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地下牢1

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執事マホガニーの背を追うようにボクは地下深くへ下りる。
妙に苔むして階段の壁がデコボコしているのはボクの趣味、雰囲気って大切でしょ?
冒険物の本を参考に造り直したんだ、ほんとうは崩落する床やゴロゴロ転がる巨石を設置したかった。
せめて壁から火くらい出したい。

執事に全部却下されたけどね……。
「使用人が毎回命がけで利用する意味がわかりません、秘宝もないのに」
「君らなら簡単にクリアしそうだけど?」

そういうことじゃないと彼の身体が揺れる、背中で語る男か。渋さはあまりない。
マホガニーの姿はボクが物心ついた頃から変化はない、人間で言えば28歳くらいで止まってる。
高身長で手足が長く、髪色と瞳は柳色だ。
母の幼少から執事をしているから、見た目よりずっとオッサンだと思う。

「なにか失礼な事考えてませんか?」
「気のせいだよー」(棒)

ちょっと油断すると思考を読まれる、危ない。
意思疎通ができるのは良いが私的侵害はいけないよ。

手間のかかる食事やオヤツが予め用意されてるのはそういう所。

ボクらドリアード族は、本来共生して存続する生命体だったと記憶の植木鉢で学んだ。
見えない根っこが繋がっているようなイメージだ、大昔、始祖世代は強く結ばれていたそうだ。

運命共同体、聞こえはいいが怖いとボクは思う。

ボクが病や毒に侵されたら彼らも影響を受け変調をきたす、そんなの望まない。
グルド曰く、「当主が強いれば眷属共生状態になる」だそうだ。

そんなの嫌だよ。

ボクが欲しい絆はそうじゃない、奴隷などいらない。
だったら一人でいいさ。
名を与えたのは縛るためじゃない、彼らには自分で思い願う生き方をして欲しい。

つらつら考えていたら地下牢に着いていた。


***

地中深いが一応地下1階、そこに侵入者5人がバラバラに収容してある。
魔法を駆使して逃走を試みたのだろう、それぞれが火傷や凍傷でボロボロだ。
罪人用の部屋が陳腐な構造なわけがないだろう?

「そこのキミ、自身の火魔法はどうだった?良い炙り具合だね」
我が家に火を放った男の一人に声を掛けた、髪の毛はチリチリでほぼ毛髪がない。
煤けた布で巻いて隠してる、いっそ剃った方が良くないか?


「……嫌味なヤツ。知った事はすべて話したぞ、いつ解放される?我らはナザルリーフの国家魔導士だ、不法拘留は国際問題だぞ。」
「ほお、不法入国したくせに使者気取りかい?使い捨ての駒など行方不明でも困らないさ」
ボクはワザと煽るようにケラケラ笑った。

「そんなはずはない!我が王はこの地を属国にすべく!あっ……」
「はい、言質とったよ、姑息なことして結局は戦争の火種を持ち込んだだけか。愚王だね」

ちりちり頭がボクを睨んで何かいいかけて口を噤んだ。
恐らく半分事実で半分は違う理由があるはず、カマを掛けたがそう簡単に割らないか。


「マホガニー、オモテナシが足りないようだぞ。真の雇主を貶せばボロを出す。続きを頼むよ、ボクはクズ親子を尋問してくる」
「畏まりました、あれは最後で?」
「自白剤のこと?うーん、多用すると廃人になるから最終手段にして」

やり取りを聞いていた隣の女囚人が悲鳴を上げた。
「やめてぇ!私は全部話すわ!シモヤケが痒くて辛いのよ!ここは暗くて気が変になりそうよ!なんでもいいの光を頂戴!空を見させて、外が見たいわ!お願いよぉ!」

自身の氷魔法が撥ね返ったとみえ、赤く爛れた肌を掻き毟って血が滲んでいる。
氷を作ってどうしようとしたのか、無駄な足掻きをしたものだ。


甲高い喚き声がボクの癇に障る。
「ウルサイからそっちから片付けろ」
「御意」

マホガニーがトゲ付きの鞭をヒュルリと鳴らす。
「では痒い箇所を刺激してさしあげましょうか、レディファーストでオモテナシを実行します」
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