4 / 34
最悪な結婚式
しおりを挟む
荘厳な白亜の教会には、招かれた招待客達の言祝ぎで溢れかえる。
控えの間にいた私の耳にも届くほどだった。
「良縁で」「幸せに」「良かった」など、途切れ途切れに聞こえる。
両家ともにそれなりの家格と顔の広さがある、招きたい家があまりに多く選別に苦労したほど。
遠い縁戚や下位貴族家は披露宴だけ招待することになったわ。
新婦の入場時間が来て、お父様と一緒に扉の前に立った。
純白のドレスは細やかなレースがふんだんに使われた贅沢なもの、加えてベールには無数の真珠で装飾がされている。
このドレス一着で屋敷がたつのでは?
どうも、奇妙な夢を見てからというもの。無粋な感想が浮かぶようになっていたわ。
例えるなら庶民感覚とでもいうのかしらね。
引き出しからジャラジャラと出てきた宝飾品を見た時は、換金して寄付しようかと思ったわ。
だってほとんど使わないのだもの。
コレクション?宝石のコレクター?
なにそれ、今までの私はバカだったのかしら……。
贈答されたものも多いけれど、贅沢は敵だと思うのよね。
だって貴金属は食べられないわよ。
おっといけない、骨折してから食欲旺盛になってしまったみたい。
豊満なワガママボディ?に育ってしまった私は後悔の溜息をはく。
ぶっちゃけ花嫁というより、巨大な白い物体、歩く白い山のようだわ。
結局半月頑張ったけど、ウエストが2センチ減っただけだった。
巨漢が2センチ減ったところで、見た目はほとんど変わらないのよ。
自己嫌悪に陥っていたら父がクイクイと腕を引いた。
「どうしたんだいアリス、緊張はわかるが今日の良き日に昏い顔はしちゃいけないよ」
「は、はい。ごめんなさいお父様」
招待客には常に笑顔でね。と父が言った。
ええ、頑張ります……。
私はまん丸でニキビだらけの顔に無理矢理笑顔を貼り付けて「ヴホホホホ」と笑って見せた。
とってもブサイクなはずだけれど、父は「三国一の花嫁だ!」と褒めた。
うちの両親は眼科に長期入院するべきだと思う。秒で行ってきて。
それから観音開きの扉が開かれ、聖壇に続くバージンロードを歩く。
うぅ、ロードの両脇からの視線が痛い……。
皆は儀式の最中だから静観してくれているが、私の変貌に驚いている事でしょう。
しばらく会っていない人も多いから尚更ね。
ノソリノソリと歩くニキビ顔の白いオーク、または白い何かだと思われてる気がするわ。たぶん。
***
引きつった笑顔のまま奥を見れば、新郎イーライが鬼の形相で待っていた。
ほんと申し訳ない……。
お式が無事済んだらダイエットに励みます、だからそんなに怒らないで!
とても花嫁を迎える貌ではないわ、憤怒というのを通り越してるから。
私が祭壇前に到着すると横から盛大な舌打ちが「チッ!!!」と聞こえてきた。
居たたまれない、早く終わらせて欲しい。
縋るように神父様の顔を見ると慈愛の表情でおられた、さすが聖職者。花嫁がオークでも優しいのですね。
変な方向で私が感動していたら、背後から讃美歌が流れて来た。
いつのまにかパイプオルガンが曲を奏でていたようだ。
そして斉唱が終わると神父様が朗読と祈祷をはじめた。
いよいよだ、なんかごめん、ごめんなさい!
お互いほぼ棒読みだったけれど、神父様の問いかけに答えて誓約が終了した。
無事終了かどうかは怪しい。
宣誓時に、イーライは明らかに嫌そうに返答していた。
問われてから無言が1分近く間あったと思う、私はハラハラした。
指輪の交換の時はそれ以上に最悪だった、そう指輪のサイズが全く合わなかったのだ。
急激にデブになった私の薬指をリングが拒絶して入らない。
ああああああぁぁ……。
仕方なくイーライは小指に填めてくれた。
それでも第一関節で止まってしまって、互いに焦る。
その時”クソデブが!”と小さな声で苛立ちをぶつけられた。かなり精神を抉られたわ。
そして、誓いのキス。
どんなに嫌でもこればかりは避けられない。
ベール越しではあっても彼の形相がわかる、そうね。こんな化物にキスなんてしたくないよね。
するとイーライは左側だけを捲り上げて頬にキスをする……フリをした。
そうよね、そうするわよね。当たり前の反応だわ。
でも悲しい、涙が出そうになった。
政略結婚だけど、ここまで拒絶反応を見せられては心は折れるわ。
一見は厳かに、そして恙なく終わった挙式。
二人でチャペルから顔を出せば、ライスシャワーと花弁舞った。
おめでとうの言葉がたくさんかけられたけど、どれもこれも口先っぽい。
招待客達はイーライの素っ気ない態度から何かを悟っただろう。
そして、醜く惨めな花嫁となった私のことをどう褒めて良いか躊躇っているのがわかった。
リンゴンと祝福の鐘が虚しく初夏の空に響いいていたわ。
控えの間にいた私の耳にも届くほどだった。
「良縁で」「幸せに」「良かった」など、途切れ途切れに聞こえる。
両家ともにそれなりの家格と顔の広さがある、招きたい家があまりに多く選別に苦労したほど。
遠い縁戚や下位貴族家は披露宴だけ招待することになったわ。
新婦の入場時間が来て、お父様と一緒に扉の前に立った。
純白のドレスは細やかなレースがふんだんに使われた贅沢なもの、加えてベールには無数の真珠で装飾がされている。
このドレス一着で屋敷がたつのでは?
どうも、奇妙な夢を見てからというもの。無粋な感想が浮かぶようになっていたわ。
例えるなら庶民感覚とでもいうのかしらね。
引き出しからジャラジャラと出てきた宝飾品を見た時は、換金して寄付しようかと思ったわ。
だってほとんど使わないのだもの。
コレクション?宝石のコレクター?
なにそれ、今までの私はバカだったのかしら……。
贈答されたものも多いけれど、贅沢は敵だと思うのよね。
だって貴金属は食べられないわよ。
おっといけない、骨折してから食欲旺盛になってしまったみたい。
豊満なワガママボディ?に育ってしまった私は後悔の溜息をはく。
ぶっちゃけ花嫁というより、巨大な白い物体、歩く白い山のようだわ。
結局半月頑張ったけど、ウエストが2センチ減っただけだった。
巨漢が2センチ減ったところで、見た目はほとんど変わらないのよ。
自己嫌悪に陥っていたら父がクイクイと腕を引いた。
「どうしたんだいアリス、緊張はわかるが今日の良き日に昏い顔はしちゃいけないよ」
「は、はい。ごめんなさいお父様」
招待客には常に笑顔でね。と父が言った。
ええ、頑張ります……。
私はまん丸でニキビだらけの顔に無理矢理笑顔を貼り付けて「ヴホホホホ」と笑って見せた。
とってもブサイクなはずだけれど、父は「三国一の花嫁だ!」と褒めた。
うちの両親は眼科に長期入院するべきだと思う。秒で行ってきて。
それから観音開きの扉が開かれ、聖壇に続くバージンロードを歩く。
うぅ、ロードの両脇からの視線が痛い……。
皆は儀式の最中だから静観してくれているが、私の変貌に驚いている事でしょう。
しばらく会っていない人も多いから尚更ね。
ノソリノソリと歩くニキビ顔の白いオーク、または白い何かだと思われてる気がするわ。たぶん。
***
引きつった笑顔のまま奥を見れば、新郎イーライが鬼の形相で待っていた。
ほんと申し訳ない……。
お式が無事済んだらダイエットに励みます、だからそんなに怒らないで!
とても花嫁を迎える貌ではないわ、憤怒というのを通り越してるから。
私が祭壇前に到着すると横から盛大な舌打ちが「チッ!!!」と聞こえてきた。
居たたまれない、早く終わらせて欲しい。
縋るように神父様の顔を見ると慈愛の表情でおられた、さすが聖職者。花嫁がオークでも優しいのですね。
変な方向で私が感動していたら、背後から讃美歌が流れて来た。
いつのまにかパイプオルガンが曲を奏でていたようだ。
そして斉唱が終わると神父様が朗読と祈祷をはじめた。
いよいよだ、なんかごめん、ごめんなさい!
お互いほぼ棒読みだったけれど、神父様の問いかけに答えて誓約が終了した。
無事終了かどうかは怪しい。
宣誓時に、イーライは明らかに嫌そうに返答していた。
問われてから無言が1分近く間あったと思う、私はハラハラした。
指輪の交換の時はそれ以上に最悪だった、そう指輪のサイズが全く合わなかったのだ。
急激にデブになった私の薬指をリングが拒絶して入らない。
ああああああぁぁ……。
仕方なくイーライは小指に填めてくれた。
それでも第一関節で止まってしまって、互いに焦る。
その時”クソデブが!”と小さな声で苛立ちをぶつけられた。かなり精神を抉られたわ。
そして、誓いのキス。
どんなに嫌でもこればかりは避けられない。
ベール越しではあっても彼の形相がわかる、そうね。こんな化物にキスなんてしたくないよね。
するとイーライは左側だけを捲り上げて頬にキスをする……フリをした。
そうよね、そうするわよね。当たり前の反応だわ。
でも悲しい、涙が出そうになった。
政略結婚だけど、ここまで拒絶反応を見せられては心は折れるわ。
一見は厳かに、そして恙なく終わった挙式。
二人でチャペルから顔を出せば、ライスシャワーと花弁舞った。
おめでとうの言葉がたくさんかけられたけど、どれもこれも口先っぽい。
招待客達はイーライの素っ気ない態度から何かを悟っただろう。
そして、醜く惨めな花嫁となった私のことをどう褒めて良いか躊躇っているのがわかった。
リンゴンと祝福の鐘が虚しく初夏の空に響いいていたわ。
67
お気に入りに追加
360
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる