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独立篇

滑かカスタードプリンと珍客

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プリン完成まで厨房を借りた礼に仕込みを手伝うレオ。

なかなかの重労働だ、とにかく辛かったのは玉葱を炒めることだった。

飴色になるまでとは地味な苦行である。

「電子レンジがあればなぁ」

「ほれ、師匠。焦げちまうよ」

「へいへい」





一方女子たちは厨房ではなく食堂のほうでノンビリお茶会をしている。

バリラに至っては「ガーガー」と寝腐っている。

余談だが先に仕上がった焼きプリンは当然のように彼女らの腹の中。



プルンと蕩けるそれは甘美な幸せだったという。

作り手の時間と労力に対し食うのは一瞬。

「俺の苦労は?」





ゼラチンプリンは絶対2個食ってやると、玉葱の山へ私怨をぶつけていた。

固まるまで3時間弱。

「丁度午後の開店くらいじゃねーか」というわけでレオはひとり臨時助手になっていた。





「くっそーどうしてこうなる」

「師匠、女に逆らうな。手だけは出すな後々怖ぇぞ」

「……俺、知らない女の乳をビンタしたけど」



『犯罪だ、羨ましい』とわけわからん抗議をされたが、先にセクハラされた報復だと説明した。

「あー、あれだな。逆恨みすんぜ、女はねちこいから」

「げっ、メンドクセー」



「我儘でメンドクサイのが女ってもんよ。それを受け止める度量がないとモテねぇ」

とグーズリーが言うが未だ独身のヤツに言われてもとレオは舌を出す。



***



開店30分前にそれは完成した、レオはそそくさとプリンをいただく。

「んまーい。ああやっぱバニラいれたほうが美味い。蕩ける味と香りの洪水だー」

「あまったるい匂いだなぁ」と鼻に皺を寄せてグーズリーは言う。



レオがやたら美味いというので、グーズリーが吊られて一口食べてみた。

「こ、これは!?」

「どーよ?」

「うまい!程よい甘みと柔らかく滑らかな食感、・・・ほろ苦いキャラメリーゼソースが良い」



こりゃ止まらんと一口二口と食べまくる二人。

――だが。







「ちょっとアンタ達、女子の分はどうしたのよ?」

「「え?」」

テーブルの上で空容器の山がカランと転がった。



女子達が放つ黒いオーラは凄しく修羅場と化した厨房、男二人の断末魔の声が響いたとか。

カールが「お互い様でしょう」とみんなを窘めた。

「メリアも年長なんだから、我儘を抑えて」

「――ごめんなさい、あなた」



それから開店となりドアに札を下げた途端、キャンキャンと不機嫌な声を上げる客が入店した。

後ろから連れらしい男が困り顔で入る。



「5時間も休むってどうかしてるわ!すぐにアレを出して!」

「いらっしゃいませ、アレとはなんでしょう?」



「ここで人気の蕎麦屋カレーよ!あら、甘くて良い匂い。それも出して」

「ジェイラ、勝手に座っては駄目だろう?」

はしたないと諌言する連れの男が、店員に謝罪する。



「いいえ、お寛ぎください。しかし甘い香りのものは我らの賄いデザートで提供できません」

「なんですって!」

またも金切声を出し癇癪を起す女。



「プリンはもう食べちゃったもーん」フラが余計なことをカウンターから呟く。

「店員の癖に生意気な!」

「フラは客だもん」



キィキィおさまりつかない迷惑な客に一同うんざりした。



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