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トラブルプランツ スタンピード篇
スプーンドーナツと珍客
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内乱騒動の渦中に関わることなく、レオ達は郊外へ退避していた。
今回の件は内外関係なく、王直属の配下のみ参戦という御触れが出ていたからだ。
ギルドも兵を招集することがなかった、スタンピードの直後とあり冒険者も疲弊しているからだと当初は思っていた。
外国人であるレオは当然関わるわけにもいかないが、なんとも腑に落ちないとフラウットは思った。
いつになく深刻な顔のフラに皆は気を遣う。
退避していた場所は小さな田舎町で、僅かにあった宿は王都から逃げていた人々であっという間に埋まってしまった。
なのでまたも馬車暮らしに戻ったところだ。
なんとなく気分が沈んでしまう一行、そこで気晴らしにとレオはオヤツを作ることにした。
「キャンプでも作れるお手軽お菓子といくか」
ボウルに適当に小麦粉を入れ、卵と砂糖、ベーキングパウダーを混ぜる。
ボッタリとした生地ができたらスプーンを用意。
石を詰んだだけの竈に小さな鍋を置いて油を満たす。
竈に火をつけて油に気泡がでるのをしばし待った。
チョッピリ垂らした生地がジュワッと泡を立てて転がる。
「うん、良い頃合いだ」
レオはそういうと楽しそうにスプーンで掬った生地を躊躇いなくどんどん落としていった。
「わぁ、ちょっぴりの量なのに随分膨れるのですね」
いつの間にか側に来ていたティルが、揚がっていく白い生地を面白そうに見物していた。
「うん、我が家自慢のスプーンドーナツだよ。簡単にできてお腹いっぱいになるオヤツさ」
きつね色になったそれをひょいひょい掬い上げて油切りをする。
そこへ濃い目のメープルシロップと粉砂糖で作ったアイシングを適度にかけた。
「カリカリサクサクのドーナツの出来上がり!」
レオの声に不機嫌そうだったフラも笑みを浮かべて飛びついた。
大皿に山盛りした小さく不格好なドーナツから、甘く香ばしい匂いがたち食欲を刺激してくる。
「このオマケについたシッポみたいのがカリカリで美味しいんだぞ!」
まるでネズミの尻尾のようだと言いながら皆はホフホフと食らいつく。
「この蜜が良い香りでたまんない!」
「やばーい!止まんない!太っちゃうよ!でも食べる!」
バリラとジェイラが競うように頬張って、顔をアイシングでベタベタに汚していた。
フラはマイペースにサクサクと食んで顔を綻ばせる。
「フラ、美味しいかい?」
「うん、美味しいよォ、クフフフッ」
やけにハスキーな声を出すフラにびっくりしたレオ。
それ以上に驚いていたのはフラの方だった。
「え?なに、フラのかわりに返事したの誰?」
見回すと見知らぬ細身の男が黒い皮膜を広げて浮遊し、ドーナツを勝手に食べていた。
「クフ、さすが獅子王が認めた男の料理だねェ。気に入ったよ」
「は……い?」
パサリと被膜の翼を閉じて真っ黒な人物が下りてきて名乗った。
「初めましてェ、諜報活動を生業にしておりますモルティガと申しますゥ。お見知りおきを~」
間延びした言動の珍客に一同は瞠目した。
紅い瞳を細くしてモルティガなる人物はレオに詰め寄るとガバッと手を握った。
レオは悲鳴を上げて彼から飛び退いた。
「えぇ~酷いなァ親しくなりたいだけですよ?」
「得体の知れない男と仲良くする趣味はない!」
警戒されて嫌悪を見せられても男は飄々と気にする様子もない。
「ちょっと聞いてる?」
「ふむ、ドーナツとやらは美味しいですが、やはりフルーツが一番美味しいですねェ、たまに樹液や血も飲みますが」
「……」
レオの様子をガン無視した男は翼をマントに変化させてパサリと翻す。その様は……
「吸血鬼……」思わず口に出したレオ。
「おやァ、その名で呼ばれるのは久しぶりです。ですが、正確には蝙蝠男ですよォ♪」
「あ、そう……あの離れてくれません?」
距離感がおかしい蝙蝠男は油断するとすぐに側にやってくる、レオは気味悪がって逃げ回った。
「はぁ……ところでなんの御用で?」
「あ、ウッカリウッカリ!王命でやってきたのでしたァ!レオニード・ルヴェフル侯爵、すぐに王城へ参じるようお願いいたします。はい、これ召喚状で~す」
紅い印璽が押された手紙を渡されたレオは目を白黒させた。
「へ?内乱はどうなったのさ」
「それも戻ってからの話で」
仲間も一緒ならと了承したレオは馬車に乗り込み、城を目指した。
今回の件は内外関係なく、王直属の配下のみ参戦という御触れが出ていたからだ。
ギルドも兵を招集することがなかった、スタンピードの直後とあり冒険者も疲弊しているからだと当初は思っていた。
外国人であるレオは当然関わるわけにもいかないが、なんとも腑に落ちないとフラウットは思った。
いつになく深刻な顔のフラに皆は気を遣う。
退避していた場所は小さな田舎町で、僅かにあった宿は王都から逃げていた人々であっという間に埋まってしまった。
なのでまたも馬車暮らしに戻ったところだ。
なんとなく気分が沈んでしまう一行、そこで気晴らしにとレオはオヤツを作ることにした。
「キャンプでも作れるお手軽お菓子といくか」
ボウルに適当に小麦粉を入れ、卵と砂糖、ベーキングパウダーを混ぜる。
ボッタリとした生地ができたらスプーンを用意。
石を詰んだだけの竈に小さな鍋を置いて油を満たす。
竈に火をつけて油に気泡がでるのをしばし待った。
チョッピリ垂らした生地がジュワッと泡を立てて転がる。
「うん、良い頃合いだ」
レオはそういうと楽しそうにスプーンで掬った生地を躊躇いなくどんどん落としていった。
「わぁ、ちょっぴりの量なのに随分膨れるのですね」
いつの間にか側に来ていたティルが、揚がっていく白い生地を面白そうに見物していた。
「うん、我が家自慢のスプーンドーナツだよ。簡単にできてお腹いっぱいになるオヤツさ」
きつね色になったそれをひょいひょい掬い上げて油切りをする。
そこへ濃い目のメープルシロップと粉砂糖で作ったアイシングを適度にかけた。
「カリカリサクサクのドーナツの出来上がり!」
レオの声に不機嫌そうだったフラも笑みを浮かべて飛びついた。
大皿に山盛りした小さく不格好なドーナツから、甘く香ばしい匂いがたち食欲を刺激してくる。
「このオマケについたシッポみたいのがカリカリで美味しいんだぞ!」
まるでネズミの尻尾のようだと言いながら皆はホフホフと食らいつく。
「この蜜が良い香りでたまんない!」
「やばーい!止まんない!太っちゃうよ!でも食べる!」
バリラとジェイラが競うように頬張って、顔をアイシングでベタベタに汚していた。
フラはマイペースにサクサクと食んで顔を綻ばせる。
「フラ、美味しいかい?」
「うん、美味しいよォ、クフフフッ」
やけにハスキーな声を出すフラにびっくりしたレオ。
それ以上に驚いていたのはフラの方だった。
「え?なに、フラのかわりに返事したの誰?」
見回すと見知らぬ細身の男が黒い皮膜を広げて浮遊し、ドーナツを勝手に食べていた。
「クフ、さすが獅子王が認めた男の料理だねェ。気に入ったよ」
「は……い?」
パサリと被膜の翼を閉じて真っ黒な人物が下りてきて名乗った。
「初めましてェ、諜報活動を生業にしておりますモルティガと申しますゥ。お見知りおきを~」
間延びした言動の珍客に一同は瞠目した。
紅い瞳を細くしてモルティガなる人物はレオに詰め寄るとガバッと手を握った。
レオは悲鳴を上げて彼から飛び退いた。
「えぇ~酷いなァ親しくなりたいだけですよ?」
「得体の知れない男と仲良くする趣味はない!」
警戒されて嫌悪を見せられても男は飄々と気にする様子もない。
「ちょっと聞いてる?」
「ふむ、ドーナツとやらは美味しいですが、やはりフルーツが一番美味しいですねェ、たまに樹液や血も飲みますが」
「……」
レオの様子をガン無視した男は翼をマントに変化させてパサリと翻す。その様は……
「吸血鬼……」思わず口に出したレオ。
「おやァ、その名で呼ばれるのは久しぶりです。ですが、正確には蝙蝠男ですよォ♪」
「あ、そう……あの離れてくれません?」
距離感がおかしい蝙蝠男は油断するとすぐに側にやってくる、レオは気味悪がって逃げ回った。
「はぁ……ところでなんの御用で?」
「あ、ウッカリウッカリ!王命でやってきたのでしたァ!レオニード・ルヴェフル侯爵、すぐに王城へ参じるようお願いいたします。はい、これ召喚状で~す」
紅い印璽が押された手紙を渡されたレオは目を白黒させた。
「へ?内乱はどうなったのさ」
「それも戻ってからの話で」
仲間も一緒ならと了承したレオは馬車に乗り込み、城を目指した。
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