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メリントン・ファイブスター王女の編入
しおりを挟む「メリル・デイトリクス公爵令嬢?聞いたことがないな」
「でもデイトリクスと言えば大富豪の名と同じじゃないか、ひょとしたそうなのかも」
彼らは編入してくると噂の女性について話し合っていた。箱入りの令嬢が気まぐれで王都学園にやってくると情報があったのだ。
「どうにも錯綜しているな、ほんとにいるのか怪しいもんさ」
ポルドワン・ランブールは胡散臭そうに「ふん」と鼻を鳴らす。お近づきになりたいものだと悪友はせせら笑う。
「お前がか?冗談だろう、たかが子爵程度の身分で何を言ってるんだ」
「そんな事を言うなよ~夢を見てなにが悪い、自虐してんだろ」
不貞腐れる友人にソッポを向いて「俺だったらギリいけるかも」とポルドワンは言う。
その次の週にその令嬢は現れた、緩くうねった淡い栗毛に同じ色の瞳の彼女は見目美しくそこに立っていた。正面玄関に到着した彼女は教師に促され校舎に入っていく。
『噂はほんとうしいな、デイトリクス公爵……だが娘がいたなんて聞いた事がないぞ。ひょっとしたら……隠し子かなにか?富豪の愛人の子供とか、あり得るな!』
にんまりと笑ったポルドワンは「手取り足取り教えてあげようじゃないか」とクスクスと笑いながら彼女の消えた校舎へと向かうのだった。
***
「よ、ようこそ。我が校へ!私は学園長の」
「あぁ、堅い挨拶はナシでお願いするわ、くれぐれも身分は内密にお願いね?」
「はい、もちろんです!王女殿下!」
「ほらもう!それがダメだと言っているのよ、私はメリントン・ファイブスターではなく只のメリル・デイトリクスですからね!」と学園長の耳を摘まんでそう小さく囁いた。
”メリル・デイトリクス公爵令嬢”と身分を隠し、瞳と髪色を変えてやってきた。多少王女と似ていたとしても、親戚であるデイトリクス公爵ならば誤魔化せるだろうと踏んでのことだ。
彼女はファイブスター王とある賭けをしていた。恋に恋する乙女の王女は結婚のことで頭を悩ませていたのだ。
「私は真に心から愛する方じゃないと結婚しません!例え陛下が立腹されようとね」
しかも彼女は望まぬ婚姻をさせるなら修道院に入ると脅す、これにはファイブスター王も頭を抱えた。現王の一粒種である王女を女王にしようと画策していた、王配は隣国の第三王子をと考えていたのだ。
「わかったから落ち着きなさい!ではこうしよう、王都学園へ行き半年間のうちに心を許す殿方を射止めなさい。期間内に現れなかったらアングラードの王子と婚約するのだ」
「ふん!良いでしょう、半年間ね、見ていなさい。私は真の愛を勝ち取って見せるわ!」
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