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しおりを挟む「さぁ、ここがギルドで間違いないわ。私も詳しいわけではないの」
彼女は頬に手を当ててそういう、貴族であるサラジーヌとて縁がある場所ではないのだから。
「キミも登録しないか?見た所ボクと同じ根無し草のように見えるよ」
「そう?うーん、残念だけどやめて置くわ、私は私のやり方で生きていく」
サラジーヌはそう言うと「バイバイ」と手を振って立ち去った、後に残されたエメリは至極残念そうにそれを見送るのだった。
「ふふ、きっとまた会えるさ。こんな小さな集落だもの」
彼はそう呟くとギルドの重厚な扉に手をやるのだ。
「さて、私の能力と言えばやっぱりアレよね」
古い店兼住居を借りたサラジーヌは張り切る、とても小さくて見すぼらしい家屋だったが彼女には城のように見えるのだ。何より重点に置いたのは庭である、荒れた土地だったがとても広くて大家が「好きに使ってくれて良い」と言ってくれた。
「昔は立派な薔薇園だったけれど手入れが面倒で金もかかるしでね、何年も放置してたのよぉ。草毟りでもしてくれたら恩の字だわぁ」
「あら、勿体ない!きっと良い甘いお芋ができますよ、痩せた土地には最適です、お裾分けしますね」
「芋?あらまぁそれは期待ししちゃうわ、アハハッ」
老婆の大家はそう言って大笑いして暇した。
***
彼女は何もドリアードの新しい長として、ただボサッと君臨していたわけではない。
かなりの果物について研究していたのだ、ありとあらゆる果実の種を彼女は取り寄せてホクホク顔で種を撒く。
「季節外れのメロンと苺は如何~♪うふふ、楽しみだわ」
それぞれ収穫期が違うものを無造作に撒いた、もちろん種類分けはしている。そこでドリアードの能力発揮である。三日もすればそれらは大きな実をつけて見事に甘い香りを放つ。
「一度やってみたかったの、メロンに苺をのせて葡萄をあしらうの。桃もつけちゃいましょう」
大豊作となった農園は芋どころの騒ぎではない。
大家に見せれば腰を抜かし「どうやったの!?」と驚かれた。
「まぁまぁ、良いじゃないですか。美味しいのならばなんだって!ほら食べてくださいな」
「アワワ……冬にメロンがなるなんて」
ドリアードの技を使えば何度でも実を付けてボコボコと見事に膨らんだ、まさに食べ放題だ。
「そうよ、これを商売にしない手はないわ。いつでもメロンや桃が食べられるだもの!」
”サラ果実店”開店である。
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