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後日談

武闘大会

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季節は廻り秋となった、武芸に熱い者達が心震わせる武闘大会がいよいよ開催される。その後に文化祭が開かれるのだがそれは別の話。

「ふっふん!もちろん参加するわよ!ハンナとカーラは?」
「私は遠慮しま~す」
「私も……」

武闘大会は男女関係なく参加できるが大概は男子生徒ばかりである、血気盛んな女子は極稀であり、クリスティナはその稀な者になる。
「なんだぁつまんない。ハンナならフルーレで参加できそうだけど」
「ご冗談を……貴女みたいな豪胆さはないわ」
「あぁ、豪胆と言えば2学年のカミラ・テレジオ伯爵令嬢がいたわ」

「カミラ様?」
「ほら、あそこで素振りなさっているわ」
校庭の左端を指すカーラは「素敵ね」と言って笑う。女子には珍しい短髪をしたその人は「ふん、ふん!」とひたすらに剣を振っていた。

確かに目を引くし上背も高い、濃いオレンジ色の髪の毛が特徴的だった。一見は男子生徒と間違うほどだ。
「ふ~ん、あの方は参加なさるのかしら?」
興味を惹かれたクリスティナはさっそくとそちらに突撃していた。

「あ、待ってよ!」
「待って~」
ハンナとカーラを置いてきぼりにしてクリスティナは「こんにちは!」とやっていた。急に声をかけられたカミラは驚いて「なにごと?」とキョトリとしていた。

「私はクリスティナといいます!よろしく!」
ハキハキと喋る彼女に「ああ、アズナブール王女殿下ですね」とにっこり微笑んだ。

「あら、私の事を御存じで?」
「ふふふ、知らない人の方が少ないです、王女殿下」
彼女は騎士の礼を取り跪くと、クリスティナの手に唇を落としたではないか。

「ま、まぁ……なんて素敵」
クリスティナは同性だというのにドキドキしてしまう、それほどに紳士然としていてカミラは凛としていた。
「貴女は武闘大会に出場されるのかしら?」
「はい!もちろんです、昨年は事情があり参加しておりませんが今年こそは優勝狙いです!」
「す、素敵……」


目をハート型にしそうな勢いで語り合う二人の元に、アルフォイ・ロッシーニがやってきた。
「なんの話をしているの?ふたりはどういう関係?」
「え?ついさっき会ったばかりよ」
「そ、そうか」

明かに牽制している彼に可笑しくなったハンナとカーラは「クスクス」と笑ってしまう。彼女に恋心を抱いていることに気が付いたのは二人だけだ。

「とにかく私は武闘会に参加するよ、キミは?」
「私もですぅ!一緒に頑張りましょうね」
すっかり打ち解けたらしい二人はタメ口を許してしまっていた。それを見たアルフォイは焦りだす。

「わ、私も参加するぞ!絶対にだ!」
「あ~うん、参加すれば良いんじゃない?」
いまいちな反応のクリスティナにアルフォイは「ぐぬぬ」と歯噛みするのだ。

***

それからというもの、足繁くカミラの元へ行くクリスティナの姿が見られた。彼女は恋慕というよりも憧れを抱いているのだが、誤解をしたアルフォイは気が気ではない。

「そう、もっと踏み込んでごらんよ」
「うん、わかったわカミラ!」
剣筋が良いと褒められた彼女は嬉しくなってガシャガシャと剣を揮う、もちろん模造刀であるが中々な迫力だ。

「ふう、良い感じじゃないか。もう立派なライバルだよ」
「えへへ、ありがとう~」
二人は休憩しながら談笑していた、それを羨望の眼差しで見つめるのはアルフォイだ。

「うぅ……ふたりは何の話をしているのだ?」
そんな様子を伺っていたハンナは意地悪い笑顔を見せて彼に話しかける。

「ねぇ、そんなに気になるのぉ?可愛い所あるじゃない」
「え!うわぁ!だ、誰が!」
ニコニコと笑うハンナとドキマギするアルフォイの図はなかなかに面白い。

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