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盛大な結婚式
しおりを挟む「え、両親はこないですって?」
人生の晴れ舞台だというのにタリー二伯爵家は式に来られないと言う。曲がりなりにも娘の挙式である、参加しないなどあり得ない。
だが、モニカは「あり得る」と肩を竦めて嘆息する、オルテンシアの身代わりをさせた上に、どこまでも非常識なのかと呆れるのも疲れる。
「ご両親は不測の事態らしいですわ、その、風邪を召されたとか」
「風邪……」
子供のような言い訳をする両親に対して胡乱な思いを持たずにおられない。
気を使う侍女に「どうでも宜しいわ」と投げ槍な言い方をする、愛されていないとはわかっていたが、ここまでとは知らなかったと悲しくなった。
「あ、あの奥様」
「行きましょう、皆様が待っているわ」
ウエディングアイルを一人で歩く羽目に陥った彼女だったが、気を利かせたアルベルティ―二側の計らいでトリスタンの叔父が代行した。
「ご迷惑をおかけします」
「いいや、こんな名誉なことはないさ!ワハハハッ」
豪快に笑う御仁はトリスタンに良く似ていた、彼が年を取ったらこんな風なのかと想像したら可笑しくなった。
「うふふ」
「おや?なにかな?」
「いいえ、貴方様があまりに似ているので」
「ああ、トリスタンか!私達は良く似ているからな、性格は真逆だが、ガハハハハハッ」
「うふふふ」
厳かな雰囲気の中、緊張せずに歩けたことに叔父に感謝した。きょうこの日、モニカ側の招待客はひとりもいないはずだったが、何故か大勢の人々で埋め尽くされている。
どこまで至れり尽くせりなのかと驚愕しつつ、感謝の念が止まらない。
「ありがとうございます、私は幸せだわ」
トリスタンの脇に立ったモニカは、今日オルテンシアとして嫁ぐ。
「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰めこれを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います」
「誓います」
指輪の交換と誓いのキスを交わす、キスは頬に落とされた。
ホッとするモニカは若干気恥ずかしい。
「では、トリスタン・アルベルティ―二とモニカ・タリー二を夫婦とみなします。どうか主の祝福を」
「え……?」
その時、トリスタンが悪戯な笑みを浮かべた気がした。
「キミはモニカだ。私は他の誰でもないキミを伴侶として選んだ」
「まあ……ありがとうございます」
たった一つの彼女の矜持が認められた瞬間だった。
彼女は一粒の涙を流して、トリスタンに感謝をした。愛はないが確かに彼の妻として認められたのだ。
そして、署名にサインをする。
モニカはそこに自身の名を記せることにとても感動した。
「モニカ・アルベルティ―二、よろしく私の妻よ」
「はい、宜しくお願いします」
やがてライスシャワーとたくさんの花弁を浴びて新婦モニカは嬉しそうに微笑む。
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