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真名を隠して

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彼女、もとい彼リモーネはヴォルモスターという妖狐の国の第五王子だという。

国とは言っても国家として人間側は認めていない、もちろん交流などあり得ない。異形の化物として敵視している。
仮に彼らが接触してきたとしても、討伐の対象にされるのみだ。


「ボクの国で開いた催事の夜会で、リザードマンの王子に目を付けられて逃げたんだ」
「リザードって……ワンパラン国のか?」


確認するとリモーネが頷いた、陰湿でねちこい種族といわれるリザードマンの王子だと聞いて彼はウンザリする。

「なんで狙われてる?」
「……番なんだって言い張ってるのさ、ボクは男なのに。バカみたいでしょ?」
「女装なんてしてるからだ、阿呆」

「ぐぬ!」
「マッパになって証明すりゃ良いだろうが」


ダライアスが投げ槍で正論を言ったが、リモーネは顔を真っ赤にして反論した。
「……たもん」
「なに?」

「目の前で見せたよ!ダラにやったようにね!なのにアイツこう言ったんだ!『呪法で性転換するから問題ない』って!ボクは気持ち悪くて即逃げたね!逃げても逃げても追ってきて!終いには魔獣化してまで逃げたんだよ!魔獣の姿になるとなかなか戻らなくて大変なんだ!」


「そして魔獣の森で追い詰められた……と?」
リモーネはコクリと頷いて続ける。真名を教えられないのは口にした途端に居場所が即バレするからだという。

「王子がボクの真名に呪いをかけたんだ……どこに隠れてもすぐ発見できるようにね」


森にいた時はついウッカリ、寝言で真名を呟いたらしいのだ。
「それじゃお前、魔獣の森に長く居られないじゃないか?」

「いままで一つ所に留まったことないから裏をかけたと思う、それにダラの所は認識疎外の結界が張ってあるから」

「へ?そんなもん付いてねぇぞ?」
「付いてるよ!」

「「はぁ?」」


どうでもいいハモリに二人は噴き出した。


「とにかくねボクは嘘ついてないよ、これでも魔法には自信あるんだ。知識だって上級魔導士に負けないから、お陰で2年も逃げおおせてるんだ」

「に、二年!?おまえ一体いくつだよ!」

リモーネの見た目年齢はどうみても13くらいだ、童顔で華奢な彼は適齢期には程遠い。

「……これでも18歳だし」
「嘘つけ!」

「ほんとだもん!」
「信じねぇ!」


「「はぁ!?」」


またもハモりもういいとお互い匙を投げ合った。



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