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プロローグ

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「ごめん、急用ができたんだ。ティアならわかってくれるよね?ね?」
「……そうですか、仕方ありません」


ほぼ棒読み気味に返事したのは”彼の急用”が17回連続だったから。
わたしクリスティアナ・グリストは大人しく公爵家へ戻ることを告げる。

「ありがとう!この穴埋めは必ず!」
「……お気になさらないで次は――」

「じゃあ急いでるから!」



私が言い終わる前に婚約者ヘイデン・モスリバーはさっさと踵を返して黒い伯爵家の馬車に乗って行ってしまう。
「呆れた……顔を合わせて数秒じゃないの」

最初のうちは悲しくて泣いて縋ったりもしたが、流石に8回目辺りで心が冷えた。
ガラガラと揺れる馬車の車窓から、緑が芽吹き始めた街路樹を眩しく眺めて吐露する。


「そろそろ潮時よね、だってそうでしょ穴埋めの穴埋めが16回も続いたら……ねぇ?どれほど穴を開ければ気が済むのか数えてたら、こちらが滅入ってしまうわ」

「左様でございますね、お嬢様。旦那様は午後にはお戻りになります」

「そう、ならば婚約についてお話があると通しておいてね」
「畏まりました」

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