完結 妹がなんでも欲しがるので全部譲りました所

音爽(ネソウ)

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「香理茄とカリーナ奇しくも前世の妹と似たような名前をした憎くて愚かな子。欲張りで我儘なところまでソックリね、前世での繋がりがあるのかしら」
同じ世界へ生を受けたのはなんの因果か、理由はわからないがもし神の仕業ならば恨みたくなる姉だ。
妹の方に記憶が残っているかは不明だが、少なくともそれらしい言動は見当たらない。

”年上だから、姉だから妹に譲れ”
今世の親もやはり似たようなことばかり強いてきて彼女を苦しませた、だが前世で生きた妙子とは違って身も心も強いユリアネは抗うことにした。譲ったふりをしては取り返したし、我儘が酷い時は遠慮なく制裁を加えた。
今の彼女は強かで狡さを学んだのである、親はともかく侍従らのほとんどを味方につけたし、遠慮はしていない。

「もしもあなたが記憶持ちなのだとしても私は負けないから」
理不尽なことが発生した場合は奪われたものに見合う分の物を親たちから搾取してきた。
「だって貴方々が言ったのじゃない、”年上は我慢して差し出せ”とね。うふふふ」
宝飾品が奪われた時は母から似たものを貰い受け、妹が暴力を奮えば父に慰謝料を容赦なく要求していた。

やりたい放題の愚妹は知らないが、家の財のほとんどはユリアネのものに変わっていたのだ。
しかし親とて黙って譲ったわけではないが、そうせざるを得ない理由があった。
それはユリアネの能力である、彼女は密かに呪術の力を磨いていた。前世ではありえないその異能をユリアネは存分に発揮して生家を窮地に陥らせたのだ。

「次は私を裏切ったアロイス彼方の番よ」

ずっと天井を睨んで恨み言を呟いていた彼女はニタリと嗤って寝具から起き上がった。
生涯寝たきりと判断されたはずのユリアネは優雅にフカフカの床へ立ち上がると己の右手を凝視する。
黒から暗紫に変化して徐々に目に眩しい鮮やかな紅色になった元黒曜石を嬉しそうに撫でる。
「強欲なカリーナ、私の不幸を全部あなたに譲ったわ。だって私の物はなんでも欲しいのでしょ感謝してよね、この呪術はそれなりに魔力と体力を奪うのだから。うふ、うふふふ……アーハハハハハッ」

両親から奪った財産以外はカリーナへ差出したユリアネはなんの憂いも無い。
彼女の心を蝕んでいた憎悪さえも今は妹のものである、長く苦しめて来た前世の分を含めれば相当な負の財産である。

***

「嫌!嫌よなによこれは!取れない取れないのよ、助けてアロイス!」
美しかったピンクダイヤは禍々しいオーラを放ちやがてどす黒い石に変貌してカリーナを呪う。
これまで苦しみ抜いて耐えてきた姉の怨嗟は凄まじい、甘やかされて育った妹の精神は崩壊するかもしれない。
「だ、だずげで……ア”ド…イズゥ……あ”あ”あ”ぁぐるじいのぉ~」
「ヒィ!?きゅうにどうしたというんだ!や、やめろ俺に近づくな!」
呪いに蝕まれて苦しみだしたカリーナは、眼球が飛び出さんばかりに瞼を見開いて血涙をボタボタと流す。

声は皺枯れ皮膚はボコボコと歪んだと思えば茶に変色して斑点だらけの老人のようになった。
あまりの恐ろしさにアロイスは腰を抜かして失禁してしまう。

だが発動した呪いは序の口でまだまだこれからである。


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