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反省したカメリア

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「ああ!私ったらなんてことをしてきたのかしら?」
姉から奪ったドレスと宝石類、しかも先ほどは婚約者を譲れだなんて言おうとした己を信じられなかった。

姉ルアナの婚約者はアドニス・グラハード王太子である、それを軽々しく欲したのだ。あり得ない事だと彼女は青褪める。

「お姉様は王家に所望されて嫁ぐのよね、それを奪おうなんてとんでもないことだわ、それに……」
アドニス王太子はちょっとオツムが緩い人である、それを御せるのは姉だけだ。改めて反省したカメリアはただ見目の良いだけの王太子を犬猫のように譲れと言おうとした事を恥じた。



「ごめんなさい、お姉様。これまでの事を謝ります」
着古したドレスはともかくとして強奪してきた宝石を彼女は返した、その中にはルアナの母ルイーゼの形見も含まれている。ルアナはそっとそれを手に取り涙を流す。

「いったいどうしたと言うの?」
「私はこれまでの事を反省したのです……まだ信じて下さらないでしょうけど」
「……えぇ、そうね。俄かに信じ難いことだわ」

それを聞いたカメリアは俯いて「ごめんなさい」と零した。疑心暗鬼なルアナはその様子をただ黙って見守る。

「ねぇ、貴女が反省しているのならば、私にチョッカイを掛けるのは止めるのよね?これまで私はこの家に身の置き場が無かったわ、とても悔しい思いをしてきたの」
「もちろんです!敢えて距離を取ります、私のせいで叱られるようなことはしません!」
「まぁ……」

カメリアの変わり様に驚いた姉は胡散臭いものを見る目をした、やはりすぐには信じてくれないようだ。それだけの事をしてきたのだと彼女は猛省するのであった。



***


翌日、公爵家の馬車が揺れていた。ルアナとカメリアを乗せて王都学園へ向かっているのだ。さすがに朝出る馬車は共有するほかない。

カメリアは馬車内で縮こまり車窓を見るフリをした、姉の方は見ないようにと彼女なりの配慮だ。
「……はぁ、そこまで徹底しなくとも良いわよ。肩が凝るでしょう」
「え!はい、ありがとうございます姉様」

終始委縮しているカメリアの様子を見た侍女がルアナを睨んでいた。公爵家では主人たちが贔屓するカメリアが絶対的存在なのだ。その侍女の態度にカメリアは怒った。

「いま貴女、お姉様を睨んだわね!許せないことだわ!」
「え?あの……カメリア様?」
思わぬ叱責を食らった侍女は途端に青褪めて「申し訳ございません」と謝罪を口にする。

「お姉様は何もしていないわ、良くって?もし余計な事を母に言いつけたら只じゃおかないから!」
語気強めにそう宣う彼女を見てルアナと侍女は更に驚く。

「いったい貴女どうしたと言うの?」狼狽する姉は扇を広げて彼女を見た。
「いいんですお姉様!貴女はいつも正しいのですもの」
「は、はあ?」

姉第一になってしまったカメリアはルアナを敬うように頭を垂れた。




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