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最初の村
しおりを挟む精霊神シェイドが顕現していることを知らないクラーラはとある集落を訪れていた。王都門をでた彼女はそのまま馬車が作ったと思われる轍を追っていたのだ。
彼女は冊子を取ってどうしたものかと箇条書きされたそれをなぞった。
「迷った時は冒険者ギルドへ……とはどこかしら?」
王都を離れる時に文官に渡された冊子を手掛かりにあれこれと考えた。そこには金銭の価値やら物の相場などが書かれていた。ありとあらゆる一般常識が書かれている。ようするに迷っても戻ってくるなという事だ。
「ううん、これは困ったわ……ギルドとやらの場所が書かれていないんだもの」
そこで意を決して村人に尋ねることにした、丁度目についたのは串焼きを焼いている屋台だった。何かの肉を焼いているのか怪訝な顔をして「すみません、お尋ねしたいのですが」と店主に声をかけた。
「あ?なんだい嬢ちゃん、聞きたいことがあるって?だが、ただじゃ話してやれねぇなぁ」
「……そうですか、ではこれをください」
串に刺したものをおずおずと指をさした、丁度腹も空いていたので注文してみた。
「そうこなくっちゃ!何本いる?」
「えっと、二本、いいえ五本でどうでしょう」
すると店主はいい笑顔で「毎度」といって肉を木皿にとって寄越した。銅貨というものを焦って出した、買い物するのも初めてのことなのでドキドキだ。
「はい、たしかに!で、何を聞きたいって?」
「ええ、ギルドへ行きたいのですがわかりますか?」
木皿にのった何かの肉をクンクンと嗅ぎながら彼女は尋ねる、ぐぅ~っとはしたない音がした。彼女は顔を真っ赤にして「いただきます」と食べた。
それは味わったことのない雑なものだったが、とても美味しいと思った。
「美味しい!でもなんの肉でしょう?」
「はは、そりゃ良かったコカトリスの肉だよ。おっと話がそれたな、ギルドは生憎ここにはないんだ。隣町まで馬車でいかないとな」
「なるほど、ハフハフ……その馬車とはどこから出ていますか?」
店主は南のほうを指して「あっちに乗り場がある」と教えてくれた。ここ”名もなき村”から二日ほどいった所に”ガウド”とういう街があるという。
彼女は礼を述べて南の方を目指した。
村は狭いのであっと言う間についた、乗り合い馬車と書かれた古びた乗り場が一か所ある。おずおずと尋ねるとすぐに乗るように言われた。タイミング良く出発するところらしい。
「ほう」とため息を吐いて安堵していると横合いから「良い匂いだね」と声がかかる。
「あ、ああ、宜しければどうぞ」
「え!いいの?やったー!」
木皿に乗った肉を全部渡せばその人物は「太っ腹だねぇ」と言ってあっと言う間に平らげる。人の良さそうな彼女は「リン」というらしい。
「お姉さん名前は?」
「私はクラー、ララと申します」
「そっかよろしくねララ!短い旅だけど仲良くしよ」
「はい、宜しくお願いします」
やがて馬車はガラガラと音を立てて出立した、あまりの振動に「あわわ」と声をあげてしまう。これまで乗ってきた馬車とは違い、どうにも乗り心地がよろしくない。
「ララ、良ければこれを使いなよ、幾分マシだと思う」
「あ、ありがとうございます」
座布団というものを借りて尻に敷いた、ほんとうにマシにはなったが、やはりデコボコの道は良く跳ねる。苦笑いして「馬車がこんなに跳ねるとは知りませんでした」と言う。
「ふーん、お嬢様って感じだよね、旅ははじめて?」
「ええ、実は……その家を追い出されまして」
「そうなんだ、たいへんだったね。口減らしかな世知辛いよねぇ」
どうやら誤解したらしいリンは、涙を浮かべて「逞しく生きてね」と言った。
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