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人魚の街篇
最後のひと匙
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岩陰で彼女達との交流は毎日続けた、朧げな記憶を繋ぐような感覚だ。
やがて記憶の混濁が原因で熱を出してしまう。情けないことだ。
マルメディは会いに行けないことを伝えなければと巻貝を一つ取り出して呪いを唱える。
不思議そうに見つめる俺に気が付いた彼女は微笑んで教えてくれた。
「言の葉を届けるお呪いよ、人魚族の手紙のようなものね。遠く離れた仲間に知らせる時に使うわ」
「そう、面白いね。」
お呪いが終わった巻貝は丸い気泡に包まれて海面へと昇って行った。
「さぁソータは眠って、熱が下がらないわよ?」
「あと二日で薬を飲み干すというのに……ごめんねマル」
熱で赤くした顔が羞恥で余計火照った、熱のせいか目が痛い。
泣き言をいう俺にマルメディは「病の時はみんな心細いものよ」そう優しく言うだけだ。
彼女の手を探るように握ろうとしたら、マルメディは遠慮がちに自ら握ってくれた。
「初めて出来た陸の友人の役に立てたかしら」
「……うん、マルは俺の恩人で……大切な人だよ」
『好きだ』という言葉を飲み込んだ俺は、鼻の奥がツンと痛くなり目を閉じた。
寝いるフリを決め込んだというのに手が離せず力入ってしまう。
彼女が微笑む気配がして、それから小さな鼻歌が聞こえた。
歌詞のないメロディだけのそれはとっても優しく、そしてどこか悲しい音に聞こえた。
つうっと蟀谷に流れた涙が酷く熱かった。
それから熱はなかなか引かなくて、最後のひと匙を飲む晩を迎えた。
虹色の不思議な薬瓶は役目を終えると砂のように散り溶けてしまった。
記念に持っていたかったと呟いたら「バーバが作ったモノは陸にはもっていけないの、消えるお呪いが付与されてたのよ」とマルメディが言う。
僅かな思い出さえ持てないのかと悲しくなる。
「きょうで最後ね、添い寝しても良いかしら?」
「……!?え、えーと……うん。」
マルメディが俺の身体を抱きしめた。
まだ14歳の子供の身体は華奢で手足の長い彼女にスッポリ隠れる、あぁ叶わない恋のはずさ。
種族が違う、年齢が違う、生き方が違う、住む場所が違う……。
「……マル、ありがとう」
「ふふ、おやすみソータ」
彼女は俺の背を赤子をあやすように叩く。
心地良い愛しむようなその振動にいつしか瞼が落ちた。
おやすみ、愛しい人。
やがて記憶の混濁が原因で熱を出してしまう。情けないことだ。
マルメディは会いに行けないことを伝えなければと巻貝を一つ取り出して呪いを唱える。
不思議そうに見つめる俺に気が付いた彼女は微笑んで教えてくれた。
「言の葉を届けるお呪いよ、人魚族の手紙のようなものね。遠く離れた仲間に知らせる時に使うわ」
「そう、面白いね。」
お呪いが終わった巻貝は丸い気泡に包まれて海面へと昇って行った。
「さぁソータは眠って、熱が下がらないわよ?」
「あと二日で薬を飲み干すというのに……ごめんねマル」
熱で赤くした顔が羞恥で余計火照った、熱のせいか目が痛い。
泣き言をいう俺にマルメディは「病の時はみんな心細いものよ」そう優しく言うだけだ。
彼女の手を探るように握ろうとしたら、マルメディは遠慮がちに自ら握ってくれた。
「初めて出来た陸の友人の役に立てたかしら」
「……うん、マルは俺の恩人で……大切な人だよ」
『好きだ』という言葉を飲み込んだ俺は、鼻の奥がツンと痛くなり目を閉じた。
寝いるフリを決め込んだというのに手が離せず力入ってしまう。
彼女が微笑む気配がして、それから小さな鼻歌が聞こえた。
歌詞のないメロディだけのそれはとっても優しく、そしてどこか悲しい音に聞こえた。
つうっと蟀谷に流れた涙が酷く熱かった。
それから熱はなかなか引かなくて、最後のひと匙を飲む晩を迎えた。
虹色の不思議な薬瓶は役目を終えると砂のように散り溶けてしまった。
記念に持っていたかったと呟いたら「バーバが作ったモノは陸にはもっていけないの、消えるお呪いが付与されてたのよ」とマルメディが言う。
僅かな思い出さえ持てないのかと悲しくなる。
「きょうで最後ね、添い寝しても良いかしら?」
「……!?え、えーと……うん。」
マルメディが俺の身体を抱きしめた。
まだ14歳の子供の身体は華奢で手足の長い彼女にスッポリ隠れる、あぁ叶わない恋のはずさ。
種族が違う、年齢が違う、生き方が違う、住む場所が違う……。
「……マル、ありがとう」
「ふふ、おやすみソータ」
彼女は俺の背を赤子をあやすように叩く。
心地良い愛しむようなその振動にいつしか瞼が落ちた。
おやすみ、愛しい人。
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