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新天地篇

街道にて 付きまとう少女

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世界地図を広げテンションが上がりっぱなしのアクティは、青く塗り潰された広範囲な箇所が海だと知り早くサウスバーグに行きたいと何度も言う。

サウスバーグは知識でしか知らない所だ、西側は山、南は海に囲まれた穏やかな気候で豊かな国である。
湾岸には、山からのびた河川より運ばれるミネラルで、貝類が美味しく育つという。
ボクも詳しいわけじゃないけど。

「誰が教えたの?」
「はーい、私ですぅ」
ラミンが楽しそうに声をあげた、なるほど……なんとなくそんな気はしてた。
エリマとマホガニーは浮かれがちな3人の様子にハラハラしている、なんかゴメン。


人目を避けて移動すること1時間、鉱山跡地へ着いたボクらはグルドのクロノスバッグから馬車を出した。
グルドはといえば相変わらず調子悪そうにしていて、役が終えるとまたポケットに隠れてしまった。


ここから南へまっすぐ伸びた街道を行けばサウスバーグである。
地図上ではすぐ到着しそうな感覚だが実際は違うだろうな。

道沿いの山はゴツゴツした岩ばかりで道も整備されていない、ガタガタ揺れる馬車は快適とは言い難い。
尻に敷いた特製クッションがあってもかなりきつい旅になるだろう。


正直転移したいところだが、やはり結界がやたら張られていてままならない、腐っても魔法で発達した国だ。
内外に通ずる街道は特に警戒区域なのだ、根をちょっとのばせば鈍い痛みや気持ち悪い感覚に襲わた。

「やれやれ、こまめに休憩したほうがよさそうだね」
痛む腰と尻を撫でながら初めて旅路の愚痴を吐いてしまった。マホガニーが抱っこすると手を差し伸べてきたがお断りだ。

「ちっ」と舌打ちが聞こえたが知らないふりをしてやるよ。



街道を走り数時間後、休憩を兼ねて適当な岩陰で食事を摂ることにした。
「ラミン特製レタススープとクロワッサンサンドですよぉ♪クロノスバッグのおかげですねぇ」

いつ仕込んだのか定かではないがアツアツのレタススープは卵がとじてあり、クロワッサンはサクサクの食感が残ったままでとても美味しかった。

「グルドのバッグは便利すぎるね」
少し遅いランチに舌鼓を打つボクの肩で、グルドは黙って胡桃を食んでいる。
食欲は旺盛のようで安心した、なにか心配ごとがあるようだが聞きだすのも野暮な気がして彼が吐露するのを待つことにした。

食後、惰眠を貪ることにしたボクは従者たちに警備を任せて寝息をたてる。
申し訳ないが王のボクの不調は株分けした彼らに影響が出るので仕方ない、ボクが元気なら彼等も健やかなのだ。


寝入って30分ほどだろうか、エリマの怒鳴り声で目を覚ました。
「……いったいどうしたの?」目をこすり事態を把握しようと頭をふる。

「不届き者を捕まえました」
エリマが険悪なオーラを醸し出して、グルグル巻きにされたソレをボクの目の前に転がした。

「おや、協会にいたお嬢さんじゃないか。職務放棄かい?」
ボクの方を悔し気に睨むのは魔導士協会で会った副会長の少女だった。


「不穏分子を排除にきただけよ!無礼者!縄を解きなさいよ、なによこれヌルヌルで気持ち悪いわ」
「媚薬液だよ、高揚感と痛みを和らげる効果があるんだけどね。それで何用かな」


面倒そうにボクが言えば少女は信じられないことを宣った。
「この大魔導士メイペル様が仲間になってやるわ!本来なら極刑をもって懲らしめるとこですけどね!温情に感謝しなさいよ!」

え、なにを言ってんのか理解できない。

「ふむ、自分の立場理解してないようだ。エリマ、虫の息程度にオモテナシしてあげて」
「御意」

待ってましたとばかりにエリマがサックを装着して良い笑顔をした。
10分後、見事にボコられた自称大魔導士は原型を忘れるような腫れあがった顔で伸びた。

「ふぇぇぇ酷い……顔が熱くて痛い、歯が折れたわ。うぅ、アンタらいたいけな少女に慈悲はないわけ?」
ボコられても尚、偉そうな態度が変わらない少女の根性にちょっと尊敬する。

「へぇ、これだけ痛めても懲りないとは凄いなキミ。だけどね人間の仲間は求めてない、大嫌いなんでね」
嫌悪に満ちたボクの表情と拒否の言葉を聞いて少女は目を見開く。

「な、なんでよ!というか同じ人間でしょ意味わかんない!」
「薄汚いお前とボクらが同じ?バカにするな」

背と掌から蔦を出して威嚇するボクに少女は「化物!」と罵る。

「ボクは精霊ドリアードの王、ドリュアスだ。聞いたことはないかい?」
「せ、精霊ドリアード……あんたがカリュアスを発展させた!?嘘でしょう、どう見ても魔物じゃない!」

寄りによって魔物扱いをされたボクの緑の目は怒りに染まり、幾度となく少女を攻撃していた。
血反吐に塗れた少女は虫の息だ。

我に返ったボクは回復薬をかけてやった。助ける価値はほとんどないけど仕方ない。
「精霊をコケにした人間の末路を知ってる?」

そう問えば先ほどの勢いはなりを潜め、怯えた顔でコクコクと頷く少女メイペル。
「お、お願いします、あの国はもう崩壊してるわ。どうか仲間にしてください!生き地獄を見るくらいなら旅路の果てで死にたいの!自由に生きて死ぬなら本望なの!」

だったら一人旅で良くないか?ボクの頭に台詞が過ったが言葉にしなかった。


回復薬を全身に浴びて咳き込みながら言い募るメイペル、なんて面倒な生き物か。
「はぁ、百歩譲って連れて行くとしても奴隷以下の扱いになるよ、それでも?」

残酷な宣告を投げてもメイペルは着いて行きたいと宣う。
「……足手纏いになるならすぐに捨て置くし、助けない。さっき振りかけた薬が最後の慈悲だぞ」
ボクはそう言って少女から視線を外す。


それから馬車に乗り込んだボクらは南への旅を再開した。
ちなみにメイペルは馬車に乗せてない、ボクらの追跡に使ったという移動魔道具を駆使して着いてくる。
人間の知恵の産物とは存外凄い。

「なぜ情けを掛けたのですか?いっそ一思いに死を与えれば簡単でしょう」マホガニーが諌言してきた。
「気まぐれかな……途中で死のうがどうでもいい」

冷たい物言いのボクに、なぜかマホガニーは嬉しそうに笑った。



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