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獣王国篇
獣王国へ行こう(キャンプ飯1)
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盗られて困るモノはないレオの屋敷だが、一応防犯装置を起動させて旅に出た。
主がいなくなった邸内は余計に冷え冷えとした風が吹く。
「帰った時壊れてないといいねぇ」
縁起の悪いことをフラが言うものだからレオは仏頂面になった。
「ふん、壊れても惜しいものはないけどな……」
土地があるから建て直せば良いとレオは嘯いた。
「まぁまぁ、仮にも貴族の家ですもの。憲兵たちが警邏するでしょう」ティルがフォローする。
貴族街の端っことはいえ腐っても侯爵邸だ、見回りの対象にはなっている。
各々の荷物は旅支度と思えないほど軽いものだった。レオは魔法バッグがあるし、女子達も携帯食を担いでる程度ですんだ。
ただし移動は快適とは言い難い。
辻馬車を乗り継いで約2週間かかる道程だ、みんなの尻は悲鳴を上げるだろう。
道中はそれだけではない、時々盗賊が襲ってきた。
やはり山間部は危険だとレオは思い知る、そして冒険者の端くれなりに馬車の護衛達の援護をした。
何度か助けるうちに感謝されて運賃を無料にして貰ったり、知り合った旅商人に食べ物を分けて貰えた。
「情けは人の為ならずだなぁ」
ついさっき貰ったドライフルーツをオヤツにしてレオはご満悦だ。
「どういう意味?」となりでオヤツを齧っていたバリラが聞いてきた。
「簡単にいえば……人助けをすれば自分も助けて貰えるみたいな?」
「なるほど」とすぐに興味が失せたのかナッツを噛みだした彼女、理解したのか怪しい反応のバリラだった。
ノウキンという言葉をフルーツと一緒に飲み込むレオ。
山を何個か超えた頃だった、車窓を眺めていたフラが「国境だよ」と嬉しそうに言った。
国境砦の少し手前で馬車が停止した。
全員下りて身分証の提示をする、国境を護る兵士たちがジロジロと品定めしてくる。
思えば国を出るのは初めてのことだ、レオは些かテンションが高い。
ギルドの身分証と合わせて侯爵という肩書を見せると兵士たちの態度が一変した。
どうやら親友であるガルディ陛下に下賜された勲章が物をいったらしい。
「虎の威はすごいもんだな……」
国境砦の兵士はガラが悪いと警戒していたレオだったが、拍子抜けした。
王都から遠いここは治安も悪いし、監視の目も緩いと噂だったからだ。
金品を要求する兵士もいるから質が悪い、辺境に従事するものはワケアリが多いのだ。
貧乏侯爵レオニードは無事に越境できたことに安堵した。
再び馬車に乗り込んだ一行は空気が変わったことに気が付く。
「なんだか温かいですね」
「そうだね、穏やかな気がするよ。」
馬車の隙間風が気にならないほどに移動中は快適になった。
尻の痛みは別なのだが……。
夕方近くになって小さな集落に着いた。
村ともいえないほどそこには宿はない、仕方なくこの日も野宿になる。
旅の道中はほとんど野宿だったから慣れたものだ、ティルでさえせっせとテントを張っていた。
「すぐに火を起こしますね、バリラ竈を作りましょう」
「はいよ!石を集めるね」
フラとジェイラも張り切って薪や枯れ葉を集めている。
レオ達と同乗していた客達は民家へ世話になっているようだ、金さえつめばなんとかなるようだ。
「俺たちは節約だ!」
レオはそう言って鞄から食材を並べて調理にかかる、ドライベーコンと玉葱を刻んでスープへ投入。
それから冷凍キノコとトマト、コカトリス肉を凍ったまま鍋に入れた。
「具だくさんトマトスープと……パンばかりじゃ飽きるよな」
少し思案してからレオはフライパンを取り出した。
主がいなくなった邸内は余計に冷え冷えとした風が吹く。
「帰った時壊れてないといいねぇ」
縁起の悪いことをフラが言うものだからレオは仏頂面になった。
「ふん、壊れても惜しいものはないけどな……」
土地があるから建て直せば良いとレオは嘯いた。
「まぁまぁ、仮にも貴族の家ですもの。憲兵たちが警邏するでしょう」ティルがフォローする。
貴族街の端っことはいえ腐っても侯爵邸だ、見回りの対象にはなっている。
各々の荷物は旅支度と思えないほど軽いものだった。レオは魔法バッグがあるし、女子達も携帯食を担いでる程度ですんだ。
ただし移動は快適とは言い難い。
辻馬車を乗り継いで約2週間かかる道程だ、みんなの尻は悲鳴を上げるだろう。
道中はそれだけではない、時々盗賊が襲ってきた。
やはり山間部は危険だとレオは思い知る、そして冒険者の端くれなりに馬車の護衛達の援護をした。
何度か助けるうちに感謝されて運賃を無料にして貰ったり、知り合った旅商人に食べ物を分けて貰えた。
「情けは人の為ならずだなぁ」
ついさっき貰ったドライフルーツをオヤツにしてレオはご満悦だ。
「どういう意味?」となりでオヤツを齧っていたバリラが聞いてきた。
「簡単にいえば……人助けをすれば自分も助けて貰えるみたいな?」
「なるほど」とすぐに興味が失せたのかナッツを噛みだした彼女、理解したのか怪しい反応のバリラだった。
ノウキンという言葉をフルーツと一緒に飲み込むレオ。
山を何個か超えた頃だった、車窓を眺めていたフラが「国境だよ」と嬉しそうに言った。
国境砦の少し手前で馬車が停止した。
全員下りて身分証の提示をする、国境を護る兵士たちがジロジロと品定めしてくる。
思えば国を出るのは初めてのことだ、レオは些かテンションが高い。
ギルドの身分証と合わせて侯爵という肩書を見せると兵士たちの態度が一変した。
どうやら親友であるガルディ陛下に下賜された勲章が物をいったらしい。
「虎の威はすごいもんだな……」
国境砦の兵士はガラが悪いと警戒していたレオだったが、拍子抜けした。
王都から遠いここは治安も悪いし、監視の目も緩いと噂だったからだ。
金品を要求する兵士もいるから質が悪い、辺境に従事するものはワケアリが多いのだ。
貧乏侯爵レオニードは無事に越境できたことに安堵した。
再び馬車に乗り込んだ一行は空気が変わったことに気が付く。
「なんだか温かいですね」
「そうだね、穏やかな気がするよ。」
馬車の隙間風が気にならないほどに移動中は快適になった。
尻の痛みは別なのだが……。
夕方近くになって小さな集落に着いた。
村ともいえないほどそこには宿はない、仕方なくこの日も野宿になる。
旅の道中はほとんど野宿だったから慣れたものだ、ティルでさえせっせとテントを張っていた。
「すぐに火を起こしますね、バリラ竈を作りましょう」
「はいよ!石を集めるね」
フラとジェイラも張り切って薪や枯れ葉を集めている。
レオ達と同乗していた客達は民家へ世話になっているようだ、金さえつめばなんとかなるようだ。
「俺たちは節約だ!」
レオはそう言って鞄から食材を並べて調理にかかる、ドライベーコンと玉葱を刻んでスープへ投入。
それから冷凍キノコとトマト、コカトリス肉を凍ったまま鍋に入れた。
「具だくさんトマトスープと……パンばかりじゃ飽きるよな」
少し思案してからレオはフライパンを取り出した。
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