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公務
しおりを挟む一方的な決めつけでクロエファニーを糾弾してしまった皇子は”済まなかった”という言葉を綴った手紙を認めた。だが、当然のように返事は来ない。
「ああ……どうしよう、嫌われてしまった!」
項垂れる皇子はグシャグシャに泣き潰れている、それを呆れて見ている側近が「だから言ったじゃないですか」と零す。明らかに言動が可笑しかったアボリーヌ・バルゲリーの言葉を鵜吞みにして、正妃に疑いをかけた彼を困った人だと肩を竦める。
「どうじよう……なぁ……グスン!どうずればグシグシッ」
「うわっ、汚いなぁ、先ずは鼻をかみなさい。はぁ、そうですねぇ詫びというのもなんですが茶会を開いてみれば?夕餉にも来て下さらないのでしょう?」
「うん、……あれから一度も会っていないのだ」
大きな体を縮こませてグスグスと泣く皇子をゲンナリして眺める、筆頭側近であるコルファは眼鏡をクイッとさせてからメモを取る。そして、書かれたその言葉通りに手紙を出すように指示した。
「これを書けば彼女は振り向くのだな?」
「はい、絶対ということはないでしょうが、おそらく」
コルファは公務を臭わせてクロエファニーを天岩戸から出す作戦を立てた、すっかり拗ねてしまった彼女を呼び出すには正妃としての務めを果たせと言わざるをえないと考えた。
「宜しいか、ただの茶会ではないと臭わせるのです。政務絡みだと知らしめれば出てくることでしょう。それには大臣らの協力も必須になりますが」
「うん、わかった!これは公務だ、決してやましいことではない」
「やましいね……とにかく取り急ぎ私は席を設けるので、やれ忙しくなりそうだ」
***
堅苦しい茶会になってしまったが、正妃クロエファニーは渋々ではありながらも茶会の席に姿を現した。マテイビルアンは待ってましたとばかりに腕をくの字にして待機した。
だが、それに添えられる手はなかった、拒否した彼女は相変わらずにソッポを向いていた。
「ク、クロエ、どうして……」
「……」
”返事はないただの屍のようだ”というばかりに無言である。あれから謝罪の手紙と花束を何度も贈ったが一向にリアクションは無かった。
「ゴホン!アボリーヌの処遇については無期限監禁とした、来年度には国へ帰って貰う。それでどうだろうか」
「……」
「クロエファニー!返事をしてくれないか、お願いだよ」
悲し気な声で彼女に名を呼ぶ皇子はツイッと正面にたった。威嚇しないように中腰である、その様は情けない恰好になってしまったが反省しているという効果は絶大だ。来席した大臣らも苦笑して彼らを眺めていた。
「はぁ、もう宜しいです」苦々しい顔をしながら彼女はやっと口を開いた。
「クロエ!では!」
「私の事も来年度で解放してください、それで相殺いたしましょう皇子殿下」
「ええええ!?」
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