういえば魔石(小)を持っていた。早速渡してみる。
「すごい、君は何でも持っているね!実はね、予算の関係で魔石が足りなくて……あぁ魔石ってのは魔力を蓄える……」
と、喋りながら、また怪しい機械にぶち込む。
「これだ……これが見たかったんだ……!!」
「キレイだ……」
二枚のカードは光の粒子を出し合い、一体となっていく。
「まるで……生命活動を見ているようだ!美しい……まさに……雄と雌の……」
「あああああああああああああああああああああ」
スギ博士の言動が怪しかったので、大声で耳をふさいだ。
それでもカードは融合を果たし、スギ博士の手に乗る。
「新作だ。剣、両手剣スキル、名称を──────」
唾をのんで期待する。
「『エリアル・マジック』新しい君の相棒さ」
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●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
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