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「ミリーからの手紙だわ!元気でいるかしら?」
離れた街へ引っ越したサビネは親友ミリーと中々会うことが叶わない、定期に手紙のやり取りで親交を深めているのだ。彼女はワクワクしながら封を切りさっそく便箋を広げる。
近況を報せる内容ににこやかだった顔が後半にきて険しいものに変化した。とあることへの警告が綴られていたせいだ。
「ショーンが私の行方を探っているですって!?どうして今更……」
かつては愛した男の名だったが、今ではトラウマ並みに嫌いな響きである。不気味な悪寒が身体を走り吐き気をもよおす。眩暈をしたサビネは手紙を床に落としてしまい、そのまま側に在る寝具に倒れ込む。
横になったは良いが、今度はズクズクと不快な痛みが頭を刺激してきて益々と不機嫌になっていく。
「すぐにここがバレるとは思えないけれど……用心したほうが良いわよね」
遅番の日は特に気を付けなければと腕を摩りながら「落ち着け……だいじょうぶ」と己に言い聞かせた。別れ際になにか酷い仕打ちをされたわけでもないが、嫌悪する気持ちがどうしても湧くのだ。元カレに関して例えるなら心底嫌いな毛虫やゴキブリくらいには悍ましい存在に落ちているのだ。
「手紙の内容から察するに生活が立ち行かなくて私を再利用する気なのよね……なんて図太いの」
彼女はえずくような真似をして「おえぇえ~」っと気持ちを吐く。
翌日、職場に顔を出したサビネはいつもの笑顔を取り繕って仕事を熟す。
だが、いち早く彼女の変化に気が付いたらしい店長が彼女の担当する売り場へやってきて声を掛けた。
「なにか悩み事かな、顔色が優れないよ。体調不良ならば早退しても良いよ?」
「え!?……お気遣いありがとうございます、でも今日は発注日ですから在庫の確認とか忙しいですので」
健気にそう答えて弱弱しく微笑むサビネを見て彼は眉をハチの字にして「ではランチをともに」と言う。
「食事がてら話を聞こう、良いね?」
「は、はい……わかりました」
離れた街へ引っ越したサビネは親友ミリーと中々会うことが叶わない、定期に手紙のやり取りで親交を深めているのだ。彼女はワクワクしながら封を切りさっそく便箋を広げる。
近況を報せる内容ににこやかだった顔が後半にきて険しいものに変化した。とあることへの警告が綴られていたせいだ。
「ショーンが私の行方を探っているですって!?どうして今更……」
かつては愛した男の名だったが、今ではトラウマ並みに嫌いな響きである。不気味な悪寒が身体を走り吐き気をもよおす。眩暈をしたサビネは手紙を床に落としてしまい、そのまま側に在る寝具に倒れ込む。
横になったは良いが、今度はズクズクと不快な痛みが頭を刺激してきて益々と不機嫌になっていく。
「すぐにここがバレるとは思えないけれど……用心したほうが良いわよね」
遅番の日は特に気を付けなければと腕を摩りながら「落ち着け……だいじょうぶ」と己に言い聞かせた。別れ際になにか酷い仕打ちをされたわけでもないが、嫌悪する気持ちがどうしても湧くのだ。元カレに関して例えるなら心底嫌いな毛虫やゴキブリくらいには悍ましい存在に落ちているのだ。
「手紙の内容から察するに生活が立ち行かなくて私を再利用する気なのよね……なんて図太いの」
彼女はえずくような真似をして「おえぇえ~」っと気持ちを吐く。
翌日、職場に顔を出したサビネはいつもの笑顔を取り繕って仕事を熟す。
だが、いち早く彼女の変化に気が付いたらしい店長が彼女の担当する売り場へやってきて声を掛けた。
「なにか悩み事かな、顔色が優れないよ。体調不良ならば早退しても良いよ?」
「え!?……お気遣いありがとうございます、でも今日は発注日ですから在庫の確認とか忙しいですので」
健気にそう答えて弱弱しく微笑むサビネを見て彼は眉をハチの字にして「ではランチをともに」と言う。
「食事がてら話を聞こう、良いね?」
「は、はい……わかりました」
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