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新天地篇

カトゥルカでの滞在

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港町に着いたのは昼過ぎのことだった、交易の要である街は活気に溢れて中央通りは人でごった返している。

「なるべく人混みを避けよう、グルドは懐からでるなよ。踏みつぶされちゃう」
「りょ、了解なのである」


一本通りを違えば急に閑散としていて驚く、分散して歩けば良いのに。
「ふむ、一見治安が悪いようにみえませんが、でも路地裏は気をつけましょう。」
マホガニーが周辺を警戒する、ボクも根を広げて土地柄を把握する。

「なるほど、北側は要注意だ。ガラの悪そうなのが屯してるぞ」
「そちらは貧民街のようですね、地図に書いておきます」


初めての町を見分して歩くボクらは、ワザとぶつかってくる輩を避けては簀巻きにした。
スリという連中だろう、油断ならないものだ。

大方は裏通りから突然出てきてぶつかるので分かり易い。
「治安悪いなー豊かな国じゃないの?」
「恐らく他領から流れた貧民が集るのでしょう、この道が閑散してた理由がわかりましたね」

「でも、人が多いほうがスリが多そうですけど?」
エリマがもっともな意見をする。

「つまりどこ歩いても悪事が横行してるってことっす?」
アクティがふんぬと力瘤を作ってボクを抱き上げた、誘拐されたら困ると言った。

攫われたところですぐ逃げる自信あるけど?
「アクティ、ボクより女子を護れよ」

うちにか弱い女子はいないっすと反論され口を噤んだ。
たしかに……。

ちらりとラミンたちをみれば良い笑顔で返された、なんかごめん。
そんな瞬間も荒くれ者に絡まれたエリマが豪快に殴りとばしていた。

まだ陽は高いけれど宿屋を探すことにした、これほど人の過密さであれば空きがなくなるのではと思ったから。
海沿いの通りを目指してみれば良い感じの宿がいくつかあった。


海風亭という宿屋が綺麗だったので尋ねてみた。
外観は青と白に塗られていて、青い海原を模したような宿屋だった。

「6名様ですね、3人部屋と大部屋がございますがどうしますか?」
「3人部屋を二つでお願いします、夕食はとれますか?」

「はい、おひとり様食事つきで一泊銀貨1枚と銅貨5枚です」
なかなか高い……、渋るわけもいかず執事に払うよう命じた。


部屋へ案内されてすぐに薬屋開業にすべきか相談を始める。
ちなみに男子用の部屋へ女子を招いている。

「人間のメイペルに意見を聞きたい、一般にはどのような薬がでまわってるんだ?」
「えーとそうですね、傷薬と解熱剤、胃腸薬が主流です。用途によって使いわけてます。ドリュアス様が作るような万能薬はありませんね」

そっか根本から違うんだな。
ボクらの薬は欠損した手足さえ生えてしまうから。

「となれば今朝のような輩に目を付けられない様に気をつけないと」
「転売目的の悪徳商人ですね」
マホガニーが渋い顔になって言う、今朝メイペルに絡んできた商人については全員思う所があった。

メイペルが言うには希釈した割合は1:1らしい。
スプーン一杯で全快してしまったらしいので、もっと薄めないとだめだろう。

「一滴でも傷が治っちゃうんだな、下僕達をボコった時に検討しとば良かったな」
「え!」

それを聞いたメイペルが青くなって震えた。ごめんキミのこともボコってたね。
今更だが謝ったボクに「あの時は私がいきなり喧嘩腰で侮辱発言もしました、仕方ないです」と笑ってくれた。

なかなかの居丈高ぶりだった初見のメイペルとはかなり性格が違う。
本来素直な子だったのかな?

人間に対して嫌悪を抱いていたボクには新鮮な相手だ。
もっと彼女を知りたいとこの時思った。


「開店にあたって店舗ってのを借りるのと露店で売るのはどっちが良いかな?」
これには皆が閉口した、なにしろ経験者がいない。
協会運営に携わってたメイペルも商売となれば知識がない。

「薬の相場は知ってますが、店舗で商いはさすがにわからないです」
「そっか、リスクを考えれば露店かな」
「はい、ですが人通りが多いところは場所代が要求されますよ」

うげ、そんな事もあるのか。
躊躇したボクに薬を買い取ってもらう方法にしようとメイペルの助言がでた。
「なるほど!薬屋に卸すのか!」
「はい、信用を得るまでは大変とは思いますが効果を知っていただければ売れるはずです」

「はいはい!ラミンにもアイディアがありまーす。ドリュアス様の果物は売れませんか?」
ほう、確かに捥ぎたて新鮮な果物は無尽蔵に生み出せるぞ。

収獲できない冬場は重宝されるだろう。
「ラミンの意見採用!」
「やった!お役にたてました!」


こうしてボクらの海街での暮らしの第一歩が始まった。



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