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第六話

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「――レオもこの世界に転生してたのか!?」

「ああ、そうだ」

 まさかの再会に際しての興奮と混乱が落ち着き、魔王改めレオナール(前世の時と同じようにレオと呼んでいいと言われた)とおれは、部屋に置かれたソファの上に並んで座った。

 どうしてお互いがここにいるのかを説明しあうためである。

「俺の場合は病気で死んだんだ。46歳の時にガンで余命宣告されて、その一年後に死んだ」

「じゃあ47歳で亡くなったのか……大変だったな」

 ずいぶんと若いな……と思ったけれど、よく考えるとおれの享年の方が早いか。

「シュウの言ってたゴスロリ女は知らねェけど、俺の時は浴衣をきた艶っぽい女が出てきたぜ。そいつが俺に"自分の妹の不始末で貴方の人生を陰らせてしまったお詫び"とか言って、異世界転生させるって言ってきたんだよ」

「へぇ……もしかして、おれのあのゴスロリっ子のお姉さんなのかな」

「かもな。で、その女が"異世界転生させるにあたってすべての言語の自動翻訳能力と現地に存在するすべての病原菌の免疫を差し上げたいが、他に何か欲しいもんはありますか?"って聞いてくるから、思いつく限りの能力を全部もらった」

「そ、そうなんだ……」

 話を聞きながら、思わず顔が引きつってしまった。

 レオの所にきた女神さまはめちゃくちゃ有能だな、うらやましい……
 おれも女神様ガチャSSR引きたかったな……

「で、俺の場合はシュウとは違って赤ん坊からスタートだった。この鉄の国にいる魔族の間に生まれてな」

「そうなんだ。今のレオのご両親はどこにいるんだ? この城で一緒に住んでるのか?」

「いや……十五年前に死んだ」

「え」

 びっくりしてレオの顔を見つめると、彼は肩をすくめた。

「俺が生まれた頃は、この国は『深淵の森』のエルフたちとドンパチやっててな。そん時の戦争に駆り出されて、そのまま帰ってこなかった」

「そうだったのか……ごめん、気軽に聞いちゃって」

「いや、別にいいさ」

 そう言っておれを安心させるような笑みを浮かべたレオは、おれの知っているレオであって、レオではなかった。

 元の世界での享年が46歳と言っていたから、今のレオから滲み出る余裕と貫禄は、きっとおれのいない日々にレオが培ってきたものなのだろう。

 ……おれを置いて、大人になっちゃったんだなぁ。

 さびしいような、でも、すっかり大人になったレオを見れて嬉しいような、複雑な気分だ。

「それで、まァ、テメェの親を殺されたっていうのに、指くわえて黙ってるわけにもいかねェからな。その二年後に、俺も志願兵として戦争に参加した。その時にはようやく女神からもらった加護や能力も使いこなせるようになってたからよ」

「そっか、がんばったんだな」

「まぁ、それで……その戦争の戦果とかで、俺を魔王に推薦してくれる奴がけっこういてよ。もともといた初代魔王サマは、戦争の時に死んじまっててな。今度は玉座を巡る争いが起きかねないってことで、俺が二代目として魔王を襲名することになったんだ。ま、政治はぜーんぶ部下に丸投げしてるから、形だけの王サマなんだけどな」

「それでもすごいよ。レオは人望があるんだな」

 レオに人望がなければ、そもそも二代目の魔王に推薦なんてされなかっただろう。

 大変なこともあったみたいだけれど……でも、レオのことを認めてくれる人達がそんなにたくさんいるなんて、自分のことみたいに嬉しい。
 初めは「どうしてこんな国に」なんて思ってたけれど、それが知れただけでも、ここに来てよかった。

「レオが元気そうでよかったよ。おれ、ずっとレオのことが気がかりだったからさ」

「……シュウ……あ、あのよ。俺、お前に言わないといけないことが」

「ところでさ。レオって人間の住んでる『鐘の国』にツテとかってある? おれ、この国を出て他の国に行きたいなって思ってるんだけど」

「――――あ”?」

 それまでじんとした空気が流れていたのに、その瞬間から空気はブリザードに変わった。

 絶対零度のオーラを出したレオが険しい顔でおれを睨み付け、肩をがしりと掴んでくる。

「なに言ってるんだよ、シュウ」

「い、いや、その……レオと再会できたのは嬉しいんだけれどさ、おれがこの国で自立して暮らすのはかなり難しそうだろ? だから、他の国に行ければなって思ったんだけど……」

 鐘の国ってところは、今は跡目争いで内紛状態らしい。
 でも、都市部から離れた田舎に移住すれば比較的安全なんじゃないかなぁと思ったんだけれど……

「この城にいればいい。仕事だってしなくてもいい、俺が面倒みてやる」

「そんなわけにはいかないよ。レオにそんなに甘えるわけには……」

 レオがこの世界で自立して立派に魔王業を務めているのだ。
 なら、彼の幼馴染で兄貴分であるおれがニートというわけにはいかない。

 そう思って発言をしたのだが――なぜか、レオはかなり怒っていた。

 眉間にしわを寄せて唇を噛みしめておれを睨んでいる。
 掴まれたおれの肩がみしみしと音を立てているが、レオ自身は気づいてないかもしれない。おれはめちゃくちゃ痛い。

 鬼気迫る様子のレオになにかを言おうと思ったが、しかし、何も言葉が思いつかない。
 どうしたものかと思っていると、いきなり身体がふわりと持ち上がった。

 そして気がつけば、レオがおれの身体を肩にかついでつかつかと歩いている。
 そして隣に続く扉を足で乱暴にあけて進んだ。

「おい、レオ!? そんなに乱暴にドアを開けちゃだめだろ、蝶番が痛むだろ!」

「…………」

 怒ってみても、レオは無言のままだった。

 レオに無視されて、おれはちょっと、いやかなりショックを受けた。

 よ、幼稚園生の頃なら、これで「ご、ごめんなさぁい。きらいにならないで、シュウちゃん……」って言って半泣きになってたのに……!

 人生で初めてレオからシカトされてめちゃくちゃ落ち込んでいると、ふいに、身体が下ろされた。
 背中にふわりとやわらかい感覚を感じ、きょろきょろと周囲を見渡す。

 見れば、おれは大きなベッドの上に仰向けで寝かされていた。
 ベッドの脇におかれたランプ以外には灯りはついておらず、部屋は薄暗い。先ほどの部屋が書斎兼執務室なら、ここは寝室にあたるのだろう。

「シュウ……」

 物珍しく周囲を見渡していると、ぎしりと軋む音が響いた。

 はっと見れば、いつの間にかおれの上にレオがのしかかっている。
 その瞳に浮かぶぎらついた光と野性味のある表情に、思わず息を呑んだ。

 ……レオのこんな顔、初めて見た。
 友人としての表情ではなく、男の表情だ。

「シュウ……こうしてお前にもう一度会える日がくるなんて、思ってもみなかった」

 そう言って、レオが掌でおれの首筋に触れた。
 脈打っているのかを確かめるような、こわごわとした手つきだった。
 
 そして、その指が今度は下におり、シャツの隙間から鎖骨に触れたかと思うと、今度は指先でゆっくりとシャツのボタンを外していく。

 ……って、ちょ、ちょっと!?

「レオ……? どうしたんだよ、なんで脱がしてるんだ? 風呂か?」

 首をかしげながらそう尋ねると、レオがくくっと喉の奥で笑った。

「お前、俺のことまだガキだと思ってんのか? ベッドの上で服を脱いでやることっていったら一つだろ」

「えっ……え!? ぁ、ちょっ、レオっ!?」

 おれの着ていた学生服のシャツ――ブレザーとネクタイはさっきソファに座った時に自分で解いてしまっていた――をはだけさせたレオは、あらわになったそこに掌で触れた。

 その指先が、おれの胸の上の突起に触れたかと思うと、指の腹でくるくるとそこをくすぐり始めた。
 性的な意図をもって愛撫されているのは明らかだった。

「ゃ、やだ、レオっ。な、なにやってるんだよっ……んっ、ぅ」

「シュウがもう二度と、ここから外に出たいなんて馬鹿なこと言い出さねェようにしてやる。お前みたいな無力な人間が、この世界じゃどう扱われるのかを教えてやるよ」

「ぁっ、ちょ、レオっ!?」

 レオの手がおれの下半身に伸びたかと思うと、着用していたズボンと下着が切り裂かれた。

 お、おれの一張羅が!?
 なんだこれ、今のも魔法なのか?

 そういや、さっき呑んだ薬はなんだったんだ。あれを飲んだ瞬間に言葉も喋れるようになったし病気も治ったみたいだけれど、あれも魔法だったのだろうか……?

 だが、そんなことを考えている間に、どんどんとレオの手がおれの身体の上を這う。

 そしておれの胸を這っていた手が、するりと下腹部をなぞった。
 指の腹でへその穴をくすぐるようになぞられて、ぞくぞくとしたものが背筋に奔る。

「っ、ぁ、レオっ……やめろ、そんなところ触るなっ……」

「……シュウはこんなに小さかったんだな。あの頃の俺には、お前は誰よりも大人びて見えてたのにな……」

「おれは小さくはないぞ!? レオがでかくなったんだよ!」

 聞き捨てならない言葉に思わず反論をするが、それでも彼の手が止まる気配はない。
 そしてとうとう、その掌がおれの縮こまった陰茎に触れた。

「ひ、ぁっ……!」

 びくりと身体が跳ねる。

 ここまでくれば、おれもレオが何をしようとしているのか分かる。
 だが、なんでこんなことになってるのかがさっぱり分からない。

「っ、ぃやだ、レオ……なんで、なんでこんなことするんだよ……っ」

 レオの掌がおれの陰茎を愛撫しはじめた。

 彼の指に扱かれて、陰茎はゆっくりと頭をもたげ始めた。節くれだってゴツゴツとしたレオの指はたくみに動き、裏筋やカリ首を的確に責め立ててくる。
 あわてて両手でレオの肩をおして彼を押しのけようとするが、全然びくともしない。

「ぁっ、レオ、そこ、だめっ……ひ、ぅぁッ!」

「っ……シュウが悪いんだろ。お前が、また、俺から離れるなんて言うから……!」

 ――また?

 また、とはなんの話なんだろう?

 大学進学のために地元を離れると話した時のことか?
 でも、あの時のレオはおれの説明に納得してくれたようだし、機嫌もなおったようだったのに……心の中では違ったのだろうか?

「シュウっ……今度こそ、俺はお前を離さねェ……!」

「んっ、ふぁ、あッ……ぁっ」

 そんなことを考えている間にも、レオの指がおれの陰茎を愛撫する。

 それだけではなく、さらにその奥にまで伸びてきた。
 片手でおれの太腿を掴んで割り開くと、もう一方の手で後孔に触れてきたのである。

 そんなところを触られて、おれはさらに慌てた。

「ぁ、レオっ、ぃやだっ、そんなところきたなっ……ひゃッ!?」

「今の声かわいいな……そんな子猫みたいな声も出せるなんて知らなかったぜ」

 からかうように笑って、おれの喉笛を指先でくすぐってくるレオ。
 まるで猫をあやすかのような仕草に、おれはギッと彼を睨みつけた。

「レオっ、ふ、ふざけてるのか……っ? ん、ぅっ」

「ふざけてなんかないさ。それと、シュウの身体はどこもきれいだぜ」

 おれが睨んでもレオは堪えた様子はなく、唇をつりあげて笑うと、再び後孔へと指を這わせ始めた。
 閉じたそこをほぐように指の腹で愛撫した後、おれの陰茎からつたう先走りを指にまとわせてた。そして、指の先をぬぷりと後孔へ埋めていく。

 痛くはないが、異物感とくすぐったさがとてつもない。
 おれはぶるりと身震いをしながら、必死にレオに訴えた。

「ひっ……! ぁ、やだ、だめだって、レオっ……んぁ、あッ!?」

 両手でレオの肩を掴んで押し返そうとしても、やっぱりびくともしない。
 レオは真剣な表情のままでおれの抵抗など意に介した様子もない。

 そうこうしているうちに、レオの指は根本まで入ってしまった。
 彼の指がおれのナカで動き、曲がるたびに、身体が震える。

 そこまではまだ我慢できたのだが、レオの指が中にある一点をかすめた瞬間、背筋を電流がつきぬけた。腰が勝手にびくんと大きく跳ねる。

「ぃっ……!?」

 い、いまのなに?

 人生で味わったことのない感覚に目を白黒させていると、レオが頭上で「ああ、ここがシュウのいいところか」と呟くのが聞こえた。

 その言葉の意味を尋ねようとした直後、レオの指がその一点にたいして集中的な愛撫をはじめた。
 肉壁にあるしこりを指の腹でぐっぐっと押し、かと思えば、指の腹でやさしく擦られる。

「っ、ぁ、あッ……! レオ、そこ、なんかへんな感じがする……ふっ、ぅあ」

 レオの指が蠢くたびに、おれの下腹部にびりびりと快楽が奔った。

 思わず身体をよじって逃れようとしたが、レオのもう一方の手で引き戻されてしまい、しかも、動かないように腰をわし掴まれてしまった。
 あまりの快楽と羞恥に、おれは首を横に振ってレオに懇願した。

「ぁっ、やだ、レオっ……! な、なんでこんなことするんだよ……おれのこと、きらいになったのか……?」

 ぼろぼろと涙がこぼれる。
 慌てて手の甲でぐしぐしと目尻をぬぐうも、涙は次から次へと溢れて止まらない。

「シュウ……」

 すると、レオが後ろを弄る手を止めた。
 そしておれに顔を寄せると、舌先でぺろりと頬をつたう涙を舐めとる。

「シュウのことを嫌いになったことなんか、一度もねェよ。むしろ、俺は、ずっと……」

 だが、そこまで言って、レオはなぜか唇を閉じてしまった。
 眉根を寄せて苦痛に耐えるような表情を一瞬浮かべると、首を横に振った。

「レオ……? ぁ、ん、ぅっ」

 レオは言葉を続けることはなく、かわりにおれに覆いかぶさるようにして口づけてきた。
 分厚くしっとりとした唇が重なる感触に、目を大きく見開く。

「んっ、ぅ……ふ、ぁ」

 薄く開いた唇を割り入って、レオの肉厚の舌が口内に這入ってくる。その衝撃と未知の感覚に、身体中が痺れた。

 あわてて顎をひいて逃げようとするが、レオの掌がすかさずおれの後頭部にまわり、自分の方へと引き寄せてきた。そのせいで、ますます深く唇を貪られる。

「ふっ、ぁ、んぅ……っ!?」

 深い口づけに呼吸すら忘れかけた時――おれの下腹部にぴたりと触れるものがあった。

 キスを受けながら目線だけで下を見ると、レオはいつの間にか下衣をくつろげていたようで、彼自身の陰茎が露出していた。
 悔しいが、おれのものよりもかなり立派なものである。そして、そんなレオの陰茎は、今や血管を浮きだたせて、固くそそり立っていた。

「っ、ぁ、ハッ……」

「シュウ……」

 レオの唇が離れていった時には、おれと彼の唇の間で銀の橋が伝っていた。
 唾液でぬれた唇をぬぐう気力もなく、はぁはぁと呼吸を整えていると、おれの後孔にぴとりと何かがあてられる感覚があった。
 見れば、レオが自分の陰茎の先端をおれの後ろへと添えている。

「っ、ぁ、レオ……ぁ、だめっ……ぁっ、ぁああッ!」

 肉を分け入って、ぐっとレオの肉杭が押し込まれた。

 レオは両手でおれの腰を支えながら、額に汗をうっすらと浮かべながら、ゆっくりと腰を押し進める。
 彼の陰茎はまるで熱された鉄のようにあつかった。だが、レオのものが全て挿入された後は、その熱さが肉杭の熱によるものなのか、快楽にゆだった肉壁が熱を持っているのか、どちらか分からなくなった。

「ひぁ、あッ……ぁ、レオっ、ふぁっ、ぁあッ!」

「シュウ、シュウっ……」

 レオはうわごとのように、おれの名前を何度も何度も繰り返し呼んで、腰を打ちつけた。
 中を擦られるのと同時に、おれの唇からは、自分のものとは思えない甘ったるい声が上がる。

「ぁ、レオ、やだ、もうっ……ん、ぁ、ふあっ」

 レオは先ほどの一点をねらって陰茎を突き入れ、かと思えば、おれの下腹部で揺れている陰茎を手で愛撫をした。
 おれはもはや抵抗も忘れて、濁流のような快楽に意識を流されないよう、必死でレオにしがみついた。

「っ、ふぁ、レオっ……ァああっ!」

「くっ……!」

 そして――レオが先端だけを残して陰茎を抜き、一気に最奥にまで突き入れた時、おれはとうとう射精を迎えた。
 陰茎の先から吐き出された白濁液が、どろどろと腹の上に垂れる。

 射精を迎えた瞬間、肉壁がきゅううっとレオの陰茎をしめつけたのが感覚で分かった。
 その刺激にレオも小さな声を漏らすと、おれよりも一拍遅れて射精をした。

「あっ、ぁ……はっ、はぁ……」

 体内にあふれていくレオの精をぼんやりと感じながら、おれは自分の瞼が落ちていくのを感じていた。
 病気にかかった身体で商館から城に連れてこられたかと思えば、いきなりこんな風にレオに抱かれて、体力が限界だったのだ。

「……シュウ……い。俺をゆるし……くれ」

 だから、レオがか細い声でなにかを言っていたが、意識の落ちかけたおれにははっきりと聞き取ることができなかった。

 そして――おれは完全に眠りに落ちたのであった。
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