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運命(さだめ)か夢物語か
しおりを挟む「はぁどうしてこんな事に、よりによって悪役……」
彼女は公爵令嬢として生を受けた、悲しい運命を背負って。
きりっといていると聞こえは良いが、吊り上がった意地悪そうな容姿はどうみても悪役だ。彼女は前世で見たゲームの世界に出てきた悪役令嬢なのだと認識した。
彼女は「バレリア・アゴスティニ公爵令嬢」第二王子カルリオン・ベルトランドの許嫁で主人公の敵である。庇護下に置かれた主人公を敵視して意地悪を繰り返すのだ。
悪辣非道とまではいかないものの、チクチクねちねちと取り巻き達に命令して卑怯な真似をするのだ。そして、最後には断罪と言うイベント起こして主人公を追い詰めるのだが、王子の側近たちによって逆に窮地に立たされる。
「はぁ、どうせならばこの世界を楽しみましょう!どう転んでも死が待っているのなら楽しんだ方が良いわ」
そう開き直った矢先、さっそくと敵のピンクゴールドの主人公とエンカウントしてしまう。
彼女の名は「セレスティナ・サリーノ」男爵令嬢で、ゴリゴリ鉄板の設定で美少女である。彼女は悟った「こりゃ勝てないわ~」と……。
儚げげで麗しいその姿を見たバレリア・アゴスティニ悪役令嬢はフッと表情を失くして「終わった」と言った。この瞬間に己の運命を受け入れたのだ。
ところが……
「ああ!夢にまで見たバレリア様!ほんとうにいたのですね!」
「はあ?貴女なにを言って」
「嬉しい!仲良くしてください!握手握手!わぁー感動!」
「ええぇ~?」
目の前のキラキラ女子は羨望の眼差しで「麗しのバレリア様」と言って感涙している、とうのバレリアは訳がわからずブンブンと握手してくる女子に振り回されている。
「ちょ、ちょっとお待ちになって…あわ、あわわわ……」
「あ、ごめんなさい!嬉しくってつい!」
「ひぃぃ!ま、眩しい!」
彼女はニコニコと微笑み目映い光を放つ、セレスティナが正ならば、バレリアは負である。敵うわけがない。
「あのう、宜しければお茶をご一緒しませんか?一般生徒のカフェですけど」
「え、……あぁ、私の名を使えば上位貴族用が使えるわ。行きましょうか」
「えええ。良いんですか!王子様でも連れて行ってくださらないのに」
どうやら庇護下にあると言っても分別はつけているようだ、そこは感心したバレリアである。
***
じつは高位貴族用のカフェには特別メニューがあり有料なのだ、それが惜しくて王子は連れてこないらしい。
「ねー、セコイですよねぇ。王子なのに」
「え、まぁそうね……そこそこ値は張るから」
カルリオン王子の思わぬクズっぷりを聞いたバレリアは急に彼の事が嫌いになった、あれほど焦がれた相手だというのに呆れたものだ。
所詮は夢物語なのだろうかとウンザリした。
「わぁ、このケーキとても綺麗!写真におさめたくなっちゃう」
「写真?……あのこの世界にはないはずだけれど」
「あ、やば……どうしよう」
急に青褪めたセレスティナはキョロキョロと見回し、「実は私はこの世界に転生しちゃったんです」と告白した。
「あの、信じられませんよね、えへへ、忘れて下さい」
「……いいえ、信じるわ。だって……」
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