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離縁
しおりを挟むとうとう離縁を決意したふたりは書面サインを記入する、役所の文官にそれを渡せば離婚成立だ。
「お願いします」
「はい、畏まりました。書類に不備がなければ成立です」
こうして無事に受理されたふたりは晴れて自由の身になった。だが生活が立ち行かなくなる元夫は暫くの間は伯爵家に世話になる予定だ。
「申し訳ない、さっさと出て行くべきだが」
「いいのよ、情くらいは残っているし、でも一月後には完全に消えて」
「あ、ああ」
情とはいっても愛情ではない、その辺は勘違いしなで欲しいとアミーナは強く思う。離縁後はどうなるか、それは彼女の知ったことではない。
「ああそうそう、貴方の御父様からまたお金の無心が来たわ。懲りないことね、どうする?」
「っ!捨て置いてくれ、借金は半分は肩代わりするがそれ以上は無理だ」
「わかったわ、貴方も苦労人ね」
彼女はそれだけ言うと執務室へ向かった、ルベルトは借入金の負債額を見てうんざりした。そして、世話になった部屋を振り返り「ありがとう」と言って移動した。
彼が今後生活する拠点は屋敷には違いないが、従者用の一室だ。個人部屋なだけ温情といえるだろう。彼は荷物一つ抱えてその部屋に入って行った。
***
「ゴリ押しすればルベルトは貴女に夢中になるはずよ勢いが大切だわ」
「まぁブレサ様、わかりました!彼の子を宿せば良いのですわね」
頭の悪いふたりは相変わらず意味のない企てをしている、アミーナが所有する広大な伯爵家を見て夢を膨らませる愚かなロゼッタ・ザノリ男爵令嬢は「屋敷に棲むならば一番贅沢な部屋が良い」といつも言っている。
「私が伯爵夫人!ん~最高!ふふふっ、でもそれにはルベルト様と接触しないとねぇ」
連日のように男爵家の馬車で伯爵家の前に乗りつけている彼女は、ずっと彼が出てくるのを待っていた。門番がいう事を利かないので仕方ないのだ。
「まったく頭が固いんだから!ちょ~っとくらい融通してくれても良いでしょうに」
だが、それでは門番の意味をなさない、どこまでも頭が鈍いのか呆れた事だ。
門前に張りつくこと三日後、とうとうその時がやってきた。
「ルベルト様!ああ、どんなにこの日を待ち侘びたことか!」
さっそくと馬車から飛び出した彼女は足早にルベルトに近づいた。顔を上気させて「お待ちになってぇ」とやっている。
「は?誰だ?」
「ルベルト様ァ!お会いしたかったですわぁ~ん!」
黄色い声を上げて近づく彼女に嫌悪感剥き出しにしたルベルトは数歩下がった。見知った顔ではないのだから当然である。だが、追い縋ってくる女のほうは彼のことを知っているらしい。
「会いたかったですわ、ルベルト様!」
「なんだと?どういうつもりか!」
身体をこすり付けてきて豊満な胸を押し付けて来た。彼女は自身があった、この手法で落とせなかった男はいないからだ。だが、じつはルベルトは不能で同性愛者である、それを知らないロゼッタはあの手この手で迫る。
「止してくれ!気持ちの悪い!」
「んな!なんてことをおしっしゃるの!後悔しますわよ!」
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