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しおりを挟む「おお、我が君……いったい何処おわすのか!」
そう言ってサラジーヌの行方を気にするのは彼女の祖父であるロズランド卿である。王太子を発表するはずの宴の最中にやらかしたシャリーを許せないと書斎のデスクを叩く。ドリアードの血を最も重んじる彼は頭を抱える。
「あのバカ孫が!何が”奇跡の御業”だ!あんなもの我が一族の乳飲み子でも出来るわ!」
彼はそう言うと卿は書斎の中を右往左往する、やはり息子に任せておくのは早すぎたのだと伯爵の座を奪い返した所だ。陞爵を賜りたいが故に王子との婚約を許した息子夫婦を恨まずにおれない。
その書斎の片隅で震えているのはその”バカ息子”である、名をドリーと言う。
「あ、あの父上……このままシャリーを王子の婚約者として許すわけには」
「ならん!どうすればそのような考えに及ぶのだ?あの娘にはなんの能力もないのだぞ!何れバレるに決まっておろうが!」
「ひぃ!」
卿の激高ぶりに恐れをなしたドリーは脱兎の如く書斎を飛び出していった。
「……なんとかサラジーヌを探してシャリーに変わり異能を発揮させなければ」
愚鈍な父ドリーはまだ諦めていなかった、子爵から伯爵になれた彼はそれに縋っていたいのだ。上位貴族とはそれだけの価値があるのである。
一方でドリアードの血を受け継いだと嘘を吐いたシャリーは「やり過ぎた」と今更後悔していた。
「ほんの出来心だったのよ、お姉ちゃんを困らせてやろうと……なのに王子はすっかり騙されちゃって、引っ込みが付かなくなったのよ」
涙を滴らせながらそう言って両親に懺悔するシャリーは「どうしたら良い?」と鼻水を垂らす。
「はあ……終わったことは仕方がない。これからの事を話そう、お前はドリアードの王、ドリュアデスとして君臨しろ、それしか伯爵の名は存続できない」
「ぐすん、おじい様はそれを許すと思う?」
「う……それは」
言葉を濁すドリーは何も考えておらず「伯爵夫人よ」と言って調子づいていた妻のメリーゼも同様で、伯爵という身分を手放したくないと駄々を捏ねる始末だ。
「ね、ねぇシャリーちゃん、御業は他に出来ないの?こうお姉ちゃんみたいに蔦を生やすとか」
「出来る訳ないじゃない!あれは化物だわ、化物でなくてなんなの!ウネウネグニャグニャと気持ち悪い!あり得ないでしょ!」
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