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しおりを挟む「貴方って紳士倶楽部に出入りしていた頃はカッコ良かったのに!なんでそんな真面目になってるのよ可笑しいわ!飄々として面白いところが魅力だったのに!ガッカリさせないで!」
鼻息荒く捲し立てる彼女はただの悪鬼のように見えた。
「なんてことを言うんだ、成績が振るわないなら勉強しろよ!そっちのほうが遥かに真っ当じゃないか」
「ほらぁ!つまらないことを言う、どうしてそんな普通になっちゃったのよ!」
成績を買う買わないで押し問答になったふたりはギャアギャアと騒ぐ。
さすがに人目を引いたのか「何事だ」と人だかりが出来た。
拙いと思ったヴァンナは一目散に逃げた、そんな彼女を追おうとしたテリウスだったが、ウーゴが走りだしてきて彼女の後を追う。
「なんなんだよ、くそぉ!」
そこへ思ってもみない声がかかった。
「何事なの、騒々しいわね」
「っ!アリーチャ様、これは……」
「しっ!いまは”様”づけは拙いでしょう?しっかりしてよね」
「う、アリーチャ……彼女が成績を買いたいといってきて、それを断ったらつまらない男だと」
それを聞いた彼女は呆れた顔をする、買収は貴族の間で問題になっていた。表沙汰にはなっていないが確かにそのような慣習がある。
「少し話しましょうか、付いてきて」
ところ変わって生徒会室でふたりは話し合う、彼女は紅茶を淹れながら話をする。
「悪いわね、次の授業は諦めて頂戴」
「いいえ、成績には響くものではないし」
マナーレッスンの授業だったのは幸運だった、貴族特有の授業は成績には響かない。彼は黙って供された紅茶をひと啜りした。
「彼女はやはり卒業パーティでやらかすようね、いくつか証拠を捏造しているわ。困った事ね」
「はい、そのようです。俺も手伝わされました、ドレスにインクを零したり」
「うん、順調じゃない?紋章まで持ち出すとは思わなかったけど」
彼女苦笑してそう言った、それを聞かされたテリウスは「やり過ぎだ」と怒る。
「ウーゴという青年が絡んでいるようなの、何か知っている?」
「……はい、最近は彼女、ヴァンナのお気に入りで彼女を崇拝しています。どこでどう会ったかまでは知りません」
「そう」
アリーチャはかつて家同士が取引していたことを話した。その際に使用したと思われる古い手紙を悪用されたのだと告白した。
「ずいぶんと卑怯な……いや、俺が言えた義理ではないですが」
彼は自重してそう答えた、それはかつて彼が悪巧みしていた頃の同一人物とは思えないものだ。
「だいぶ変わったわね貴方、喜ばしいことなのでしょうけど」
「いや、はは、お恥ずかしい」
「でもダメよ、貴方らしくないじゃない、私が欲しいのは以前の駄目な男なのだらしのないね」
「そう言いますと?」
怪訝な顔でテリウスは彼女を見つめた、真面目とは言わないが彼は以前より大分丸くなっている。すると彼女は悪い顔をしてこう言った。
「彼女の望みを叶えてあげてよ、もちろん資金は私が持つわ」
「ええ!?ど、どうして?」
「だって面白いじゃない金で雇われた教師たちを一網打尽にするチャンスだわ!オーホホホホッ!」
「なんてこった、ここにも悪い女がいたよ」
彼は肩を竦めて彼女の悪巧みに乗ったのだ。
――――。
「ええ、本当!?本当にいいの?」
「ああ、ほんとうさ、実は御手当てが割と多めに貰えてね。資金が足りないようなら言って欲しい、ただし領収書を貰う事」
「え、領収書?裏金を出すのにおかしくなぁい?」
ヴァンナは成績を買う目的で金をばら撒くというのに疑問に思う、訝しい目をする彼女にこう言い足した。
「なにも本当に領収書を書いて貰わなくても良いんだ。例えば『願いは聞き届けた金貨10枚』みたいな感じでね」
「ああ、なるほどね!」
「そうだよ、いくら買収したからと金だけ受け取って後は知らんぷりは困るだろ?」
「そうよね!そうだわ頭が良いわテリー!でも、どうして急に変わったの?あんなに否定してたのに」
まだ疑問が残るのかヴァンナは詰め寄る、すると彼は笑ってこう言った。
「だってつまらないことを言うのは駄目だって言われたからね、俺は飄々としてたほうがカッコ良いんだろ?」
「そ、そうよ!その通り!さすが私のテリーだわ」
彼女は彼に抱き着いて「だ~い好きよ」と言ったのだ。
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