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しおりを挟む「その話は確かなのか?」
「ああ、そうだよ、大出世だな~羨ましい!」
情報が錯綜していたがサビーナ・アレオン大佐の近衛騎士団入りは確実だろうと噂された。主な仕事はアレクサンドル・メイヤゼント王子の護衛である。直接な指名を受けたのだと皆はその話で持ち切りだ。だが、その噂を信じない輩が少なからずいた。
「はあ?サビーナが近衛だと、はっ!馬鹿な、いくら強くたって早々入隊できるものか!」
「そうよねぇ、なんたって一部の許された花形だもの。あんな地味女が入れるわけがないのよ」
アランとナタリーは下卑た笑顔でその噂を一蹴した、誰がなんと言おうがあり得ないと言う。それもそのはず掲示板には何も貼られていない。
どのようなことでも昇進昇格の人事異動の辞令は発表されるのが当たり前だからだ。
そうしてアランは鼻で笑うのだ。「あり得ない」と。
そこに上官が入室してきて一気に緊張が走る、彼もまた居住まいを正す。
「皆、先の討伐はごくろうであった。ところで、異例のことだが人事の異動が発表された、急なことだったので貼り出されていない」
「なっ!?」
すると上官がドアの向こう側へ向かい敬礼を始めた。皆もそれに倣う、ゆっくりとその人物が入室してきた。アレクサンドル第二王子のお出ましに一瞬ざわつく。
「みなもの急な訪問で悪いな、この度サビーナ・アレオンが大佐改め少将となった事をここに発表する。さぁ、来てくれないか」
数分遅れて入ってきたサビーナは少将の証である緋色の勲章を胸につけて歩いて来た。堂々たるその居住まいに一同気圧された。
「私、サビーナ・アレオン謹んでお受けいたします」
「うん、先日の討伐は実に見事だったと聞く。今後も変わらず活躍を期待するぞ」
「はい!」
***
異例の発表からすぐに一時解散となった魔法師団はサビーナの昇進の話で盛り上がる。近衛に入り少将となった彼女は雲の上の人になった。迂闊に口も利けない相手になったのだ。
「くそう!どうしてアイツばかりが……俺だって」
苛立ちと焦りで苦悶の表情を浮かべるアランはミシミシと音を立てて机を破壊した。それを見ていた同僚たちが「支給品を粗末にするな」と苦言を言う。
「煩いな!どうでも良いだろう、机の一つ二つ!」
その時、身に着けていたアンクレットがパリンと音をたて色を失くした、バフ掛けされていた効果が薄らいだのだ。後、数回ほどでその機能は失われる。
「なんだ?あぁ……アイツがくれたアンクレットか。忘れていた」
淡く光っていたはずだとその時思った、どうしてだろうとアランは首を傾げる。
「皆、召集命令だ!東の森に魔物の軍団が現れたぞ、アンデット系と見られる。気を引き締めろ」
騎士団との合同のもと正攻として立ち向かうことになる。
「へ、ここらで本腰をいれるぜ!次の昇進は俺だ!」
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