誰ですか、それ?

音爽(ネソウ)

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儚げ美少女ぶっていたアビーの豹変ぶりに、”ハワード”なる人物は戸惑う。
なにが原因で怒っているのかサッパリだからだ、今時点で自分がダシにされていることにも気が付いていないのだから。


「ア、アビー?どうしてしまったんだい」
呑気そうに語りかけてくるハワードを、キッと睨んでアビーは金切声で言った。

「ハワードもこの澄まし顔女狐に言ってあげなさいよ!”お前なんかより、アビーの方がずっと良い”って!」
「え?……いきなりそれは失礼じゃないのかな、挨拶もまだなのに」


ただただ困惑が増えて行くハワードは、申し訳なさそうにアレスティナへ会釈した。

「よろしいのよ、子息様」
「恐縮です、今さらですがご挨拶をハワード・リンゼルトと申します。しがない子爵家の名を知っていただけていたとは」

「いいえ、リンゼルト家と言えば綿花栽培で有名じゃないですか。当然のことですわ」


当たり障りのない社交辞令を始めたふたりに、アビーは目を見開いて驚く。
なぜこうも冷静でいられるのか信じられなかった、それに……。


「ハワード様!?……もう!貴族ってどうしてこう猫被るのかしら!それに”めんか”って何?お菓子の名前?」

アビーは、一向に婚約者のアレンティナに嫌味ひとつ言わないハワードの態度に不満がつのる。
それに婚約破棄をさっさとして欲しいとイライラしていた。

なので


「いいことアレンティナ!ハワード様は私を選んだの!アンタなんかお呼びじゃないのよ!そうよね?ハワード!」
「どうしたんだいアビー、今日のキミはずいぶんエキサイティングだね?そんなとこも可愛いけど」

「んまぁ、ハワードったら!」

急にしおらしくなってハワードにしな垂れかかるアビーに、アレスティナとデビットは目を白黒させる。
「アビーはなにがしたいんだろ?何時も変な子だけど輪をかけて変だ……」
「そうね、ワインでも飲み過ぎたのでは?」


ヒソヒソと話し合う姉弟を見てアビーは再び怒り出す。

「ちょっと!ふたりで何を悪企みしてるの!ハワードは私のものなんだからね!邪魔させないわよ!」
ビシッと人差し指で姉弟を指して咆えるアビー。


「……なにを怒っているのか知らないけど、祝福するわよ?」
「そうだよアビー、ボクらが邪魔するはずがない」


「へげっ?」
「ほらアビー2曲目がはじまったよ、俺達もダンスを楽しもうよ」


”え!?ちょっと待ってよ!なんかおかしいわ!想像してたざまぁ展開はどこよ!”

恋人に身体をガッチリホールドされたアビーは、されるがママにステップを踏んだ。
頭には「???」を浮かべたまま。

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