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運命のアルファを探す俺
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蓮が教室を出て行き、俺は誰もいない教室に残った。
自分の席で勉強を始める。
学校の図書室や地域の図書館でも良いのだが、俺はある時から、放課後は教室で過ごすようになっていた。
こうして教室に残るようになったのは、蓮がきっかけなのは間違いない。
入学して少し経ったある日、俺は放課後、教室に忘れ物を取りに戻っていた。
教室に入ると、真ん中辺りの席に座り、机にうつ伏せている人物が居た。
俺は教室に入ろうか迷ったが、必要なものを取りに来ていたので静かに教室に入り、忍足で自分の席に近づいた。
そして椅子の背に手をかけ、ゆっくりと後ろへ引いた。
静かに椅子を引いたつもりだが、椅子と床が擦れる音が鳴ってしまった。
普段からこんなに大きな音が鳴っていたのかと驚くほど、教室に音が響いた。
恐る恐るうつ伏せている人物の方へ目を向けたが、彼は全く反応していない。
俺は机の中から忘れ物を取り出し、今度は椅子を軽く浮かせて音を鳴らさずに元に戻す。
そしてそのまま静かに教室を出ようとしたが、少し様子が気になり、静かに近づいていった。
うつ伏せている人物を見下ろしながら、恐る恐る話しかける。
「おい・・・大丈夫か? もう放課後だぞ? どこか調子悪いのか?」
俺が声をかけると、その人物は「ううっ」っと唸り、体が少し動く。
「おい・・・本当に大丈夫か?」
「・・・大丈夫です。先生・・・先ほど薬は飲みました。もう少ししたら体調も良くなるはずです。
俺、いつもヒートの前はこうやって体調が悪くなるので・・・でもいつもの事なので本当に大丈夫です」
「・・・」
うつ伏せている人物は、俺の事を先生だと思っているようだ。
そしてこいつは今ヒートと言った・・・オメガなんだと分かってしまった。
俺は今までオメガに出会った事がなかった。今の返答だと、おそらく大丈夫なのだと思うのだが、動揺してしまっている。
俺が何も言わず固まっていると、うつ伏せている人物がゆっくりと起き上がった。
そして顔を上げ、俺と目が合った。
クラスの奴なのは間違いないけれど、まだ話した事のないやつだ。確か名前は…。
「須田・・・君、えっと、あの・・・」
言葉が続かない。
俺を見て須田君は驚き、そしてバツ悪そうな顔をした。
俺がオメガだと言うことを聞いてしまったからに違いない。
何て言えば良いのか分からない俺に、須田君の方から話しかけてきた。
「何だ、安井君だったのか。俺てっきり先生かと・・・勘違いしてお恥ずかしい」
そう言って笑っている。どうやらバツ悪そうな顔をしたのは、俺を先生と勘違いして恥ずかしかったからのようだ。
俺は須田君の笑顔を見て少しホッとしていた。思っていた以上に、俺は緊張していたみたいだ。
「えっと・・・ごめん、体調が悪いのかと思って・・・実際良くないんだよな?」
「あ・・・うん。俺オメガで、ちょっと体調悪くなる時期があるんだよね。でももう落ち着いてきたから。
心配してくれてありがとう。安井君はどうしてここに?」
「えっと・・・忘れ物を取りに・・・そしたら須田君がいて」
「そっか。先生にも保健室使っていいって言われたんだけれど、なんか保健室って苦手なんだよね」
そう言って起き上がった須田君は両手を上げて伸びをした。
どうやら本当に体調は良くなってきているようだ。
「ようやく薬が効いてきたかも。いや~苦労しますわ。ま、仕方ないんだけれどね」
そう言って須田君は立ち上がりカバンを手に持つ。
「安井君、心配してくれてありがとう。せっかくだし、一緒に帰る?」
「う・・・ん」
俺は思わず答えてしまい、そしてそのまま一緒に学校を出た。
俺は須田君から、オメガである事を隠して欲しいと言われるのではないかと思っていたのだが、全く話題に上がらない。
須田君は俺と別れるまで、中学はどこだったとか、部活は決めたのかとか、普通の会話をしているだけだった。
そして別れ際に、俺の方が我慢出来ずに須田君へ声をかける。
「あのさ、今日の事、誰にも言わないから・・・」
俺が気まずそうにしているのと対照的に、須田君はポカンとしていた。
そしてしばらくしてから、笑って答えた。
「えっと、俺がオメガって事?別に隠してる訳じゃ無いし気にしなくて良いよ。
それよりさ、さっき言っていたゲームの事なんだけど、また明日話聞かせてくれる?」
「いい・・・けど」
やった、と須田君は言い、じゃあまた明日と言って須田君はさっさと帰って行った。
俺は須田君の背中を見ながら、しばらくその場で立ち止まり、そして家へと帰っていった。
そして次の日から、俺は蓮と一緒に過ごすようになっていた。
俺は今までベータとして生きてきて、アルファやオメガは、どこか別世界の人のような気がしていた。
けれど蓮と話すようになり、オメガも1人の人間なのだと思うようになった。
そして、きっとそれはアルファもベータも同じなんだ。
その事に気づき、それからの俺は、自分の気持ちに言い訳せず、向かい合うと決めた。
蓮と知り合ってからしばらく経ったある日、蓮が俺に尋ねてきた。
「亮、今日も学校に残るのか?」
「そのつもり」
「最近になってだよな?何かあったのか?」
「学校で勉強してる」
「うわ・・・マジか・・・どこで勉強してる?」
「図書室だな」
「図書室入ったことない。静かにしないといけない空間って、息が苦しくなってくる」
「まあ図書室もそんなに遅い時間まで空いてないんだけどな」
「他の場所では勉強しないのか?」
「出来れば学校が・・・集中出来るし・・・本当はもう少し学校で時間を潰したいんだけれど・・・」
「時間を潰したい?バイトは?」
「俺の家、高校の間はバイト駄目なんだ。だからあんまりお金がかかる場所も行きたくなくて・・・」
いきなり蓮から学校に残っているのを指摘されて、上手く答えられない。
思わず時間を潰したいと言ってしまったが、これ以上聞かれると答えようがない。
蓮は不思議そうな様子で俺を見ていたが、急に閃いた顔をして話し出した。
「亮、俺も今日から一緒に残るわ!そして教室で残ろう!」
「!? いやいや、放課後教室に残っていたら、先生に何か言われるだろ」
「そこはほら、俺が先生に上手く話すからさ」
どう上手く話すのかは分からないが、俺は蓮と初めて話した日、蓮が教室で1人机にうつ伏せている姿を思い出した。
きっと学校側は、蓮がオメガである事を分かっている。蓮は学校に残ることを許されているのだろうか?
正直、図書室が閉まる時間以降も学校に残れるのはありがたい。勉強する目的もあるが、俺はいつも、ある時間に合わせて帰るようにしていたからだ。
蓮はこれ以上俺に尋ねて来る様子はない。
蓮に対して隠している訳じゃない、蓮にならいつか言える気がする。けれど、今はこの距離が助かる。
「じゃあ、教室で残ろうかな・・・」
「おう!特にやる事ないけどな!」
「俺、勉強するから」
「・・・勉強してるの、冗談じゃなったのか」
蓮が思いっきりひいていた。
そして今度は俺が、蓮とは対照的に笑っていた。
自分の席で勉強を始める。
学校の図書室や地域の図書館でも良いのだが、俺はある時から、放課後は教室で過ごすようになっていた。
こうして教室に残るようになったのは、蓮がきっかけなのは間違いない。
入学して少し経ったある日、俺は放課後、教室に忘れ物を取りに戻っていた。
教室に入ると、真ん中辺りの席に座り、机にうつ伏せている人物が居た。
俺は教室に入ろうか迷ったが、必要なものを取りに来ていたので静かに教室に入り、忍足で自分の席に近づいた。
そして椅子の背に手をかけ、ゆっくりと後ろへ引いた。
静かに椅子を引いたつもりだが、椅子と床が擦れる音が鳴ってしまった。
普段からこんなに大きな音が鳴っていたのかと驚くほど、教室に音が響いた。
恐る恐るうつ伏せている人物の方へ目を向けたが、彼は全く反応していない。
俺は机の中から忘れ物を取り出し、今度は椅子を軽く浮かせて音を鳴らさずに元に戻す。
そしてそのまま静かに教室を出ようとしたが、少し様子が気になり、静かに近づいていった。
うつ伏せている人物を見下ろしながら、恐る恐る話しかける。
「おい・・・大丈夫か? もう放課後だぞ? どこか調子悪いのか?」
俺が声をかけると、その人物は「ううっ」っと唸り、体が少し動く。
「おい・・・本当に大丈夫か?」
「・・・大丈夫です。先生・・・先ほど薬は飲みました。もう少ししたら体調も良くなるはずです。
俺、いつもヒートの前はこうやって体調が悪くなるので・・・でもいつもの事なので本当に大丈夫です」
「・・・」
うつ伏せている人物は、俺の事を先生だと思っているようだ。
そしてこいつは今ヒートと言った・・・オメガなんだと分かってしまった。
俺は今までオメガに出会った事がなかった。今の返答だと、おそらく大丈夫なのだと思うのだが、動揺してしまっている。
俺が何も言わず固まっていると、うつ伏せている人物がゆっくりと起き上がった。
そして顔を上げ、俺と目が合った。
クラスの奴なのは間違いないけれど、まだ話した事のないやつだ。確か名前は…。
「須田・・・君、えっと、あの・・・」
言葉が続かない。
俺を見て須田君は驚き、そしてバツ悪そうな顔をした。
俺がオメガだと言うことを聞いてしまったからに違いない。
何て言えば良いのか分からない俺に、須田君の方から話しかけてきた。
「何だ、安井君だったのか。俺てっきり先生かと・・・勘違いしてお恥ずかしい」
そう言って笑っている。どうやらバツ悪そうな顔をしたのは、俺を先生と勘違いして恥ずかしかったからのようだ。
俺は須田君の笑顔を見て少しホッとしていた。思っていた以上に、俺は緊張していたみたいだ。
「えっと・・・ごめん、体調が悪いのかと思って・・・実際良くないんだよな?」
「あ・・・うん。俺オメガで、ちょっと体調悪くなる時期があるんだよね。でももう落ち着いてきたから。
心配してくれてありがとう。安井君はどうしてここに?」
「えっと・・・忘れ物を取りに・・・そしたら須田君がいて」
「そっか。先生にも保健室使っていいって言われたんだけれど、なんか保健室って苦手なんだよね」
そう言って起き上がった須田君は両手を上げて伸びをした。
どうやら本当に体調は良くなってきているようだ。
「ようやく薬が効いてきたかも。いや~苦労しますわ。ま、仕方ないんだけれどね」
そう言って須田君は立ち上がりカバンを手に持つ。
「安井君、心配してくれてありがとう。せっかくだし、一緒に帰る?」
「う・・・ん」
俺は思わず答えてしまい、そしてそのまま一緒に学校を出た。
俺は須田君から、オメガである事を隠して欲しいと言われるのではないかと思っていたのだが、全く話題に上がらない。
須田君は俺と別れるまで、中学はどこだったとか、部活は決めたのかとか、普通の会話をしているだけだった。
そして別れ際に、俺の方が我慢出来ずに須田君へ声をかける。
「あのさ、今日の事、誰にも言わないから・・・」
俺が気まずそうにしているのと対照的に、須田君はポカンとしていた。
そしてしばらくしてから、笑って答えた。
「えっと、俺がオメガって事?別に隠してる訳じゃ無いし気にしなくて良いよ。
それよりさ、さっき言っていたゲームの事なんだけど、また明日話聞かせてくれる?」
「いい・・・けど」
やった、と須田君は言い、じゃあまた明日と言って須田君はさっさと帰って行った。
俺は須田君の背中を見ながら、しばらくその場で立ち止まり、そして家へと帰っていった。
そして次の日から、俺は蓮と一緒に過ごすようになっていた。
俺は今までベータとして生きてきて、アルファやオメガは、どこか別世界の人のような気がしていた。
けれど蓮と話すようになり、オメガも1人の人間なのだと思うようになった。
そして、きっとそれはアルファもベータも同じなんだ。
その事に気づき、それからの俺は、自分の気持ちに言い訳せず、向かい合うと決めた。
蓮と知り合ってからしばらく経ったある日、蓮が俺に尋ねてきた。
「亮、今日も学校に残るのか?」
「そのつもり」
「最近になってだよな?何かあったのか?」
「学校で勉強してる」
「うわ・・・マジか・・・どこで勉強してる?」
「図書室だな」
「図書室入ったことない。静かにしないといけない空間って、息が苦しくなってくる」
「まあ図書室もそんなに遅い時間まで空いてないんだけどな」
「他の場所では勉強しないのか?」
「出来れば学校が・・・集中出来るし・・・本当はもう少し学校で時間を潰したいんだけれど・・・」
「時間を潰したい?バイトは?」
「俺の家、高校の間はバイト駄目なんだ。だからあんまりお金がかかる場所も行きたくなくて・・・」
いきなり蓮から学校に残っているのを指摘されて、上手く答えられない。
思わず時間を潰したいと言ってしまったが、これ以上聞かれると答えようがない。
蓮は不思議そうな様子で俺を見ていたが、急に閃いた顔をして話し出した。
「亮、俺も今日から一緒に残るわ!そして教室で残ろう!」
「!? いやいや、放課後教室に残っていたら、先生に何か言われるだろ」
「そこはほら、俺が先生に上手く話すからさ」
どう上手く話すのかは分からないが、俺は蓮と初めて話した日、蓮が教室で1人机にうつ伏せている姿を思い出した。
きっと学校側は、蓮がオメガである事を分かっている。蓮は学校に残ることを許されているのだろうか?
正直、図書室が閉まる時間以降も学校に残れるのはありがたい。勉強する目的もあるが、俺はいつも、ある時間に合わせて帰るようにしていたからだ。
蓮はこれ以上俺に尋ねて来る様子はない。
蓮に対して隠している訳じゃない、蓮にならいつか言える気がする。けれど、今はこの距離が助かる。
「じゃあ、教室で残ろうかな・・・」
「おう!特にやる事ないけどな!」
「俺、勉強するから」
「・・・勉強してるの、冗談じゃなったのか」
蓮が思いっきりひいていた。
そして今度は俺が、蓮とは対照的に笑っていた。
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