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新天地篇

エリマの寝ず番

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賑やかなキャンプ生活を送る旅は楽しい、馬車移動は体がゴワゴワになるがそれも一興。
バナナ葉で蒸し焼きにしたパンの実は美味しかった、パンもどきのネッチリした味ではなく本当に「パン」なのはドリアード特有の実だ。

「ご先祖の探求心に感謝だね、品種改良というより魔法だけど」
「魔法の実ってことっすね!面白いっす、主は凄い手を持っているっすね」
大柄なアクティはガツガツと勢いよく頬張っていた、お気に召したようで良かった。

食物を手から生みだせるのはドリアード王の力を受け継いだボクだけ、粘液(薬)を出せるのは株分けした彼等も使える。ただし、主の許可なくは出せない。
むやみにオモテナシされたら困るからね。

媚薬を作るのが得意なのは例のアレで実証済み。
執事もメイド達も基本は主を護るのが役目なので、敵を排除するための危ない薬が作れる。
ちなみに昏倒薬は覚えてなかったので屋敷襲撃後に教えた。

アレは便利だよ、敵を無効化できるもの。うんうん。
だが、万能じゃない。

新しく仲間入りしたアクティは戦闘特化なので身体強化薬などが得意。
そういう風にボクが株分けしたからね。


食事が終われば後は就寝、真っ暗な中ではロクなこと出来ない。
闖入者を待つっていう理由もあるけど。

今夜の寝ず番はエリマなので眠気防止薬を渡す。
「ありがとうございます、坊ちゃんの薬は良く効きますから10日貫徹もいけます!」
「……いや、明日は寝なさいよ。頑丈なのは知ってるけど」

見た目に反して剛腕な彼女。
恐らくアクティとタイマンをはれるのは、仲間内でエリマだけじゃないかな。
「それじゃ初動オモテナシをよろしく、警笛は鳴らすんだよ?」
「……御意」

舌打ちが聞こえたけど、全部ひとりで片づける気だった?
半殺し程度にしてよね!

***
(エリマ視点)

「ふんふん、坊ちゃんを護るのは私ひとりでいけますのに!」
眠気防止薬をグイ飲みした私は力瘤をムフンと作る。うん、良い感じ絶好調でございます♡
軽くスクワットを1,000回10セットなどで暇を潰しました。

みんなが寝静まってから5時間ほどでしょうか、不穏な気配を感じました。
焚火前に座る私の背後に5人、前方に3人。

私は腕っぷしも凄いですが、耳も良いのですよ。それに殺意を消さないなんて舐められたものですね。
では転寝をしているフリをしてみますか。

ヤツらはすぐに行動しました、たかが小娘ひとりと油断したのでしょう。
見縊られたものですね、昏倒薬を使うまでもないです。

私を囲んだ瞬間、回し蹴り一周で応戦しました。
声を上げる間もなく、全員が倒れましたよ。なんと弱っちい!それでも男ですか、未熟者共が!

「暴れ足りません……はぁ100人くらい寄越して欲しいですわ」
襲撃者達は図体だけはあったので捕縛が面倒です。

ここで警笛を鳴らしました、事後処理はマホガニーに押し付け……ゲフン、任せましょう。
さて夜食の用意でもしましょうか。
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