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13 防御力が高いドレス

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一団が二階の寝室へと上がって行く、その部屋には窓はなく階下より暗かった。
セシルは不満そうにしていたが、それなりの寝具が準備されていたので渋々納得する。これから合意なき婚前交渉という卑劣な行為がされるのだ。
そして、白布を剥ぎ取られたオフェリアがそこに横たわされた。彼女の口からは微かに寝息が聞こえるだけで身じろぎ一つしない。セシルは下品な笑みを浮かべてベッドの脇に座る。
「不本意だが我慢してくれ、ボクだってそうなんだ。愛しても無い女を抱くのは初めてだ、でもこうでもしないと伯爵家を受け継げそうもないからな」

卑怯なセシルの筋書きは、王家へ嫁ぐ前にオフェリアを穢して婚姻を邪魔するという愚行から始まる。
”実は元婚約者の二人は密かに愛を育んで逢瀬をしていた”と虚実を撒く、この醜聞が世に広まれば王子との婚約は破談になりアルベリック王子が伯爵家を継ぐ理由が消える。短絡的な計画ではあるが、少なくとも純潔を散らされたオフェリアの評判は地に堕ちて他から縁談は来ないだろう。
「王族を裏切った醜女を社交界は許さないだろうなぁ、可哀そうなオフェリア。でも安心したまえ。このボクが妻に娶り伯爵家を継いであげよう、なにも心配はないさフフフフフッ。そしてロミーを愛人に迎えて3人で面白楽しく暮らそうじゃないか、でも性悪のアイツは用済みでもいいかな我儘が酷くて困ったものさ。ボクは従順な娘が好みなんだよ、さて跡継ぎを作ろうか……人払いを」

周囲にいたギルド員たちを指して「寝室から出てくれボクらの初夜だ」と彼は言った。
すると彼らは「勝手にしな」という素振りを見せてゾロゾロとでて行く、淫らな行為を見物する一興を望む者はいなかった。

「優しくしてやるつもりはないよ、どうせ眠っていて痛みも快楽も伝わらないだろう?」
セシルは舌なめずりをしてからその汚い手を彼女の身体へ伸ばした。清らかなオフェリアは今まさに凌辱されようとしていた。
美しく延びた手足と胸の膨らみが情欲を掻き立ててくる、スタイルは中々好みの女だとセシルは薄ら笑いを浮かべた。そして、彼女のドレスに手をかけ脱がしにかかる。ゆっくりとじらすように薄絹は剥がされていった。

まずはあられもない姿を視姦して楽しんでやろうとセシルは思った。
白い肩が現れ、膨らみの部分で手こずった。想像よりも豊かだった胸部が脱がす手を邪魔してくるのだ。
「ふ、これはこれでで楽しいな。ロミーはキミほど素晴らしい双丘を持っていなかったんだよ。全く顔だけの女だよな」
無粋なことを口走りながら彼は楽しそうに布を引っ張る、犯し穢す醍醐味だとでも言うように。
なんとか剥ぎ取ろうと躍起になるセシルだったが、どうにも上手くいかない。下半身に疼きはじめた欲の膨らみも萎えて来た。

「どうなってんだこのドレス⁉甲冑じゃあるまいし、頑強すぎるだろうが!」
苛立ち始めた彼は四方八方に布を引っ張る、だが彼女の膨らみは頑なにそれを拒絶していた。布は薄い癖にやたら頑丈で引き裂くこともままならない。
絹と思われたそれは違う素材で仕立てられたようで、グニグニと伸びはしても手を緩めると元の位置に戻ってしまうのだ。
「チクショー!布切れまでボクをバカにするのか!このっこのこの!」
胸元と格闘すること十数分、とうとう脱がすことは叶わず彼は胸元を辱めることを諦めてドレスの裾を捲り上げることにした。

さすがに防御力が高いドレスでも捲り上げるのは容易かろうと彼は思った。再び劣情を膨らませた彼はオフェリアの足元へ移動する、そして裾に手をかけた。その瞬間、下品に歪んでいた顔がさらに歪むことになった。
無防備に寝ていたはずの彼女の足が愚劣な彼の股間を蹴り上げてきたのだ、しかも休むことなく大事なところを踵で連打攻撃してくるではないか。
「ぎゃーーー!イダイ!やめろー!」
強姦魔セシルは股間を押さえて泣き叫び、床に落ちてゴロゴロと転げまわり泡を吹いた。男が一番弱く鍛えようがない急所は金的である想像絶する苦痛だろう、淑女とは思えない荒事をするオフェリアはベッドから飛び出して愚者へ追撃せんと近寄り、身体のありとあらゆる急所を蹴ってきて、セシルを追い詰めた。

「ふん、下賤が!ボクの水女神を穢そうだなんて許し難し!成敗してくれる!」
「ぎゃーぎゃー!止めて!ボクが悪かった降参だー!……え、”ボク”?キミはそんな荒い言葉だったかい」
激痛に悶え涙と鼻水でグチャグチャになっているセシルは恐々と彼女を見上げて瞠目する。

セシルを蹴り飛ばしていた人物の髪の毛が斜めにズレていて、黒髪が覗いていた。相貌は女性だったが髪型は明らかに男子のそれだった。よくよく見れば腕と脚の筋肉が逞しく輝きやたらとゴツイ。
「伊達に16年も女装してないからな!まんまと引っ掛かってくれたぜ」
腕を組んで踏ん反り返るその人物はオフェリアに扮したアルベリック王子だった。彼が謀ったこの誘拐劇は言い訳しようがない。
だが……。

「リア……なんて勇ましいんだ!そ、そのとても素敵だよ。ボクはキミに、いや貴女様に生涯仕えます!」
なにか開いては行けない扉を開けてしまった様子のセシルだった。

「寄るな触るな!ボクは男だ!気色悪いな!下衆野郎が」違う意味で身の危険を感じた王子であった。

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