上 下
2 / 7

義母

しおりを挟む



とある日、トレント伯爵邸に招かれざる客が来ていた、夫のルベルトの不在を狙って義母ブレサ・ゴリヤーテ伯爵夫人がやって来たのだ。
彼女は想い通りに動かないアミーナが気に入らない、次男がきりもりする伯爵邸にやってきては嫌味飛ばすのが生き甲斐らしい。

「あらぁ、いつも悪趣味な絨毯を敷いている事、あぁ不快だわ!ルベルトはどうしてこんな娘を娶ったのかしら?品の欠片もないわ」
「お言葉ですが、この絨毯はリンデル商会の一級品でございます」
アミーナはクスリと笑って「この品質がわからないだなんて」と冷笑した。

すると矜持を踏みにじられたブレサは立腹して「部屋に合わないと言っているのよ!」と顔を真っ赤にしてがなり立てた。リンデル商会は王家御用達の立派な商会である、そこの品をバカにしたのだから最悪だ。

「では、御気分が悪いようですのでお帰り下さい。ご不快なのでしょう?」
「んな!」
玄関ホールを入ったばかりだと言うのに帰れという嫁だ。彼女がパチリと指を弾けば執事とフットマンがやってきて、あれよあれよという間に門の外に追いやられた。

「なんてことを!この私を蔑ろにしてただで済むと思わない事ね!」
散々と悪態をついて、遅れてやってきた馬車にのるとプリプリと怒りながら帰宅していった。




「許可なく夫人を招き入れたのは誰?」
アミーナは容赦なく問い詰める、先触れも出さず現れた夫人を屋敷内に入れた人物を彼女は赦しはしない。後々、入ったばかりの下女がやらかしたと聞かされた彼女は「暇をあげる」ときっぱりと言った。

「ふぅ、下女は夫人の息がかかった者だったようね。油断ならないこと」
執務室でとある手紙を書きながらアミーナは苛立っていた、彼女は仕事を中断されたことに腹を立てていたのだ。近頃はなにかとゴリヤーテ伯爵家から「用立ててくれ」という親書が届く。

彼女はブレサ夫人の無作法な態度を認めて「承服致しかねる」と返事を書いた。苛立ち紛れに抗議文を書いた彼女だったが、見直しても上等だと思う。
「これで少しは大人しくなると良いのだけど、……無理かしらねあの性分だもの」


午後一で届いた手紙を読んだゴリヤーテ伯爵は怒りでワナワナと震えていた。帰宅したばかりの夫人を呼びつけて「何をやらかしてくれた」と怒鳴った。
「何って貴方、嫁の躾をしようとしただけだわ、あの女ときたら酷いのよ!この私をバカにして」
そういう夫人に対して卿は叫ぶ。

「馬鹿だから馬鹿にされただけだ!当面はあちらの屋敷に行くことはならん!禁止だ!」
「んまぁ!彼方ったらあの女を庇うのね!」
キャンキャンと叫ぶ夫人に頭が痛いと撥ね退けるのだった。

「こうなったら多少強引にいきましょうか」
夫人は悪い顔をしてルベルトの恋人と称するロゼッタ・ザノリへ手紙を書いた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち

玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。 蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。 王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。

お針子と勘違い令嬢

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日突然、自称”愛され美少女”にお針子エルヴィナはウザ絡みされ始める。理由はよくわからない。 終いには「彼を譲れ」と難癖をつけられるのだが……

許して貰わなくても結構です

音爽(ネソウ)
恋愛
裏切った恋人、二度と会いたくないと彼女は思った。愛はいつしか憎悪になる。 そして懲りない男は今でも愛されていると思い込んでいて……

私の以外の誰かを愛してしまった、って本当ですか?

樋口紗夕
恋愛
「すまない、エリザベス。どうか俺との婚約を解消して欲しい」 エリザベスは婚約者であるギルベルトから別れを切り出された。 他に好きな女ができた、と彼は言う。 でも、それって本当ですか? エリザベス一筋なはずのギルベルトが愛した女性とは、いったい何者なのか?

【完結】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」

まほりろ
恋愛
※小説家になろうにて日間総合ランキング6位まで上がった作品です!2022/07/10 私の婚約者のエドワード様は私のことを「アリーシア」と呼び、私の妹のクラウディアのことを「ディア」と愛称で呼ぶ。 エドワード様は当家を訪ねて来るたびに私には黄色い薔薇を十五本、妹のクラウディアにはピンクの薔薇を七本渡す。 エドワード様は薔薇の花言葉が色と本数によって違うことをご存知ないのかしら? それにピンクはエドワード様の髪と瞳の色。自分の髪や瞳の色の花を異性に贈る意味をエドワード様が知らないはずがないわ。 エドワード様はクラウディアを愛しているのね。二人が愛し合っているなら私は身を引くわ。 そう思って私はエドワード様との婚約を解消した。 なのに婚約を解消したはずのエドワード様が先触れもなく当家を訪れ、私のことを「シア」と呼び迫ってきて……。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

完結 私とは無関係なので来ないでくださいね?

音爽(ネソウ)
恋愛
見栄をはった男とそれを信じすぎた女の話

処理中です...