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鬼ヶ島にて
鬼の大将
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ミズキが去ってしばらくすると、今度は鬼の大将がやってきた。
桃太郎はやって来た鬼を見上げる。人の姿をしていて、頭から角を生やしている。背は高いが、人間離れしている程の大きさでなはい。鬼は桃太郎の前で座り、手にしていた笊をその場に置く。笊の中にはさまざまな果実が入っていた。鬼は笊から一つ桃を取り出して桃太郎に差し出す。桃太郎は動かず、黙って鬼を見つめていた。鬼は動かない桃太郎を見て首を傾げる。
「どうした?桃は嫌いか?」
「・・・」
「ふむ。名前が桃太郎なので、てっきり桃が好きだと思ったが・・・。そうだな。生まれた時に名前を付けられていれば、その名は本人の意思とは関係ないか」
「・・・桃は・・・嫌いでは・・・無い」
桃太郎がゆっくりと答えると、鬼は微笑み、手にした桃の皮を、手で器用に剥き始めた。鬼は目線を手元に落とし、手を動かしたまま話し始めた。
「桃太郎、先ほどは乱暴な事をしてしまったが、私が君を歓迎しているのは本当だ」
「乱暴とは・・・私の口を舐めた事か?」
鬼は驚いた表情で桃太郎を見つめた。
「君を気絶させてしまった事だが? ・・・そうだな、そちらも乱暴だったかな」
鬼は少し笑いながら、皮を剥き終えた桃を、今度は腰から小刀を取り出して小さく切る。そして切った一欠片を、桃太郎の口元へと運んでいった。桃太郎は動かず、じっと鬼を見つめたままだ。鬼はそんな桃太郎を見て微笑んでいる。
「この桃は鬼ヶ島で取れた特別なものだ。少しでも口に入れた方がいい。きっと気分も良くなる」
桃太郎はそれでも動かず、じっと鬼を見つめ続けた。けれど、鬼は微笑みながらも、その目が少しも笑っていない事に気づいた。
桃太郎はその目を見ながら、ゆっくりと小さく口を開く。そして鬼が桃太郎の口の中へと、桃の一欠片を入れた。
桃が口の中に入ると、香りが強く広がった。一口噛むと果汁が溢れる。不思議な事に、噛めば噛むほど、果汁は止まらず口の中に溢れてくる。桃太郎が静かに桃を噛み続けるのを、鬼は優しく見ている。
「君はもう少しここで休憩した方がいい。その後で鬼ヶ島を案内しよう。
鬼ヶ島では、必ず私かミズキの側を離れないように」
桃太郎はようやく桃を飲み込み、鬼に尋ねる。
「ミズキの主人はお前なのか」
「そうだ。気付いているかもしれないが、猿と雉も私の指示で君に近づいたのだ」
「猿と雉も無事なんだな。ならば私が気にする事はない。・・・鬼ヶ島を案内すると言ったが、私が鬼を退治しに来た事は知っているのだろう?」
「知っているよ。けれど君は、私たちになす術なく、先程まで意識を失っていたんだ。とっくに鬼退治は諦めてくれていると思っていたよ。他の鬼達も私ほどではないが力がある。今の君では勝てないよ」
「私は・・・君たちを退治しにこの鬼ヶ島へやってきたのだ。鬼の力に敵わない人間ならば、鬼は歓迎するのか?」
「いや、もちろん君だから歓迎するんだ。鬼退治が目的だったね?そんなに目的を達成させたいのなら、今日から人間の村で暴れる事は止めよう。私たちが村で暴れ回るから、鬼退治しようと思ったのだろう?私から他の鬼にきちんと伝える。私たちが暴れ回らなければ、君の目的は果たされたと言ってもいいだろう」
桃太郎が驚いて鬼を見つめる。
鬼はゆっくりと片手を桃太郎の口へと運んでいき、桃太郎に触れる直前で手を下ろした。
「これで君の目的は果たせるし、後はゆっくりこの鬼ヶ島で過ごしてくれればいい。また後で会いに来るよ」
鬼はそう言って桃太郎に顔を近づけ、そのままゆっくりと口を開く。
「桃太郎、私は“六”と言う。ここでは私の事は“六”と言うように」
そして鬼はゆっくり立ち上がり、動かない桃太郎をその場に残し、洞窟の出口へと向かっていった。
桃太郎はやって来た鬼を見上げる。人の姿をしていて、頭から角を生やしている。背は高いが、人間離れしている程の大きさでなはい。鬼は桃太郎の前で座り、手にしていた笊をその場に置く。笊の中にはさまざまな果実が入っていた。鬼は笊から一つ桃を取り出して桃太郎に差し出す。桃太郎は動かず、黙って鬼を見つめていた。鬼は動かない桃太郎を見て首を傾げる。
「どうした?桃は嫌いか?」
「・・・」
「ふむ。名前が桃太郎なので、てっきり桃が好きだと思ったが・・・。そうだな。生まれた時に名前を付けられていれば、その名は本人の意思とは関係ないか」
「・・・桃は・・・嫌いでは・・・無い」
桃太郎がゆっくりと答えると、鬼は微笑み、手にした桃の皮を、手で器用に剥き始めた。鬼は目線を手元に落とし、手を動かしたまま話し始めた。
「桃太郎、先ほどは乱暴な事をしてしまったが、私が君を歓迎しているのは本当だ」
「乱暴とは・・・私の口を舐めた事か?」
鬼は驚いた表情で桃太郎を見つめた。
「君を気絶させてしまった事だが? ・・・そうだな、そちらも乱暴だったかな」
鬼は少し笑いながら、皮を剥き終えた桃を、今度は腰から小刀を取り出して小さく切る。そして切った一欠片を、桃太郎の口元へと運んでいった。桃太郎は動かず、じっと鬼を見つめたままだ。鬼はそんな桃太郎を見て微笑んでいる。
「この桃は鬼ヶ島で取れた特別なものだ。少しでも口に入れた方がいい。きっと気分も良くなる」
桃太郎はそれでも動かず、じっと鬼を見つめ続けた。けれど、鬼は微笑みながらも、その目が少しも笑っていない事に気づいた。
桃太郎はその目を見ながら、ゆっくりと小さく口を開く。そして鬼が桃太郎の口の中へと、桃の一欠片を入れた。
桃が口の中に入ると、香りが強く広がった。一口噛むと果汁が溢れる。不思議な事に、噛めば噛むほど、果汁は止まらず口の中に溢れてくる。桃太郎が静かに桃を噛み続けるのを、鬼は優しく見ている。
「君はもう少しここで休憩した方がいい。その後で鬼ヶ島を案内しよう。
鬼ヶ島では、必ず私かミズキの側を離れないように」
桃太郎はようやく桃を飲み込み、鬼に尋ねる。
「ミズキの主人はお前なのか」
「そうだ。気付いているかもしれないが、猿と雉も私の指示で君に近づいたのだ」
「猿と雉も無事なんだな。ならば私が気にする事はない。・・・鬼ヶ島を案内すると言ったが、私が鬼を退治しに来た事は知っているのだろう?」
「知っているよ。けれど君は、私たちになす術なく、先程まで意識を失っていたんだ。とっくに鬼退治は諦めてくれていると思っていたよ。他の鬼達も私ほどではないが力がある。今の君では勝てないよ」
「私は・・・君たちを退治しにこの鬼ヶ島へやってきたのだ。鬼の力に敵わない人間ならば、鬼は歓迎するのか?」
「いや、もちろん君だから歓迎するんだ。鬼退治が目的だったね?そんなに目的を達成させたいのなら、今日から人間の村で暴れる事は止めよう。私たちが村で暴れ回るから、鬼退治しようと思ったのだろう?私から他の鬼にきちんと伝える。私たちが暴れ回らなければ、君の目的は果たされたと言ってもいいだろう」
桃太郎が驚いて鬼を見つめる。
鬼はゆっくりと片手を桃太郎の口へと運んでいき、桃太郎に触れる直前で手を下ろした。
「これで君の目的は果たせるし、後はゆっくりこの鬼ヶ島で過ごしてくれればいい。また後で会いに来るよ」
鬼はそう言って桃太郎に顔を近づけ、そのままゆっくりと口を開く。
「桃太郎、私は“六”と言う。ここでは私の事は“六”と言うように」
そして鬼はゆっくり立ち上がり、動かない桃太郎をその場に残し、洞窟の出口へと向かっていった。
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