2 / 9
1
しおりを挟む
今月とは言ったがサビネは早速部屋探しに奔走した。
一分一秒でも側にいたくなかったのだ、未練があるなどと誤解されるのも癪だった。
現にショーンは意地悪そうな笑みを浮かべて彼女を煽るような言い方をしてチョッカイを掛けていた。
『今なら撤回することも出来るんだぜ?まぁ俺はお前の事なんてどうでもいいけどさ』
「……」
『ワザとぐずぐずと荷造りしてるんじゃないよなぁ?引き止めて欲しいってか冗談じゃないよ』
「……」
『鬱陶しいんだよ!辛気臭い顔をして、居候として置いてやってるんだ掃除くらいしろよ』
「……」
このようにウザ絡みしてくるショーンに対してサビネはとことん無視を決め込むのだが、意地を張っていると思っている彼は止めようとしない。無視をされている彼はいつになく饒舌で口数が増えたのは皮肉なことだ。
「以前は私が話しかけても生返事か無視の癖に……自分が無視されるのは嫌いらしいの」
「まあ!なんて身勝手な男なの!別れて正解だわ!」
久しぶりに会った友人ミリーにサビネは近況を愚痴りまくってしまっていた、ミリーは親身になって彼女の話を聞いては「同意!」と語気強く肯定する。
「聞いてくれてありがとうスッキリしたわ」
「いいのよ、引っ越し手伝いなら任せなさいよ!」
モヤモヤする気持ちを掃えたサビネの顔には、もう迷いの色はなかった。
***
――別れ話から二週間後。
転居先を押さえ荷造りを終えたサビネは鞄一つで部屋を出た、大きな荷物は先に送っていたので気楽なものだ。
街に出て移動する途中で宝石店で談笑する男女を見かける、羨ましいと遠くから眺めていたが男性の方はショーンであるとわかった。
「ああ……貴方はなんて残酷なの、他に指輪を送る相手がいたのね」
心は離れたとはいえやはり悔しさは溢れてくる、涙の代わりに零れ落ちるのは憤怒の感情だけだ。
だがサビネは一呼吸してから再び歩き出す、彼の知らない街へと彼女は急ぐ。
「さようなら、大嫌い」
一分一秒でも側にいたくなかったのだ、未練があるなどと誤解されるのも癪だった。
現にショーンは意地悪そうな笑みを浮かべて彼女を煽るような言い方をしてチョッカイを掛けていた。
『今なら撤回することも出来るんだぜ?まぁ俺はお前の事なんてどうでもいいけどさ』
「……」
『ワザとぐずぐずと荷造りしてるんじゃないよなぁ?引き止めて欲しいってか冗談じゃないよ』
「……」
『鬱陶しいんだよ!辛気臭い顔をして、居候として置いてやってるんだ掃除くらいしろよ』
「……」
このようにウザ絡みしてくるショーンに対してサビネはとことん無視を決め込むのだが、意地を張っていると思っている彼は止めようとしない。無視をされている彼はいつになく饒舌で口数が増えたのは皮肉なことだ。
「以前は私が話しかけても生返事か無視の癖に……自分が無視されるのは嫌いらしいの」
「まあ!なんて身勝手な男なの!別れて正解だわ!」
久しぶりに会った友人ミリーにサビネは近況を愚痴りまくってしまっていた、ミリーは親身になって彼女の話を聞いては「同意!」と語気強く肯定する。
「聞いてくれてありがとうスッキリしたわ」
「いいのよ、引っ越し手伝いなら任せなさいよ!」
モヤモヤする気持ちを掃えたサビネの顔には、もう迷いの色はなかった。
***
――別れ話から二週間後。
転居先を押さえ荷造りを終えたサビネは鞄一つで部屋を出た、大きな荷物は先に送っていたので気楽なものだ。
街に出て移動する途中で宝石店で談笑する男女を見かける、羨ましいと遠くから眺めていたが男性の方はショーンであるとわかった。
「ああ……貴方はなんて残酷なの、他に指輪を送る相手がいたのね」
心は離れたとはいえやはり悔しさは溢れてくる、涙の代わりに零れ落ちるのは憤怒の感情だけだ。
だがサビネは一呼吸してから再び歩き出す、彼の知らない街へと彼女は急ぐ。
「さようなら、大嫌い」
55
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説
たとえ番でないとしても
豆狸
恋愛
「ディアナ王女、私が君を愛することはない。私の番は彼女、サギニなのだから」
「違います!」
私は叫ばずにはいられませんでした。
「その方ではありません! 竜王ニコラオス陛下の番は私です!」
──番だと叫ぶ言葉を聞いてもらえなかった花嫁の話です。
※1/4、短編→長編に変更しました。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
二度目の恋
豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。
王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。
満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。
※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。
離縁を告げに
豆狸
恋愛
「バーレト子爵、ファティマを呼び捨てにするのは止めてくれないか」
「止めるのは君のほうだろう。ファティマは私の妻だ。妻を呼び捨てにしてなにが悪い」
「……ヒカルド様? 私達は二年前に離縁していますが」
なろう様でも公開中です。
【完結】嗤われた王女は婚約破棄を言い渡す
干野ワニ
恋愛
「ニクラス・アールベック侯爵令息。貴方との婚約は、本日をもって破棄します」
応接室で婚約者と向かい合いながら、わたくしは、そう静かに告げました。
もう無理をしてまで、愛を囁いてくれる必要などないのです。
わたくしは、貴方の本音を知ってしまったのですから――。
愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる