公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
131 / 172
フェインゼロス帝国篇

それは不明瞭なもの

しおりを挟む
ガルディと束の間の再会を果たしたレオは、微細ながらとある知識を伝えるべきが苦悩していた。
これまでも異世界にない知識を小出しにしてきたが、ほぼ無影響なものばかりだった。


別れ際に何か言いたげなレオの様子に「独り言程度なら聞いてやる」とガルディは囁く。
「……この国に限らず宝石類の価値は高いのか?」
「ものによるだろう、希少ならとうぜん値がはる」


それを聞いたレオは眉間に皺を寄せて「場所を移そう」と客室を借りることにした。


護衛さえ遠ざけて入った部屋で若き王は困惑する。
「ずいぶん勿体ぶるじゃないか」
いつもと違う雰囲気のレオに少々戸惑うガルディだ。


「まぁな、俺個人はまったく興味がないことだけど、宝飾業界の営利に影響することだからな」
「どういうことだ?」


「例えばクズ石が魔石どころか見事な宝石になったらどうする?」
「そりゃ……お前……。市場が大騒ぎだな」


「これから俺が口にするのは希少価値が上下する可能性がある技術の話なんだ」
レオは前世でえた知識の一部を話して聞かせた。


俄かに信じがたい製法を聞いたガルディは「それが本当ならえらいことだ」と言った。
「注意して欲しいのは素人知識だということさ」

「あぁその前提は理解した、確かにその方法で魔石の精製や人造しているとしたら脅威だな。帝国はなんらかの手でその製法を得たのだろうか……」
ガルディはしばし長考した後にレオを見た。


「お前は一体何者だ?素人知識とは言ったが昨日今日突然閃いた知識ではなかろう?」
「あぁ……」



ずっと隠してきたことを告白する機会だと思ったレオは打ち明ける。

「実は俺は……」
レオは生前の世界のことをゆっくり吐露し始めた。

***

「どえらい事だ、聞かなきゃ良かったぞ」
王であり悪友のガルディは額に手を当ててかぶりを振る。


「そのお前の生きていた異世界とは、この世界の文明を軽く凌駕するものばかりなのだな?」
「あぁ、そうさ。魔法がないぶん発展したという感じだな。信じてくれるんだな」

突飛も無い話をガルディは信じると言う。


だがしかし、ガルディは青くなったり赤くなったりと顔色が忙しい。
『顔面が煩い』とレオが言うと『お前のせいだ』とツッコミ返す。

「ふむ、前世の文明とやらの再現はほぼ不可能だろうな、しかし不確かな知識ではあるが我が国の宝飾品技術が向上すると思えば悪くない」
「失敗することも多いと念頭におけよ?」

もちろんだ、とガルディは答えて、試す価値は十分だと意気込んでいた。
そんな彼を見て『欲で目が曇らないようにな』と諌言するのも忘れない。


「手に余る力は身を亡ぼす、友の諌言は無駄にしないさ」王は自らを戒めるようにそう言った。


石の性質などロクに知らない素人のレオであるが、熱処理で宝石の色を変化させるという方法を朧げに覚えていた。

「詳細はさすがに忘れたけど、採掘場で価値のない石を炉で火入れしたら変化したのを見たんだ圧力をかける方法もあったな」
「見たとはどこで?鉱山か?」

「テレビ番組だよ」
「なんだそれは?」

なんだと言われてもとレオはどう伝えれば正解なのかわからない。

カメラの連写技術を応用し映像化して、通信魔道具で世界中に公開するようなものと教えたが「サッパリわからない」とガルディは渋面になっただけだった。

「俺だってどういう原理でなんて知らないっつーの!」




レオとの対話の後に、秘密裡に地質学者らが召集されクズ石の研究が開始された。
ヒントは得たがそれは困難な作業だった。
高熱処理を施すとは聞いても、溶鉱炉で鉄を溶かすのとはわけが違うということだ。


「こんな技術を帝国は極めたということか」テトラビスの学者達は愚痴を吐くのが増えていく。
敵国の技術を探らせたほうが早いという意見もでたが、それはガルディ王のよって却下される。


「姑息な盗人帝国の真似事をするなど矜持はないのか」と怒号が飛んだ。
叱咤激励を受けた研究員は奮い立ち、独自の製法を一つだけ確立させたのは半年後のことだった。


「クズ石粉末から再結晶化させるとは……大儀であった」
「有難きお言葉でございます」


それは美しい光沢を持つ魔石だった。秋空のように澄んだ青色に煌めくそれは王を魅了する。
「まさに青い天使……なんと見事なものだ、もとは薄汚い灰色だというのに」

それまでテトラビスには魔石の採掘がされた記録がない、廃棄されていたクズ石が宝にバケた瞬間だった。
クズ石から生まれた魔石はテトラブルーと名がついた。

後に副産物で人造ダイヤが造られたが、工業にのみ用いた。




*観賞用魚(ブルーテトラ)とは違います。架空です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...