26 / 82
新天地篇
国境へ(襲撃前)
しおりを挟む
ナザルリーフはかなり遠い、三カ月かけてタラタラ進むのは理由がある。
途中で襲ってくれたらそれで良いんだ、こちらが大転移術使ってやることはないさ。
馬車含め全員で転移はなかなか骨が折れるし。
今頃フォードとナザルのバカ王子達は虎視眈々と付け狙っているかもね。
罠だろうがバカ王子は野望があるようだから、何かしら仕掛けてくると踏んでいる。
フォードは狡賢いから微妙。
ついでに元住処であるカリュアス国の様子も覗う目的もあるんだ。
腹は立つが国土事態に罪はない、それなりに愛着だって持っているからね。
今は辺境の一歩手前ほどに居る。普通に国境砦を使う気はないよ、警備兵に絡まれるだろうから。
国境を超えたらすぐに隣国ではない、鬱蒼と茂る魔の森と盗賊の住む巨大な渓谷がある。
並みの旅人がここを抜けるのは二か月はかかる。無事生きていればだけど。
まぁボクらは普通に通る気はない。
この境界は国家間侵犯区域になっており、何人も占有することは許されない。戦争回避の意味も含むからだ。
わざわざ利の薄い場所を欲しがる国もないが。
それでも、逃げ延びた罪人やワケアリ者が集まり作った荒くれ者の村があると噂がたっている、だが詳細を知る生き証人はいない。
だって魔物や盗賊達が親切に帰してくれるわけがないだろう?
「無法地帯か、ちょっと楽しみだな」
「坊ちゃま、なにがですか?」メイドのラミンが興味深々に聞いてくる。
「渓谷の罪人の村さ、色々楽しめそうじゃないか?魔物もいるよ」
ラミンが目を爛々とさせる、聞き耳を立てていたエリマも期待に満ちた顔をする。
馬車に揺れて2週間たつからね、暴れたいんだろう。
悪路を進む道中にいくつかの村を通った、田畑が無惨に抉られ植物が一本もない。
遠目に幾人かの村人がクワをふるっているを確認するが、耕しているように見えない。
「土精霊の恩恵」とやらに踊らされてるのだろう、ゲノーモス様……恐ろしい方だ。
あぜ道に赤い粒と青い粒が落ちている、宝石だというのに小粒なものは見向きされてないのかな。
引っ越してからボクの根はあえて引っ込めている。故に情報は入らない、別にいいさ目視で十分。
出せば無駄に力を使うし緑の加護を与えてしまうからね。ボクは冷たいヤツだな。
二つの小さな集落を過ぎた頃、陽が傾いた。
やむなく枯れかけた森の片隅でキャンプをすることにした。
「カサカサに干乾びてるから焚き木が楽ね」
エリマが素手でバキバキと枯れ木を折って、竈を作った。
「きょうのスープはドライトマトとコーンですよ~」
ラミンが楽しそうに調理をする、大分表情が豊かになってきたね、とても嬉しいよ。
その少し離れた場所でマホガニーが穴を掘り、何かの実を並べていた。
その周りをグルドがチョロチョロしてた。
「おい、むっつり野郎。何をしておるのだ?穴で寝るつもりか冬眠には早いぞ」
「失敬な!パンの実を焼いているのだ、邪魔するなメタボリス!」
「何を!吾輩はリスではなーい!」
ギャイギャイと楽しそうだなぁ……。
ボクはひとり暇だったので、馬の世話をしてるアクティの手伝いをすることに。
「坊ちゃん、ダメっす。マホガニーさんに怒られるっす!」
「いーんだよ、あいつは少々過保護過ぎるんだ」
そう言って飼葉の代わりに掌からドサドサ果実を出して与えた。
蔦を生やして実らせたほうが美味しいけど体力温存ってことで。
「面白いっす、掌から緑の恩恵がでるっすね!」
ボクを抱え上げて「主は凄い方っす!まじ、尊敬しゃす!」そう言ってグルグルと回った。
マホガニーが鬼の形相で走ってきたのは言うまでもない。
途中で襲ってくれたらそれで良いんだ、こちらが大転移術使ってやることはないさ。
馬車含め全員で転移はなかなか骨が折れるし。
今頃フォードとナザルのバカ王子達は虎視眈々と付け狙っているかもね。
罠だろうがバカ王子は野望があるようだから、何かしら仕掛けてくると踏んでいる。
フォードは狡賢いから微妙。
ついでに元住処であるカリュアス国の様子も覗う目的もあるんだ。
腹は立つが国土事態に罪はない、それなりに愛着だって持っているからね。
今は辺境の一歩手前ほどに居る。普通に国境砦を使う気はないよ、警備兵に絡まれるだろうから。
国境を超えたらすぐに隣国ではない、鬱蒼と茂る魔の森と盗賊の住む巨大な渓谷がある。
並みの旅人がここを抜けるのは二か月はかかる。無事生きていればだけど。
まぁボクらは普通に通る気はない。
この境界は国家間侵犯区域になっており、何人も占有することは許されない。戦争回避の意味も含むからだ。
わざわざ利の薄い場所を欲しがる国もないが。
それでも、逃げ延びた罪人やワケアリ者が集まり作った荒くれ者の村があると噂がたっている、だが詳細を知る生き証人はいない。
だって魔物や盗賊達が親切に帰してくれるわけがないだろう?
「無法地帯か、ちょっと楽しみだな」
「坊ちゃま、なにがですか?」メイドのラミンが興味深々に聞いてくる。
「渓谷の罪人の村さ、色々楽しめそうじゃないか?魔物もいるよ」
ラミンが目を爛々とさせる、聞き耳を立てていたエリマも期待に満ちた顔をする。
馬車に揺れて2週間たつからね、暴れたいんだろう。
悪路を進む道中にいくつかの村を通った、田畑が無惨に抉られ植物が一本もない。
遠目に幾人かの村人がクワをふるっているを確認するが、耕しているように見えない。
「土精霊の恩恵」とやらに踊らされてるのだろう、ゲノーモス様……恐ろしい方だ。
あぜ道に赤い粒と青い粒が落ちている、宝石だというのに小粒なものは見向きされてないのかな。
引っ越してからボクの根はあえて引っ込めている。故に情報は入らない、別にいいさ目視で十分。
出せば無駄に力を使うし緑の加護を与えてしまうからね。ボクは冷たいヤツだな。
二つの小さな集落を過ぎた頃、陽が傾いた。
やむなく枯れかけた森の片隅でキャンプをすることにした。
「カサカサに干乾びてるから焚き木が楽ね」
エリマが素手でバキバキと枯れ木を折って、竈を作った。
「きょうのスープはドライトマトとコーンですよ~」
ラミンが楽しそうに調理をする、大分表情が豊かになってきたね、とても嬉しいよ。
その少し離れた場所でマホガニーが穴を掘り、何かの実を並べていた。
その周りをグルドがチョロチョロしてた。
「おい、むっつり野郎。何をしておるのだ?穴で寝るつもりか冬眠には早いぞ」
「失敬な!パンの実を焼いているのだ、邪魔するなメタボリス!」
「何を!吾輩はリスではなーい!」
ギャイギャイと楽しそうだなぁ……。
ボクはひとり暇だったので、馬の世話をしてるアクティの手伝いをすることに。
「坊ちゃん、ダメっす。マホガニーさんに怒られるっす!」
「いーんだよ、あいつは少々過保護過ぎるんだ」
そう言って飼葉の代わりに掌からドサドサ果実を出して与えた。
蔦を生やして実らせたほうが美味しいけど体力温存ってことで。
「面白いっす、掌から緑の恩恵がでるっすね!」
ボクを抱え上げて「主は凄い方っす!まじ、尊敬しゃす!」そう言ってグルグルと回った。
マホガニーが鬼の形相で走ってきたのは言うまでもない。
119
お気に入りに追加
3,083
あなたにおすすめの小説
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
王子の婚約者なんてお断り 〜殺されかけたので逃亡して公爵家のメイドになりました〜
MIRICO
恋愛
貧乏子爵令嬢のラシェルは、クリストフ王子に見初められ、婚約者候補となり王宮で暮らすことになった。しかし、王妃の宝石を盗んだと、王宮を追い出されてしまう。
離宮へ更迭されることになるが、王妃は事故に見せかけてラシェルを殺す気だ。
殺されてなるものか。精霊の力を借りて逃げ切って、他人になりすまし、公爵家のメイドになった。
……なのに、どうしてまたクリストフと関わることになるの!?
若き公爵ヴァレリアンにラシェルだと気付かれて、今度は公爵の婚約者!? 勘弁してよ!
ご感想、ご指摘等ありがとうございます。
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる