完結 愛人と名乗る女がいる

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
上 下
3 / 7

祝賀会

しおりを挟む


輸入雑貨を営むアミーナ・トレントは従業員を祝勝する意味込めた祝賀会を開いた。当然だが取引先も大勢招いている、「今日の良き日に」と乾杯の音頭が取られた。
簡単な言祝ぎの言葉を交わして後は無礼講だ、冗談などを言い合い和気藹々と会話を楽しむ。

「やあ、アミーナ嬢!この間届いた花瓶は見事だったよ、父上も大変喜んでくれてね」
「まあ、ドリード公爵様。気に入っていただけたようで嬉しいですわ」
このように交流を深めつつ営業スマイルも忘れないアミーナは遣り手である、気難しい公爵に気に入られるなどさすがだと周囲は認める。



そこへ場違いな連中がやってくる、招いた覚えはないのだがゴリヤーテ伯爵が祝いに駆け付けたのだ。
「アミーナ、祝賀会おめでとう。これはほんの土産だ」
「……そうですか、そこの貴女受け取っておいて」
「畏まりました」

安っぽい花とジュエリーの箱を侍女が受け取る、大方ゴマスリだろうとアミーナは不機嫌になった。近頃は益々と家庭の事情がよろしくないらしい伯爵家は焦っているようだ。

「まあそう邪険にする出ない、ワシと其方の仲ではないか」
「はあ?なんの仲なのでしょう、こんなものを用意するなら借金に当てて下さい」
侮蔑の視線をやってけんもほろろな態度で「失礼」と言って公爵が待つ場所へ戻って行った。

「くそう……」
更なる借金を目論んでいた卿はなにも出来ずに唇を噛んだ。今日の所は一旦下がろうと屋敷を後にする。しかし、入れ替わりにやってきたブレサ・ゴリヤーテがまたもやらかすのだ。

「御機嫌ようアミーナ、ずいぶんと盛況のようねぇ」
「……ゴリヤーテ夫人、貴女まで」
不審者がこうもやってくるとは面倒なことだと彼女は思った。会場へ入るには招待状が必要だが偽造したのかと勘繰るが懇意にしてる子爵に取り入ったようだ。

諦めて嘆息していると背後からあの勘違い女が出て来た、あの派手な格好をした女だ。「きひひひ」と下品な笑い声をあげている、一応はドレスを着ていることからどこかの貴族だとわかる。

「来てあげたわオバサン、さぁルベルトを出しなさいよ!私のダーリンよ!」
「……はあ、また貴女ですか。申し訳ないけど彼はここにはいないわよ、私が主催した会なのだから」
そういうと彼女は「嘘よ!」と叫ぶ、会場中はこの騒ぎにざわつき始める。

またも仕事を邪魔されたアミーナは不機嫌になった。

「どうかしたのかい、アミーナ?」
「ええ、ちょっとした諍いですの。困ったことだわ」
ドリード公爵は「それはいけない」と言って間に入る。高位のものが割って入れば場は収まると言うものだ。案の定、公爵がでてきたことで、ゴリヤーテ夫人は拙いと思ったのか引き返す。

「ちょっと、おば様!どうして帰るの!」
「分が悪いわ……相手は公爵よ、いくらなんでも無理よ」
「なによぉ!今日こそはダーリンとの仲を見せつけてやろうとしたのに!」
自称愛人はそうブー垂れたが、肝心のルベルトがいない。どこを探しても見つからないのだ。

「ちぃ!出直しだわ!あの子ったらいつも肝心な時にいないんだから!」



「なに、また来たのか……しかも母上まで噛んでいるなど」
報告を受けたルベルトは「あ~」と頭を抱える、さすがに申し訳ないと彼は詫びた。
「私は疲れたわ、もう離縁いたしましょう」
「……あぁ、そうだな。こんなことに巻き込んで済まなかった」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

番を辞めますさようなら

京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら… 愛されなかった番 すれ違いエンド ざまぁ ゆるゆる設定

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔

しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。 彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。 そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。 なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。 その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】旦那様、お飾りですか?

紫崎 藍華
恋愛
結婚し新たな生活に期待を抱いていた妻のコリーナに夫のレックスは告げた。 社交の場では立派な妻であるように、と。 そして家庭では大切にするつもりはないことも。 幸せな家庭を夢見ていたコリーナの希望は打ち砕かれた。 そしてお飾りの妻として立派に振る舞う生活が始まった。

「つまらない女」を捨ててやったつもりの王子様

七辻ゆゆ
恋愛
「父上! 俺は、あんなつまらない女とは結婚できません!」 婚約は解消になった。相手側からも、王子との相性を不安視して、解消の打診が行われていたのである。 王子はまだ「選ばれなかった」ことに気づいていない。

許すかどうかは、あなたたちが決めることじゃない。ましてや、わざとやったことをそう簡単に許すわけがないでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者を我がものにしようとした義妹と義母の策略によって、薬品で顔の半分が酷く爛れてしまったスクレピア。 それを知って見舞いに来るどころか、婚約を白紙にして義妹と婚約をかわした元婚約者と何もしてくれなかった父親、全員に復讐しようと心に誓う。 ※全3話。

愛されない妻は死を望む

ルー
恋愛
タイトルの通りの内容です。

処理中です...