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新天地篇
港町カトゥルカをめざす
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城砦を後にしたボクらは馬車でノンビリ次の目的地を会議していた。
「どうせアテがないなら港町がいいっす!町も大きいし楽しいはずっす!」
アクティのゴリゴリ押しに負けたボクら一行は、最南端のカトゥルカを目指すことになった。
正直、海産物を食べたことが無いボクはどうでも良かった。
カリュアスは海から遠いので加工食品でしか魚介を見たことが無いし、味は総じて塩辛くて美味いとは言い難かったから期待してない。
「新鮮なものは違うかもしれないですよぉ?」
ラミンがボクに絡んで、美味しい魚介が食べらる店を探そうとお強請りをする。
わかったから取り合えず落ち着け!
「まったくもう……見た目は大人なのに中身が子供すぎるぞ」
ブチブチいうボクにエリマがまぁまぁと宥める。
「坊ちゃんには悪いですが、私も漁港とやらに興味があるんです。大きな船とやらが見たいです」
珍しくテンションの高いエリマにボクは吃驚だ。
「川船となにが違うの?」
「えっと……大海原を渡る船は城ほど大きいと書物で見ました」
え、そんなに巨大なのか。
そんな重そうなものが水の上に浮かぶのか……人間はすごい物を造るんだな、急に興味が湧いてきたぞ。
港町が良いとこならそこで薬屋を開くのも悪くないなとボクは思う。
ただし長居はしないけどね。
それからいくつかの農村を通り、小さな町に泊まりながら移動をした。
灯りの魔道具や捻るだけで水が出る宿屋に驚いた、メイペルによれば全部ナザルの模造品らしい。
「すぐ真似されてしまうんですよね、開発は大変だったのに」
宿泊した民宿でメイペルが愚痴る。
サウスバーグに入国してからボクらとメイペルの距離はだいぶ縮んでいた。
人間不信になっていたドリアード族にしては大きな変化だ。
いつのまにか食卓まで共にするようになり、メイド達とはタメ口になっていたほどだ。
地図をみていたアクティが後一つ街を過ぎればカトゥルカだとはしゃいだ。
その一歩手前の宿で英気を養い明日に備えることにした。
食事は急に魚介類が増えた、ここに着くまで干物のスープくらいしか出されたなかったので驚く。
「この辺りなら新鮮なまま手に入るんですよ」
宿の女将が給仕しながら説明してくれた。
ボクは焼きホタテというのを好きになった、ぜんぜん塩辛くない。
「魚介って美味しかったんだなー」
「ですね!烏賊ってしょっぱいのかと思ってました」
みんな満足そうに海の幸を堪能している、旅して良かったと初めて思った。
賑やかな晩餐を済ませそれぞれ部屋で休もうと解散した時だ、宿屋の店員がバタバタと二階の宿泊スペースから下りてきた。
客が病気で苦しんでると騒いでいる、こんな時間だ薬店も医者も休んでいるだろう。
「困ったね……、熱があるようだけど氷で冷やすくらいしかできないよ」
女将が困惑して対処に動いていた。
「あ、あのドリュアス様……この薬をわけてもいいでしょうか?」
メイペルがおずおずと懐から以前渡した小瓶を取り出す。
「……キミがやりたいなら止めないよ?ただし効果が強すぎるから希釈して飲ませて」
「はい!ありがとうございます」
パタパタと彼女は女将のもとへ駆けて行く。
「ふーん、ナザルで会ったころとキャラ変わってない?」
「あ、ラミンも思いました!あんなに偉そうだったのに!」
だよなぁ、協会で部下をこき使っていたであろう頃とだいぶ違う。
いまの彼女の様子が素なのかもしれない。
「配下が自分より年上だったでしょうから勘違いして増長してたのでは?」
マホガニーが冷静に分析してる。
「そんなもんかぁ?……ボクも気を付けるよ、マホガニーは遠慮なく諌言してくれるよね?」
「はい、もちろんです。遠慮しません」
そんな騒ぎ後の翌日。朝ご飯を囲んでいると、薬を飲んだ客がメイペルに御礼言いにやってきた。
「アタナは恩人です!高熱で意識がなかったのにたった一口で全快するなんて!」
「そ、そうですか。お役に立てて良かった」
彼女の手を取りブンブンと振る男にやや引いているメイペル。
「是非お礼を……そーだ!結婚してあげます!」
「はぁ!?」
やり取りを傍で見ていたボクらも吃驚して男をみつめた。
なーんか嫌な予感。
「あれほどの効果を齎す薬をお持ちなんだ!商人の俺と結婚すべきですよ!そしてその薬は人の命を救う万能薬として世にまわるべきなんです!これは救済ですよ!世界が俺達を待ってます!」
わぁ……。
人助けみたいな建前言ってるけど儲けたいだけだろ。
「お断りします、あれは私が作ったわけじゃないもの」
「そんな!それならどこで手に入れたかだけでも!」
メイペル!喋るなよ!頼む!
「……旅商人から分けて貰ったので詳細はわかりかねます」
それを聞いた商人の男はガクリと膝をついて「なんだよ、ぬか喜びさせやがって!」と悪態をついた。
はぁ、やっぱり人間嫌いかも……。
「どうせアテがないなら港町がいいっす!町も大きいし楽しいはずっす!」
アクティのゴリゴリ押しに負けたボクら一行は、最南端のカトゥルカを目指すことになった。
正直、海産物を食べたことが無いボクはどうでも良かった。
カリュアスは海から遠いので加工食品でしか魚介を見たことが無いし、味は総じて塩辛くて美味いとは言い難かったから期待してない。
「新鮮なものは違うかもしれないですよぉ?」
ラミンがボクに絡んで、美味しい魚介が食べらる店を探そうとお強請りをする。
わかったから取り合えず落ち着け!
「まったくもう……見た目は大人なのに中身が子供すぎるぞ」
ブチブチいうボクにエリマがまぁまぁと宥める。
「坊ちゃんには悪いですが、私も漁港とやらに興味があるんです。大きな船とやらが見たいです」
珍しくテンションの高いエリマにボクは吃驚だ。
「川船となにが違うの?」
「えっと……大海原を渡る船は城ほど大きいと書物で見ました」
え、そんなに巨大なのか。
そんな重そうなものが水の上に浮かぶのか……人間はすごい物を造るんだな、急に興味が湧いてきたぞ。
港町が良いとこならそこで薬屋を開くのも悪くないなとボクは思う。
ただし長居はしないけどね。
それからいくつかの農村を通り、小さな町に泊まりながら移動をした。
灯りの魔道具や捻るだけで水が出る宿屋に驚いた、メイペルによれば全部ナザルの模造品らしい。
「すぐ真似されてしまうんですよね、開発は大変だったのに」
宿泊した民宿でメイペルが愚痴る。
サウスバーグに入国してからボクらとメイペルの距離はだいぶ縮んでいた。
人間不信になっていたドリアード族にしては大きな変化だ。
いつのまにか食卓まで共にするようになり、メイド達とはタメ口になっていたほどだ。
地図をみていたアクティが後一つ街を過ぎればカトゥルカだとはしゃいだ。
その一歩手前の宿で英気を養い明日に備えることにした。
食事は急に魚介類が増えた、ここに着くまで干物のスープくらいしか出されたなかったので驚く。
「この辺りなら新鮮なまま手に入るんですよ」
宿の女将が給仕しながら説明してくれた。
ボクは焼きホタテというのを好きになった、ぜんぜん塩辛くない。
「魚介って美味しかったんだなー」
「ですね!烏賊ってしょっぱいのかと思ってました」
みんな満足そうに海の幸を堪能している、旅して良かったと初めて思った。
賑やかな晩餐を済ませそれぞれ部屋で休もうと解散した時だ、宿屋の店員がバタバタと二階の宿泊スペースから下りてきた。
客が病気で苦しんでると騒いでいる、こんな時間だ薬店も医者も休んでいるだろう。
「困ったね……、熱があるようだけど氷で冷やすくらいしかできないよ」
女将が困惑して対処に動いていた。
「あ、あのドリュアス様……この薬をわけてもいいでしょうか?」
メイペルがおずおずと懐から以前渡した小瓶を取り出す。
「……キミがやりたいなら止めないよ?ただし効果が強すぎるから希釈して飲ませて」
「はい!ありがとうございます」
パタパタと彼女は女将のもとへ駆けて行く。
「ふーん、ナザルで会ったころとキャラ変わってない?」
「あ、ラミンも思いました!あんなに偉そうだったのに!」
だよなぁ、協会で部下をこき使っていたであろう頃とだいぶ違う。
いまの彼女の様子が素なのかもしれない。
「配下が自分より年上だったでしょうから勘違いして増長してたのでは?」
マホガニーが冷静に分析してる。
「そんなもんかぁ?……ボクも気を付けるよ、マホガニーは遠慮なく諌言してくれるよね?」
「はい、もちろんです。遠慮しません」
そんな騒ぎ後の翌日。朝ご飯を囲んでいると、薬を飲んだ客がメイペルに御礼言いにやってきた。
「アタナは恩人です!高熱で意識がなかったのにたった一口で全快するなんて!」
「そ、そうですか。お役に立てて良かった」
彼女の手を取りブンブンと振る男にやや引いているメイペル。
「是非お礼を……そーだ!結婚してあげます!」
「はぁ!?」
やり取りを傍で見ていたボクらも吃驚して男をみつめた。
なーんか嫌な予感。
「あれほどの効果を齎す薬をお持ちなんだ!商人の俺と結婚すべきですよ!そしてその薬は人の命を救う万能薬として世にまわるべきなんです!これは救済ですよ!世界が俺達を待ってます!」
わぁ……。
人助けみたいな建前言ってるけど儲けたいだけだろ。
「お断りします、あれは私が作ったわけじゃないもの」
「そんな!それならどこで手に入れたかだけでも!」
メイペル!喋るなよ!頼む!
「……旅商人から分けて貰ったので詳細はわかりかねます」
それを聞いた商人の男はガクリと膝をついて「なんだよ、ぬか喜びさせやがって!」と悪態をついた。
はぁ、やっぱり人間嫌いかも……。
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