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フェインゼロス帝国篇
それは不明瞭なもの
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ガルディと束の間の再会を果たしたレオは、微細ながらとある知識を伝えるべきが苦悩していた。
これまでも異世界にない知識を小出しにしてきたが、ほぼ無影響なものばかりだった。
別れ際に何か言いたげなレオの様子に「独り言程度なら聞いてやる」とガルディは囁く。
「……この国に限らず宝石類の価値は高いのか?」
「ものによるだろう、希少ならとうぜん値がはる」
それを聞いたレオは眉間に皺を寄せて「場所を移そう」と客室を借りることにした。
護衛さえ遠ざけて入った部屋で若き王は困惑する。
「ずいぶん勿体ぶるじゃないか」
いつもと違う雰囲気のレオに少々戸惑うガルディだ。
「まぁな、俺個人はまったく興味がないことだけど、宝飾業界の営利に影響することだからな」
「どういうことだ?」
「例えばクズ石が魔石どころか見事な宝石になったらどうする?」
「そりゃ……お前……。市場が大騒ぎだな」
「これから俺が口にするのは希少価値が上下する可能性がある技術の話なんだ」
レオは前世でえた知識の一部を話して聞かせた。
俄かに信じがたい製法を聞いたガルディは「それが本当ならえらいことだ」と言った。
「注意して欲しいのは素人知識だということさ」
「あぁその前提は理解した、確かにその方法で魔石の精製や人造しているとしたら脅威だな。帝国はなんらかの手でその製法を得たのだろうか……」
ガルディはしばし長考した後にレオを見た。
「お前は一体何者だ?素人知識とは言ったが昨日今日突然閃いた知識ではなかろう?」
「あぁ……」
ずっと隠してきたことを告白する機会だと思ったレオは打ち明ける。
「実は俺は……」
レオは生前の世界のことをゆっくり吐露し始めた。
***
「どえらい事だ、聞かなきゃ良かったぞ」
王であり悪友のガルディは額に手を当てて頭を振る。
「そのお前の生きていた異世界とは、この世界の文明を軽く凌駕するものばかりなのだな?」
「あぁ、そうさ。魔法がないぶん発展したという感じだな。信じてくれるんだな」
突飛も無い話をガルディは信じると言う。
だがしかし、ガルディは青くなったり赤くなったりと顔色が忙しい。
『顔面が煩い』とレオが言うと『お前のせいだ』とツッコミ返す。
「ふむ、前世の文明とやらの再現はほぼ不可能だろうな、しかし不確かな知識ではあるが我が国の宝飾品技術が向上すると思えば悪くない」
「失敗することも多いと念頭におけよ?」
もちろんだ、とガルディは答えて、試す価値は十分だと意気込んでいた。
そんな彼を見て『欲で目が曇らないようにな』と諌言するのも忘れない。
「手に余る力は身を亡ぼす、友の諌言は無駄にしないさ」王は自らを戒めるようにそう言った。
石の性質などロクに知らない素人のレオであるが、熱処理で宝石の色を変化させるという方法を朧げに覚えていた。
「詳細はさすがに忘れたけど、採掘場で価値のない石を炉で火入れしたら変化したのを見たんだ圧力をかける方法もあったな」
「見たとはどこで?鉱山か?」
「テレビ番組だよ」
「なんだそれは?」
なんだと言われてもとレオはどう伝えれば正解なのかわからない。
カメラの連写技術を応用し映像化して、通信魔道具で世界中に公開するようなものと教えたが「サッパリわからない」とガルディは渋面になっただけだった。
「俺だってどういう原理でなんて知らないっつーの!」
レオとの対話の後に、秘密裡に地質学者らが召集されクズ石の研究が開始された。
ヒントは得たがそれは困難な作業だった。
高熱処理を施すとは聞いても、溶鉱炉で鉄を溶かすのとはわけが違うということだ。
「こんな技術を帝国は極めたということか」テトラビスの学者達は愚痴を吐くのが増えていく。
敵国の技術を探らせたほうが早いという意見もでたが、それはガルディ王のよって却下される。
「姑息な盗人帝国の真似事をするなど矜持はないのか」と怒号が飛んだ。
叱咤激励を受けた研究員は奮い立ち、独自の製法を一つだけ確立させたのは半年後のことだった。
「クズ石粉末から再結晶化させるとは……大儀であった」
「有難きお言葉でございます」
それは美しい光沢を持つ魔石だった。秋空のように澄んだ青色に煌めくそれは王を魅了する。
「まさに青い天使……なんと見事なものだ、もとは薄汚い灰色だというのに」
それまでテトラビスには魔石の採掘がされた記録がない、廃棄されていたクズ石が宝にバケた瞬間だった。
クズ石から生まれた魔石はテトラブルーと名がついた。
後に副産物で人造ダイヤが造られたが、工業にのみ用いた。
*観賞用魚(ブルーテトラ)とは違います。架空です。
これまでも異世界にない知識を小出しにしてきたが、ほぼ無影響なものばかりだった。
別れ際に何か言いたげなレオの様子に「独り言程度なら聞いてやる」とガルディは囁く。
「……この国に限らず宝石類の価値は高いのか?」
「ものによるだろう、希少ならとうぜん値がはる」
それを聞いたレオは眉間に皺を寄せて「場所を移そう」と客室を借りることにした。
護衛さえ遠ざけて入った部屋で若き王は困惑する。
「ずいぶん勿体ぶるじゃないか」
いつもと違う雰囲気のレオに少々戸惑うガルディだ。
「まぁな、俺個人はまったく興味がないことだけど、宝飾業界の営利に影響することだからな」
「どういうことだ?」
「例えばクズ石が魔石どころか見事な宝石になったらどうする?」
「そりゃ……お前……。市場が大騒ぎだな」
「これから俺が口にするのは希少価値が上下する可能性がある技術の話なんだ」
レオは前世でえた知識の一部を話して聞かせた。
俄かに信じがたい製法を聞いたガルディは「それが本当ならえらいことだ」と言った。
「注意して欲しいのは素人知識だということさ」
「あぁその前提は理解した、確かにその方法で魔石の精製や人造しているとしたら脅威だな。帝国はなんらかの手でその製法を得たのだろうか……」
ガルディはしばし長考した後にレオを見た。
「お前は一体何者だ?素人知識とは言ったが昨日今日突然閃いた知識ではなかろう?」
「あぁ……」
ずっと隠してきたことを告白する機会だと思ったレオは打ち明ける。
「実は俺は……」
レオは生前の世界のことをゆっくり吐露し始めた。
***
「どえらい事だ、聞かなきゃ良かったぞ」
王であり悪友のガルディは額に手を当てて頭を振る。
「そのお前の生きていた異世界とは、この世界の文明を軽く凌駕するものばかりなのだな?」
「あぁ、そうさ。魔法がないぶん発展したという感じだな。信じてくれるんだな」
突飛も無い話をガルディは信じると言う。
だがしかし、ガルディは青くなったり赤くなったりと顔色が忙しい。
『顔面が煩い』とレオが言うと『お前のせいだ』とツッコミ返す。
「ふむ、前世の文明とやらの再現はほぼ不可能だろうな、しかし不確かな知識ではあるが我が国の宝飾品技術が向上すると思えば悪くない」
「失敗することも多いと念頭におけよ?」
もちろんだ、とガルディは答えて、試す価値は十分だと意気込んでいた。
そんな彼を見て『欲で目が曇らないようにな』と諌言するのも忘れない。
「手に余る力は身を亡ぼす、友の諌言は無駄にしないさ」王は自らを戒めるようにそう言った。
石の性質などロクに知らない素人のレオであるが、熱処理で宝石の色を変化させるという方法を朧げに覚えていた。
「詳細はさすがに忘れたけど、採掘場で価値のない石を炉で火入れしたら変化したのを見たんだ圧力をかける方法もあったな」
「見たとはどこで?鉱山か?」
「テレビ番組だよ」
「なんだそれは?」
なんだと言われてもとレオはどう伝えれば正解なのかわからない。
カメラの連写技術を応用し映像化して、通信魔道具で世界中に公開するようなものと教えたが「サッパリわからない」とガルディは渋面になっただけだった。
「俺だってどういう原理でなんて知らないっつーの!」
レオとの対話の後に、秘密裡に地質学者らが召集されクズ石の研究が開始された。
ヒントは得たがそれは困難な作業だった。
高熱処理を施すとは聞いても、溶鉱炉で鉄を溶かすのとはわけが違うということだ。
「こんな技術を帝国は極めたということか」テトラビスの学者達は愚痴を吐くのが増えていく。
敵国の技術を探らせたほうが早いという意見もでたが、それはガルディ王のよって却下される。
「姑息な盗人帝国の真似事をするなど矜持はないのか」と怒号が飛んだ。
叱咤激励を受けた研究員は奮い立ち、独自の製法を一つだけ確立させたのは半年後のことだった。
「クズ石粉末から再結晶化させるとは……大儀であった」
「有難きお言葉でございます」
それは美しい光沢を持つ魔石だった。秋空のように澄んだ青色に煌めくそれは王を魅了する。
「まさに青い天使……なんと見事なものだ、もとは薄汚い灰色だというのに」
それまでテトラビスには魔石の採掘がされた記録がない、廃棄されていたクズ石が宝にバケた瞬間だった。
クズ石から生まれた魔石はテトラブルーと名がついた。
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