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義母
しおりを挟むとある日、トレント伯爵邸に招かれざる客が来ていた、夫のルベルトの不在を狙って義母ブレサ・ゴリヤーテ伯爵夫人がやって来たのだ。
彼女は想い通りに動かないアミーナが気に入らない、次男がきりもりする伯爵邸にやってきては嫌味飛ばすのが生き甲斐らしい。
「あらぁ、いつも悪趣味な絨毯を敷いている事、あぁ不快だわ!ルベルトはどうしてこんな娘を娶ったのかしら?品の欠片もないわ」
「お言葉ですが、この絨毯はリンデル商会の一級品でございます」
アミーナはクスリと笑って「この品質がわからないだなんて」と冷笑した。
すると矜持を踏みにじられたブレサは立腹して「部屋に合わないと言っているのよ!」と顔を真っ赤にしてがなり立てた。リンデル商会は王家御用達の立派な商会である、そこの品をバカにしたのだから最悪だ。
「では、御気分が悪いようですのでお帰り下さい。ご不快なのでしょう?」
「んな!」
玄関ホールを入ったばかりだと言うのに帰れという嫁だ。彼女がパチリと指を弾けば執事とフットマンがやってきて、あれよあれよという間に門の外に追いやられた。
「なんてことを!この私を蔑ろにしてただで済むと思わない事ね!」
散々と悪態をついて、遅れてやってきた馬車にのるとプリプリと怒りながら帰宅していった。
「許可なく夫人を招き入れたのは誰?」
アミーナは容赦なく問い詰める、先触れも出さず現れた夫人を屋敷内に入れた人物を彼女は赦しはしない。後々、入ったばかりの下女がやらかしたと聞かされた彼女は「暇をあげる」ときっぱりと言った。
「ふぅ、下女は夫人の息がかかった者だったようね。油断ならないこと」
執務室でとある手紙を書きながらアミーナは苛立っていた、彼女は仕事を中断されたことに腹を立てていたのだ。近頃はなにかとゴリヤーテ伯爵家から「用立ててくれ」という親書が届く。
彼女はブレサ夫人の無作法な態度を認めて「承服致しかねる」と返事を書いた。苛立ち紛れに抗議文を書いた彼女だったが、見直しても上等だと思う。
「これで少しは大人しくなると良いのだけど、……無理かしらねあの性分だもの」
午後一で届いた手紙を読んだゴリヤーテ伯爵は怒りでワナワナと震えていた。帰宅したばかりの夫人を呼びつけて「何をやらかしてくれた」と怒鳴った。
「何って貴方、嫁の躾をしようとしただけだわ、あの女ときたら酷いのよ!この私をバカにして」
そういう夫人に対して卿は叫ぶ。
「馬鹿だから馬鹿にされただけだ!当面はあちらの屋敷に行くことはならん!禁止だ!」
「んまぁ!彼方ったらあの女を庇うのね!」
キャンキャンと叫ぶ夫人に頭が痛いと撥ね退けるのだった。
「こうなったら多少強引にいきましょうか」
夫人は悪い顔をしてルベルトの恋人と称するロゼッタ・ザノリへ手紙を書いた。
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