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遊学篇

閑話 メロルはお姫様になりたい(イライラ注意)

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小さいころから私メロルは「姫」と呼ばれて育ったわ。
「私達の可愛い姫」といつも言ってた。

商家の両親も使用人もそう呼ぶの、それが当たり前だったから、メロルは御姫様なんだと自覚したわ。
身なりだって他の子より綺麗で、素敵なドレスは私しか着てなかった。

父様は新興商人でたった数年で大きな商会を作ったの、「成金」と時々誰かが呼ぶわ。
どういう意味かと母様に聞いたら「妬む人が父様を悪く言うの、気にしちゃダメ」と言ったわ。

そうかうちはお金持ちになったから羨ましいのね!
しかも私は御姫様、キラキラしたドレスを毎日着てるから妬むんだわ。



3歳の誕生日に貰った絵本の王子様とお姫様の物語に夢中になった。

金髪に青い目の王子、それからお姫様は自分に似ていたから大好きになった。
意地悪な魔女に騙された後、退治した王子と結婚するお話よ。

「王子様と結婚したい!」
父様におねだりをした、なんでも叶えてくれるお金持ちの父様。

「ハハハ、可愛いことを言うね。そうだねきっと王子様に会えるよ」
父様は笑ってそう言った。

だから私は、メロルはやっぱりお姫様なんだと、特別な存在なんだと誇らしかった。



5歳になった時、叔父さんが開いた私塾というのに通えと言われた。
読み書き、計算とマナーを教わると聞いた、勉強は嫌いよ。

教本を開くと目がチカチカしちゃうし、字を覚えるのが面倒だった。
近所の子もいっぱい来てて遊ぶ方が楽しい。

ある日、意地悪な子が平民は「お姫様ではない」と言った。
どうして、そんな事いうの?私は怒って理由を聞いた。

大貴族か、あの大きな城に住む人だけが王子と王女になれて、お姫様と呼ばれるのだと言った。
それじゃメロルは御姫様じゃないの?……父様達が嘘をいっていたと悲しくなった。

でも母様が「お勉強して学園へ通えば貴族に会える」そう言ったから頑張った。
貴族がなんなのか良くわからないけれど、その人のお嫁さんになれば「お姫様」なれるかもしれない。

嫌いな勉強も頑張って何とか学園へ入れた。
そして入学式に男爵の息子というトニーに声をかけられた、貴族だと言う。
「キミの家と婚約の話が出ているよ」そう言って握手してきた。


でもトニーは金髪じゃないし、目も青くなかった。王子じゃないとガッカリしたわ。
しかも下級貴族だから姫になれない。

嫌だと両親に泣きついたけど「今度ばかりは我儘は聞けない」そう父様が冷たく言った。
どうして!?

頑張ってきたのに、なにもかも無駄だった。
目の前が真っ暗になった。

それから正式に婚約が結ばれて、馴れ馴れしいトニーにイライラして2学年にあがった。
成績はギリギリアウトだったけど、父様がお金でなんとかしたと言う。
だって今更勉強なんてどうでもいいじゃない!

ところが季節が秋になったある日、本物の王子様が編入してきた!

やったわ!絵本と同じ金髪と青い目の王子よ!これは運命に違いないと確信したわ!
話しかけると優しく微笑んでくれた!

どうしよう一瞬で好きになったわ、毎日がドキドキで羽が生えたように体が軽いの!
毎日毎日、話しかけて仲良くなろうと頑張った。
でも王子は誰にでも優しいから、勘違いした女子達が邪魔にくるの。

その王子様は私の!メロルの運命の人よ!

ある日、ランチを誘いに行ったら王子の侍従達に止められた、なんで?
学食に入った王子は誰かを探してた、嬉しそうに駆け寄った相手は冷たい感じの美人だった。

隣国から来た侯爵令嬢だと皆が噂してた、二人は同じ国から遊学してきたと教師が言った。
しかも知り合い同士でマウゼオ公爵邸から一緒に通学してるらしい。

ずるい!なによそれ!
上級貴族ってことはすでにお姫様じゃないの!王子まで独り占めする気なのね。
貴族ってなんて欲張りなのかしら!


怒り狂って令嬢に文句言おうとしたら、ガラの悪い従者達に睨まれ怖くて逃げ帰った。
なにあれ?変な髪型……なんかわからないけど「ヒャッハー!」って叫びそう。

どうしようも出来なくて悶々としてたら、王子が来なくなっちゃった。
きっとあの女がなんかしたのよ!絶対に!
そういえばあの顔、絵本の魔女に似ている気もする。

腹に据えかねた私は、護衛が居ない隙を狙って食堂にいた魔女へ文句を言いに近づいたの。
「王子様を隠さないでよぉ!メロルのセインを返してぇ!」

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