今更「謝るから」と言われましても

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ガイ視点


憲兵に捕縛された俺は、10日間留置された。
騎士団の独房の方がずっとマシだと思う酷い扱いを受けた。

留置所は変なヤツと同じ部屋で過ごさなければならなかった。
ゴロツキや窃盗犯だと思う、目付きが凄く悪い。

冷たい石畳で居心地も最悪だというのに、ゴザさえない。

食事は具も味も無いスープとカチカチの黒パンが出されたけど、全部ほかのヤツに食べられて餓死しそうだった。
窶れて倒れてた俺を見かねた看守が水をくれたからなんとか生きてられた。


ほんのちょっと暴れただけなのに、相手が貴族だっていうだけでこんな所に入れて酷いよ！
相手の身分を知らなかったんだから仕方ないだろう？


暴言と暴力自体が悪いと取調官に怒鳴られた、そんなのはわかってるさ！意地悪だな！
それから謝罪もしていないことも指摘された、なんだよそんな暇はなかったじゃないか！


そして10日後に騎士団から迎えがやって来た。
やっと解放されて安堵した、さっそく寮に戻って美味しいご飯を食べようと俺は笑みを浮かべた。


だけどご飯の前に騎士団の取り調べがあるって再び手錠をかけられた。
なんで！？憲兵に散々怒鳴られ調書は済んだはずだろう？


聞けば留置所ではパン屋と貴族への件だけだったらしい。
え、どういうこと？


ま、まさか……あのディーンは本当にクレイブ副団長だったのか！？
待ってくれよ、全然顔が違ったじゃないか！

俺が知ってる副団長はボサボサ頭で薄汚い髭のオッサンだぞ！
あんなイケメンなんて知らない！


調書を取る前にそう喚いていたら、パン屋で会ったディーンが隊服を着て取調室に現れた。
上等な生地の隊服には階級章とたくさんの勲章がビッシリ付いていた。


ああ、俺は……やらかしてしまったのだと漸く思い知った。

彼が己の名を名乗りと役職を告げた時、素直に受け入れ従っていれば……。
目の前の武官が罪状を読み上げるが、ショックで耳に入ってこない、ボンヤリしていたら右頬に痛みが走った。

直属の上司である隊長に殴られたんだ。
あまりに痛くて泣いてしまった、口内から鉄臭い匂いがする。奥歯が折れたみたいだ。


連帯責任で隊長は降格と減給を言い渡されて頭を下げていた。

次いで俺の処分が言い渡された。


【懲戒解雇】


夢だった騎士への道が断たれて、頭が真っ白になった。

今月はろくに働いてないから給与はでない、退職金もない。
もともと民兵だ、仮に貰えても雀の涙だったろう。



寮にあった僅かな持ち物を総務窓口で受け取った、なんだか多い気がして聞いたら先月にアネリが持ってきていた荷物だと言われた、なんだよ……今頃渡されても……。


ああぁアネリ！ごめんよ！俺の荷物を大事にしてくれてたんだな！

キミが怒るのはもっともさ、ひと月も放置していてすまなかったよ！
俺はなんて果報者だろう！

もう一度やり直そう！
今度こそふたりでがんばって夫婦になるんだ！

いまは文無しだけど、きっときっと幸せにするさ！幸せになれるよ！
だから俺を受け入れろ！

お前は俺の者だから、お前の稼ぎは俺のもの、ハハハハハッ！

幸せになるために稼ぎは全部寄越すんだ！
そのうち俺も働いてやるからさぁ？


なぁ、いいだろう。俺のアネリ。