上 下
1 / 13

おバカな婚約破棄

しおりを挟む
「マニエ・ラグザント!お前との婚約は破棄だ!この罪人め!」
王家主催の夜会会場で婚約破棄宣言をしたのは、第二王子サンタアスだ。


「破棄は別にいいですが、罪人とは聞き捨てなりませんわ。罪状はなんですの?」
「んな!?破棄は良いだと?」

「はい、婚約破棄は嬉しいので了承します」
「ぐぬ!なんと可愛げのない!」


バカで浮気ばかりする王子に、未練を抱く者がいるだろうかと会場のどこかで話し声がした。
”不敬だ”とバカ王子は叫んだが誰も目を合わせなかった。


痺れを切らしたマニエが促した。
「私の犯した罪とはなんですか?はやく教えてください。ちゃんと証拠はあるのでしょう?」
「もちろんだ!言い逃れが出来ない罪の証拠はここにある!」

王子はズイッとある人物を横に招いて高らかに言う。
「彼女こそが証拠にして証人である!皆の者も心して聞け!」


勝手に巻き込まれた貴族達はウンザリした顔になった。


「……チェニー、どうしてあなたが証人なの?」
「それは私が被害者だからよ」


友人チェニーが眉をハの字に下げて悲しい顔をマニエに見せた。
「どういうこと?私は貴女になにも」
「したじゃない!私とサンタアスが愛し合っているのを知りながら邪魔をしていたじゃない!」

「は?」

「私達は貴女の存在、障壁のせいでデートもままらなかったのよ!悲しかったわ、週に5度しか会えない辛さがマニエにわかって?」

ヨヨヨと泣くチェニーであるが、屁理屈にさえなってない台詞にマニエは呆れる。

「……私は殿下と茶会すらまともにしてませんけど?」
マニエがそう反論すれば。

「お前のわがままのせいで俺は意に沿わない茶会が苦痛でしかなかったのだぞ!」
今度はバカが何か言いだした。

「茶会が私の我儘?一月に一度しかないのにですか?」

「そうだ!お前との茶など美味しくない!」
「そうよ!その一回のせいで私達は会えない日が発生して悲しかったわ!」


婚約者であるマニエを差し置いて浮気してました宣言にその場の全員が目を見開いた。
しかし、両陛下は微動だにしなかった、この茶番劇を前もって知っていたのだろう。


「なるほど、そういう筋書きですのね?」
マニエは壇上にいた二人を見据えてそう言った。

陛下たちは目を逸らしてブツブツとなにか言っていたが、もはやどうでも良いとマニエは思う。
王族が仕組んだこの断罪劇は誰も口が挟めない。


「私と殿下の婚約は王家側からの申し出でした、それなのにこの仕打ち……生涯恨みますわ。覚悟はよろしくて?」
マニエは偉そうにふんぞっていた王子を中心に言葉を浴びせた。


「さぁどうぞ牢獄へ案内しなさいな」
マニエは満面の笑みを浮かべて、あらかじめ待機していた兵士たちへそう言った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

殿下へ。貴方が連れてきた相談女はどう考えても◯◯からの◯◯ですが、私は邪魔な悪女のようなので黙っておきますね

日々埋没。
恋愛
「ロゼッタが余に泣きながらすべてを告白したぞ、貴様に酷いイジメを受けていたとな! 聞くに耐えない悪行とはまさしくああいうことを言うのだろうな!」  公爵令嬢カムシールは隣国の男爵令嬢ロゼッタによる虚偽のイジメ被害証言のせいで、婚約者のルブランテ王太子から強い口調で婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚だったためカムシールは二つ返事で了承し、晴れてルブランテをロゼッタに押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って明らかに〇〇からの〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  真実に気がついていながらもあえてカムシールが黙っていたことで、ルブランテはやがて愚かな男にふさわしい憐れな最期を迎えることになり……。  ※こちらの作品は改稿作であり、元となった作品はアルファポリス様並びに他所のサイトにて別のペンネームで公開しています。

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!! 婚約破棄から幸せになる物語です。

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

私の通り名をお忘れ?婚約者破棄なんて死にたいの?

naturalsoft
恋愛
初めまして。 私はシオン・マーダー公爵令嬢です。この国の第4王子の婚約者でもあります。 そして私の趣味は礼儀を知らぬクズどもを血祭りにする事なのです♪ この国をより良い国にする為に、この手を赤く染めましょう! そう、虐殺姫(マーダープリンセス)の名の下に!

婚約破棄は計画的に。

秋月一花
恋愛
「アイリーン、貴様との婚約を――」 「破棄するのですね、かしこまりました。喜んで同意致します」  私、アイリーンは転生者だ。愛読していた恋愛小説の悪役令嬢として転生した。とはいえ、悪役令嬢らしい活躍はしていない。していないけど、原作の強制力か、パーティー会場で婚約破棄を宣言されそうになった。  ……正直こっちから願い下げだから、婚約破棄、喜んで同意致します!

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

処理中です...